(演習)情報定義書の整理・分類
概要
- 日程: Day 1 / セッション9
- 時間: 14:40-16:10
- 形式: 演習
- ゴール: ペルソナの視点でLATCH法により整理軸を決め、オープン・クローズド両方のカードソーティングを行い、整理分類済み情報定義書を完成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
🗣️ 要約
情報の整理・分類に唯一の正解はなく、「誰にとって探しやすいか」が基準になる この演習では、LATCH法とカードソーティングを使って情報定義書を仕上げる 90分の演習を経て「整理分類済み情報定義書」が完成する
いよいよ、午前中に作った「情報定義書」を仕上げる時間です。ところで、洋服ダンスの中身を思い浮かべてみてください。同じ服の山でも、「季節ごと」「色ごと」「よく着る順」など、しまい方はいくつも考えられますよね。
情報の整理・分類も同じです。正解は1つではありません。大事なのは「誰にとって探しやすいか」です。
前のセッションで、LATCH法とカードソーティングという2つの武器を手に入れました。このセッションでは、その武器を実際に使って、午前に作った情報定義書を「ペルソナが迷わず使える形」に仕上げていきます。90分の演習が終わる頃には、あなたのチームの「整理分類済み情報定義書」が完成しています。
本編(20-40分)
🗣️ 要約
演習は市場調査→LATCH法→オープン→クローズドカードソーティングの4ステップで進む 分類対象は「情報」であり「機能」ではない 完璧な分類を目指す必要はない
1. 演習の全体の流れ
🗣️ 要約
4ステップ(市場調査→LATCH法→オープン→クローズド)の全体像 粗い仮説から少しずつ精度を上げていく流れになっている オープンカードソーティングを飛ばすと、チームの思い込みに固執しやすくなる
今日の演習は、市場調査→LATCH法→オープンカードソーティング→クローズドカードソーティングという4つのステップで進みます。
これは、いきなり「正しい分類」を作ろうとするのではなく、粗い仮説から少しずつ精度を上げていく流れです。料理で言えば、まず適当に切った野菜を鍋に入れてみて(オープン)、味を見ながら調味料の配分を決めていく(クローズド)ようなものです。
ここで少し考えてみてください。もしステップ3(オープン)を飛ばして、いきなりステップ4(クローズド)から始めたら何が起きるでしょうか。おそらく、最初に思いついた分類に固執してしまい、ペルソナにとって本当に自然な分類軸を見逃してしまいます。オープンカードソーティングは「思い込みを壊す」ための工程なのです。
ここがポイント
特に注意してほしいのは、分類する対象はあくまで「情報」であって「機能」ではないという点です。
「情報」の例としては、「商品名」「価格」「在庫数」「注文日」などが該当します。一方、「検索する」「注文する」「削除する」といった動詞で表されるものは「機能」であり、この演習の対象には含まれません。なぜなら、機能は情報モデルが定まったあと(Day2)に、状態遷移から抽出するものだからです。今日はまだ「何がある(What)」を整理する段階で、「何をする(How)」を考える段階ではありません。
よくある間違いとして、カードに「検索機能」「削除機能」と書いてしまうケースがありますが、正しくは「検索対象になる商品情報」のように、あくまで名詞(情報)としてカードを作ります。
コラム
図書館の世界には「請求記号」という仕組みがあります。日本十進分類法(NDC)で、本を0〜9の数字で分類する方法です。実はこの分類、最初に考案されたときから何度も改訂されており、今も「情報化」という新しい概念が生まれるたびに、どの棚に入れるべきか司書さんたちが頭を悩ませています。
つまり、プロの図書館員ですら「完璧な分類」には一生たどり着けないのです。今日の演習でも、完璧な分類を目指すのではなく、「今のペルソナにとって、今のところ一番しっくりくる分類」を探す、くらいの気持ちで臨んでもらえると、気が楽になるはずです。
2. 各ステップの進め方
🗣️ 要約
ステップ1は市場調査(目安10分)、ステップ2はLATCH法での整理軸検討(目安15分) LATCH法の5軸のうちどれが合うかは、ペルソナの立場で考える
ステップ1:開発テーマの市場調査(目安10分)
自分たちの開発テーマに近いWebサービスやアプリを1〜2個思い浮かべ、「そのサービスではどんなカテゴリー分けをしているか」をチームで共有します。たとえば家計簿アプリなら「食費」「日用品」「交際費」のようなカテゴリーが該当しますが、「今月のグラフ」のような画面名は該当しません。あくまで情報のカテゴリーを見るのがポイントです。
ステップ2:LATCH法で整理軸を検討(目安15分)
Location(場所)・Alphabet(五十音・アルファベット)・Time(時間)・Category(カテゴリー)・Hierarchy(階層)の5つの軸のうち、自分たちの情報群にはどれが合うか、ペルソナの立場で考えます。
たとえば、レシピ類推サービスの「材料」という情報は、Category(肉・野菜・調味料)が直感的かもしれませんし、旅行アプリの「観光地」という情報は、Location(地域別)の方がペルソナにとって探しやすいかもしれません。ここで、なぜこの軸を選んだのか、ペルソナの行動を想像しながら理由を言語化しておきましょう。
3. カードソーティングの実践
🗣️ 要約
オープンカードソーティングは目安30分、クローズドカードソーティングは目安25分 オープンでは思い込みを壊す発見をし、クローズドでは分類案を検証する 境界が曖昧なカードがあっても問題ない
オープンカードソーティング(目安30分)
情報定義書の各項目を1枚ずつカード(付箋でも可)にし、ペルソナになりきって自由にグループ分けします。ここでの狙いは、事前に決めたカテゴリーに当てはめることではなく、「自然とこう分かれた」というグループとラベルを発見することです。
想定していなかった分類軸が出てきたら、それは大きな収穫です。「まさかこの2つが同じグループになるとは思わなかった」という気づきこそ、オープンカードソーティングの価値です。
クローズドカードソーティング(目安25分)
オープンの結果とLATCH法の検討をもとに、正式な分類案(カテゴリー名)を用意し、各カードがどのカテゴリーに入るかをチームで検証します。ここで初めて「この分類で本当に迷わず探せるか」を厳密にチェックします。
ここまでで、整理と分類のイメージはできてきましたか?もし「まだ2つのカテゴリーの境界が曖昧」という状態でも心配いりません。実務でも、分類は一度で完成するものではなく、リリース後も改善され続けるものです。
💬 AIに聞いてみよう
🗣️ 要約
カードの分類やLATCH法の軸選びに迷ったときは、具体的な状況をAIに相談できる
ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。たとえば:
- 「このカードは複数のカテゴリーに当てはまりそうだけど、どう考えればいい?」
- 「LATCH法のどの軸を選ぶべきか判断に迷うときのコツを教えて」
- 「オープンカードソーティングとクローズドカードソーティングの違いをもう一度、別の例で説明して」
演習
演習の進め方
チームで以下の4ステップを順番に実施し、整理分類済み情報定義書を完成させてください。
- 開発テーマに近いサービスの分類例を2つ以上共有する(市場調査)
- LATCH法の5軸から、開発テーマの情報群に合う軸を1〜2つ選び、理由を書き出す
- 情報定義書の全項目をカードにし、オープンカードソーティングでグルーピングする
- グルーピング結果をもとに正式な分類案を作り、クローズドカードソーティングで検証する
- 演習終了後チーム毎に発表してください
成果物
🗣️ 要約
各情報項目に分類カテゴリーが紐づいた「整理分類済み情報定義書」
「整理分類済み情報定義書」(各情報項目に、決定した分類カテゴリーが紐づいた状態の一覧表)
ヒント
🗣️ 要約
カードに動詞が混ざっていたら機能なので対象外にする 迷ったらペルソナの行動を基準に、AIに相談するとよい 時間内に完璧に終わらなくてもよい
- グルーピングに迷ったら、「このペルソナなら、この2つを同じ場所に探しに行くだろうか?」とAIに相談しながら考えてみましょう
- カードに動詞(「〜する」)が混ざっていたら、それは機能なので今回の分類対象から外してください
- 分類案がうまく決まらない場合は、無理に1つの軸に絞らず「まずはカテゴリーで大きく分け、その中を五十音順にする」のように軸を組み合わせても構いません
- 時間内に完璧に終わらなくても大丈夫です。次のセッションで見直す時間もあります
まとめ(5分)
🗣️ 要約
分類に唯一の正解はなく、ペルソナにとっての探しやすさが正解を決める 手順は市場調査→LATCH法→オープン→クローズドの4ステップ 次回は重み付けやこうもり問題への対処を学ぶ
今回学んだことを一言でまとめると、「分類に唯一の正解はなく、ペルソナにとっての探しやすさが正解を決める」ということです。市場調査で発想を広げ、LATCH法で仮説を立て、オープンカードソーティングで思い込みを壊し、クローズドカードソーティングで検証する、という4ステップの流れを覚えておいてください。
次回は、この演習で見えてきた分類の「難しさ」(重み付けやこうもり問題)にどう対処するかを学びます。今回の「ペルソナ視点で考える」という感覚が、そのまま土台になりますので、しっかり振り返っておきましょう。
🔄 振り返りチェック
🗣️ 要約
オープンとクローズドカードソーティングの違いを説明できるか カードが「情報」か「機能」かを見分けられるか
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- オープンカードソーティングとクローズドカードソーティングの違いを説明できますか?
- 分類対象が「情報」なのか「機能」なのか、自分たちが作ったカードを見分けられますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
🗣️ 要約
発展課題は、完成した分類案を別のペルソナ視点で見直すこと
- 参考リンク: なし(社内・チーム内資料として、作成した整理分類済み情報定義書を保管してください)
- 発展課題: 分類案を、別のペルソナ(サブペルソナ)の視点で見直したときに、同じ分類のままで良いかを検討してみましょう
学習ガイド
🗣️ 要約
受講者からよく出る質問への回答例と、つまずきやすいポイントへの対処法をまとめている
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
🗣️ 要約
LATCH法の軸が複数当てはまる場合は、階層的に組み合わせてよい オープンカードソーティングで意見が割れたときは、AIに論点を整理してもらうと進みやすい
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| LATCH法の5軸のうち複数が当てはまりそうな場合はどうする? | 無理に1つに絞らず、大分類をCategory、小分類をAlphabetにするなど、軸を階層的に組み合わせてよいことを伝える |
| オープンカードソーティングで意見が割れて収束しない | 「正解を決める」のではなく「ペルソナが一番迷わなそうな案」を多数決ではなく議論で選ぶよう促す。判断に迷ったらAIに複数案のメリット・デメリットを整理してもらうとよい |
| 市場調査で参考にできるサービスが思いつかない | 開発テーマの業界を問わず、似た情報構造(例:一覧・検索・カテゴリー)を持つ身近なアプリを1つ挙げるだけでよいことを伝える |
つまずきやすいポイント
🗣️ 要約
カードが動詞(機能)になっていて情報ではなくなっていることがある クローズドで無理に当てはめようとしてしまうが、それは分類案自体を見直すサイン
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 情報ではなく機能でカードを作ってしまう(例:「検索する」「登録する」というカードができる) | カードの文言が動詞で終わっていないか確認する。動詞になっていたら、その動詞の対象となる名詞(情報)に書き換える |
| クローズドカードソーティングで分類案に無理やり当てはめてしまう | 当てはまらないカードが出てきたら、それは分類案そのものを見直すサインだとAIに相談しながら気づけるようにする |
| 演習時間内に整理が終わらず焦ってしまう | 完璧を目指さず、「今日決められる範囲で決める」という割り切りでよいと伝える。翌日以降も見直しの機会があることを案内する |