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整理と分類の違い/事例に見るIAの有効性/情報分類の手法

概要

  • 日程: Day 1 / セッション8
  • 時間: 14:10-14:40
  • 形式: 座学
  • ゴール: 整理と分類の違いを説明し、LATCH法の5つの軸とカードソーティングの2種類(オープン/クローズド)を挙げられる
  • 学習形式: 対話型解説

導入(5分)

🗣️ 要約

  • 机の片付けでは「不要なものを捨てる」と「同じ種類をまとめる」という別の作業をしている
  • 午前に作った情報定義書は、まだ整理されていない「出しっぱなし」の状態である

さきほどのセッションで、みなさんはペルソナを1人定義しました。「誰に価値を提供するか」が具体的になりましたね。

ここで少し振り返ってみましょう。午前中に作った「情報定義書」を思い出してください。開発テーマに関係する情報を、思いつく限り洗い出しました。あれは、まだ雑然とした状態のはずです。

ここで質問です。あなたの部屋の机の上を思い浮かべてください。書類やペン、資料が山積みになっているとき、あなたは何をしますか? おそらく「いらないものを捨てる」ことと、「同じ種類のものをまとめる」ことを、両方やっているはずです。

実はこの2つ、似ているようでまったく違う作業です。今日のセッションが終わる頃には、この2つの違いを説明でき、次の演習で使う分類手法の名前と使い方が分かるようになっています。

本編(30分)

🗣️ 要約

  • 整理は不要な情報を捨てること、分類はカテゴリ分けすること
  • 甲骨文字の事例が示す「定義→確認→再定義」の反復がIAの本質
  • 分類の具体的手法はLATCH法とカードソーティング(オープン/クローズド)

1. 整理と分類の違い

🗣️ 要約

  • 整理=不要な情報を捨てる、分類=残った情報をカテゴリ分けする
  • 整理・分類の基準は開発チームの好みではなく「ペルソナ」

「整理」と「分類」、日常会話ではほとんど同じ意味で使われますが、情報アーキテクチャではきっちり区別します。

  • 整理:必要な情報を残し、不要な情報を捨てること
  • 分類:残った情報をカテゴリ分けすること

たとえば、机の上の書類を例にすると分かりやすいです。「もう使わない資料を捨てる」のは整理、「捨てずに残した資料を『契約書』『請求書』『メモ』のフォルダに分ける」のは分類です。整理をせずにいきなり分類しようとすると、不要な情報までカテゴリに押し込むことになり、分類そのものが複雑になってしまいます。

ここで少し考えてみてください。午前に作った情報定義書には、この「整理」はまだ済んでいるでしょうか? おそらく、まだ「出しっぱなし」の状態のはずです。だからこそ、これから学ぶ手法を使って、整理と分類を一緒に進めていきます。

ここがポイント

特に注意してほしいのは、整理の基準です。「不要かどうか」を誰が決めるかというと、それは開発チームの好みではなく、セッション7で定義した「ペルソナ」です。ペルソナにとって価値がない情報は捨てる候補になり、価値がある情報は残して分類の対象にする。整理の基準も分類の基準も、常にペルソナに立ち返ることが、情報アーキテクチャの一貫した考え方です。

2. 事例に見るIAの有効性:甲骨文字の反復

🗣️ 要約

  • 甲骨文字は「情報の定義→価値の確認→再定義」を何百年も繰り返して洗練された
  • この反復はSECIモデルの循環と同じ考え方
  • 情報定義書の整理・分類も1回で完璧にはならない

抽象的な話が続いたので、ここで大昔の事例を紹介します。中国最古の文字体系のひとつとされる甲骨文字は、亀の甲羅や動物の骨に刻まれた占いの記録です。

当時の占い師は、まず「何を占いたいか(例:狩りの成否)」という情報を定義し、それを刻みました。そして結果が出るたびに「この記録は本当に役に立ったか」という価値を確認し、次の占いのときには表現や項目を再定義していきました。これを何百年も繰り返した結果、記号は徐々に洗練され、意味が安定した「文字」へと磨かれていきました。

  • 情報の定義:占いたいことを記号にする
  • 価値の確認:その記録が後で役立ったかを確かめる
  • 再定義:役立たなかった部分を直す
  • 価値の確認:また試してみる

この繰り返しは、以前のセッションで触れたSECIモデルの「暗黙知を形式知にして、また暗黙知に戻して磨く」という循環そのものです。情報アーキテクチャも同じで、一度整理・分類して終わりではなく、この反復によって精度が上がっていきます。

なぜ古代の占い師の話をしたのか、少し考えてみてください。実は、みなさんがこれから行う「情報定義書の整理・分類」も、1回で完璧にはなりません。次のセッションでも、この反復を意識しながら進めることになります。

コラム

甲骨文字は、19世紀末に「竜骨(りゅうこつ)」という名前の漢方薬として売られていた骨のかけらから発見されました。当時の学者・王懿栄(おう いえい)が、薬として届いた骨に刻まれた不思議な模様に気づき、それが文字であることを見抜いたのです。もし彼が薬を飲んでしまっていたら、人類は最古の文字体系のひとつを発見する機会を、何十年も、あるいは永遠に失っていたかもしれません。「情報の可視性」——見えるはずのものが見えていなかった、見えない価値に気づけるかどうか——を象徴するような逸話です。

3. 情報分類の手法:LATCH法とカードソーティング

🗣️ 要約

  • LATCH法には5つの軸(Location・Alphabet・Time・Category・Hierarchy)がある
  • カードソーティングにはオープン(発見用)とクローズド(検証用)の2種類がある
  • 手順はオープンカードソーティング→LATCH法での整理→クローズドカードソーティングの順

さて、ここまでの話を抽象化して、実際に使える「手法」の形にしましょう。

まず1つ目はLATCH法です。これは情報を整理する切り口を5つに整理したもので、頭文字を取ってLATCHと呼びます。

  • Location(場所):地図や座席表のように、場所を基準に並べる
  • Alphabet(アルファベット・五十音):辞書や電話帳のように、名前の順に並べる
  • Time(時間):歴史年表やニュースのように、時系列で並べる
  • Category(カテゴリ):図書館の書棚のように、種類でまとめる
  • Hierarchy(階層):ランキングや価格順のように、大小・順位で並べる

たとえば、料理レシピサイトの情報を整理するなら、「和食・洋食・中華」で分けるのはCategory、「調理時間15分以内」で分けるのはHierarchyに近い考え方です。逆に、レシピを「思いついた順」に並べるのは、LATCH法のどれにも当てはまりません。それはペルソナにとって探しやすい並びとは言えないからです。

2つ目はカードソーティングです。情報1件を1枚のカードに書き出し、実際に手を動かして仲間分けする手法で、2種類あります。

  • オープンカードソーティング:分類の枠を決めずに、ペルソナ視点で自由にグルーピングする。想定していなかった分類軸やラベル案を発見するのが目的
  • クローズドカードソーティング:LATCH法やオープンソーティングの結果をもとに作った分類案(カテゴリー)をあらかじめ提示し、各カードがどのカテゴリーに振り分けられるかを検証する

ここまでで、LATCH法とカードソーティングのイメージはできましたか? もし「オープンとクローズドの違いがまだあいまい」という場合は、このあとの💬AIに聞いてみようのコーナーで質問してみてください。

コード例・実例

情報定義書の1件(カード)は、たとえば次のようなイメージです。次のセッションでは、これを実際に付箋やスプレッドシートの1行として扱います。

カードID: I-014
情報名: レシピの調理時間
説明: そのレシピを作るのにかかる目安時間(分)
ペルソナにとっての価値: 忙しい平日でも作れるか判断できる

ここがポイント

よくある間違いとして、「分類軸をチームの好みで先に決めてしまう」ことがあります。正しくは、まずオープンカードソーティングでペルソナ視点の分類軸を発見し、それをLATCH法で整理してから、クローズドカードソーティングで検証する、という順番です。順番を飛ばすと、せっかくの「想定していなかった発見」を得るチャンスを逃してしまいます。

💬 AIに聞いてみよう

🗣️ 要約

  • LATCH法やカードソーティングについて、別の例や実務での使われ方をAIに質問できる

ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。たとえば:

  • 「LATCH法のCategoryとHierarchyの違いがよく分からないので、別の例で説明して」
  • 「オープンカードソーティングとクローズドカードソーティングの違いは何?」
  • 「実務では、どんな場面でLATCH法が使われているの?」

まとめ(5分)

🗣️ 要約

  • 整理と分類は別の作業であり、分類にはLATCH法とカードソーティングという手法がある
  • 次セッションでは今日学んだ手法を実際に手を動かして試す

今回学んだことを一言でまとめると、「整理と分類は別の作業であり、分類にはLATCH法とカードソーティングという具体的な手法がある」ということです。

次回のセッション9では、いよいよみなさんの情報定義書を使って、今日学んだ手法を実際に手を動かして試します。今日の「甲骨文字の反復」を思い出しながら、1回で完璧を目指さず、何度も見直す前提で取り組みましょう。

🔄 振り返りチェック

🗣️ 要約

  • 整理と分類の違いを説明できるか
  • LATCH法を自分たちの情報に当てはめられるか
  • カードソーティングの正しい順序を説明できるか

以下の問いに答えられるか確認してみましょう:

  • 整理と分類の違いを、自分の言葉で説明できますか?
  • LATCH法の5つの軸を、開発テーマの情報に当てはめるとしたら、どれが使えそうですか?
  • オープンカードソーティングとクローズドカードソーティングは、どちらを先に行いますか?

答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。

補足資料

🗣️ 要約

  • LATCH法の提唱者はリチャード・ソール・ワーマン
  • 発展課題は、身の回りのものをLATCH法で並べ替えること
  • 参考リンク: LATCH法の提唱者リチャード・ソール・ワーマンの著作『Information Anxiety』
  • 発展課題: 自分の身の回り(本棚、スマホのアプリ一覧など)をLATCH法のどれか1つで並べ替えてみる

学習ガイド

🗣️ 要約

  • 受講者からよく出る質問への回答例と、つまずきやすいポイントへの対処法をまとめている

このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。

想定される質問と回答例

🗣️ 要約

  • Category(カテゴリ)とHierarchy(階層)の違い
  • カードソーティングに適した人数
  • 甲骨文字の歴史を暗記する必要はないこと
質問 ヒント
LATCH法のCategoryとHierarchyは何が違うの? Categoryは種類による横並びの分類(例:和食/洋食)、Hierarchyは大小・順位による縦の並び(例:価格順、人気順)。同じ情報でもどちらの軸でも整理できる場合がある点を確認する
カードソーティングは何人くらいでやるの? 人数に厳密な決まりはないが、複数人の視点が入るほど「想定していなかった発見」が出やすい。チーム全員で行うのが望ましい
甲骨文字の話は覚えていないとダメ? 暗記の必要はない。「1回で完璧にせず、価値を確認しながら再定義する」という考え方だけ持ち帰れればよい

つまずきやすいポイント

🗣️ 要約

  • 整理を飛ばして分類から始めてしまいやすい
  • 分類軸を先に決めすぎてオープンカードソーティングの発見を妨げてしまいやすい
  • 情報ではなく機能を分類してしまいやすい
つまずきポイント ヒント
整理をせずにいきなり分類を始めてしまう 分類の前に「この情報はペルソナにとって本当に必要か」を1件ずつ確認する時間を取るよう促す
分類軸をチームの好みで先に決めてしまう オープンカードソーティング→LATCH法での整理→クローズドカードソーティングの順番を再確認させる
「情報」ではなく「機能」を分類してしまう 次セッションの注意点でもあるが、「〜する」という動詞ではなく「〜という情報(名詞)」を分類対象にしているか確認させる
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