プロジェクトマネジメント業務遂行上の情報伝達には、2つの視点がある。
第一の視点:
プロジェクトは開始早々から終了まで、業務遂行に必要な情報を入手し、これを必要な人々に配布し、業務を進めてもらい、結果としての成果物を社内関係者のみならず、顧客、協力会社等のステークホルダーに配布・回収する作業がある。いうなれば情報というインプットをアウトプットに変換する。このアウトプットは、次のインプットになるというまさしく情報の製造工場である。これが第一の視点である。プロジェクトマネジャーは、この製造工場の工場長といえる。この工場の理想はトヨタカンバン方式と同じである。プロジェクトマネジメントのカンバンは、構想計画から出発する場合もあるし、契約書から出発する場合もある。製造工場であるならば、すべてが決められた工程に沿って情報が配布・伝達されなければならない。
第二の視点:
プロジェクトには始まりがあって終わりがある。プロジェクトは結成の都度、多様な人々によって構成され、構成員はプロジェクトの全期間、または必要な期間に限って参加する。このような条件下で行うプロジェクト遂行には、構成する人々のすべてが該当するプロジェクトに必要なコンテキスト(背景)を理解しているわけではない。これらショートリリーフの関係者へ必要なコンテキスト情報を確実にタイミングよく与え、プロジェクトが正確に、制限条件内で業務を進めるという課題がある。これを担当するのが第二の視点のコミュニケーションマネジメントである。プロジェクトの失敗をもたらすような大きな問題は技術的な能力不足より、コミュニケーション能力の不足によって起こることが多い。こうした事実を理解し、プロジェクト関係者がコミュニケーションの重要性を認識し、コミュニケーション能力を身につけ、相互理解を深めることによってプロジェクトの成功は達成される。