(演習)開発テーマの情報を洗い出す(情報定義書v1)
概要
- 日程: Day 1 / セッション5
- 時間: 11:00-11:50
- 形式: 演習
- ゴール: 開発テーマに登場する情報をなるべく多くブレインストーミングし、情報定義書として清書できる
- 学習形式: AIブレスト
導入(5分)
🗣️ 要約
「データに価値が加わったものが情報」という前回の感覚を、今日は自分たちの開発テーマに当てはめる 開発テーマに登場する情報を「情報定義書」という1枚のリストにまとめる この段階では分類はせず、とにかく数を出すことを優先する
さきほどのセッションでは、「点とは何でしょう?」「情報とは何でしょう?」という問いを通じて、データに価値が加わったものが情報である、という感覚をつかみました。
ここからは、その感覚を実際に自分たちの開発テーマにぶつけてみます。ところで、みなさんのチームの開発テーマ(家計簿システム、レシピ類推サービス、オークションシステムなど)には、どんな情報が登場するでしょうか?おそらく、頭の中には断片的にいくつか浮かんでいるはずです。
このセッションが終わる頃には、その断片が「情報定義書」という1枚のリストになっています。今日の午後、みなさんはこのリストを整理・分類していくことになるので、今はとにかく数を出すことに集中してください。
本編(20分)
🗣️ 要約
ブレインストーミングは「量」が「質」を生む 整理・分類は午後に行うため、この段階では行わない
1. ブレインストーミングは「量」が「質」を生む
🗣️ 要約
アイデア出しは釣りと同じで、針を複数垂らすほど価値ある情報に当たりやすい(量が質を生む) 家計簿システムでは支出額やレシート写真などが情報に該当し、消費税率のような一般常識は該当しない 情報は「ペルソナが入力・参照する対象」であり、単なる前提知識ではない
アイデア出しには、いわば釣りのようなところがあります。針を1本だけ垂らすより、たくさんの針を垂らしたほうが、良い魚(=価値ある情報)に当たる確率は上がります。最初から「これは情報として重要だろうか」と選別しながら考えると、手が止まってしまいます。
具体的に言うと、家計簿システムというテーマなら、「支出額」「支出日」「カテゴリ」は誰もがすぐ思いつく情報です。一方で、「レシートの写真」「支払い方法(現金・カード)」「一緒に買い物をした人」なども、実は情報になり得ます。逆に、「消費税の税率が何%か」という一般常識は、開発テーマに登場する情報としては該当しません。なぜなら、それはペルソナが日々「入力」したり「参照」したりする対象ではなく、単なる社会的な前提知識だからです。
ここで少し考えてみてください。あなたの開発テーマで、「これは情報かもしれない」と思うものを、頭の中で3つ挙げてみましょう。
2. 整理・分類は「あとで」でいい
🗣️ 要約
情報の分類はペルソナ定義後の午後に行い、この段階では分類しない 早く分類すると「カテゴリに入らない」という理由で有望な情報を捨ててしまう危険がある
このセッションでは、情報を分類したり優先順位をつけたりする必要はありません。分類は今日の午後、ペルソナを定義したあとに行います。なぜ順番を分けるかというと、整理・分類を先にやってしまうと、「これはカテゴリに入らないから」という理由で有望な情報を早々に捨ててしまうことがあるからです。
たとえば、ブレインストーミングの初期段階で「レシートの写真」という情報を「機能に関係なさそうだから」と除外してしまうと、あとで「レシートを撮影して自動入力する」という価値あるアイデアの芽を摘んでしまうかもしれません。まずは出し切ることを優先しましょう。
コード例・実例
情報定義書は、この段階では表形式で十分です。
| No. | 情報名 | 具体例 | 気づいたこと |
|---|---|---|---|
| 1 | 支出額 | 1,200円 | 数値。通貨の単位も情報かもしれない |
| 2 | 支出日 | 2026-08-24 | 時系列で扱えそう |
| 3 | カテゴリ | 食費、交通費 | 誰が決める分類か要検討 |
ここがポイント
特に注意してほしいのは、「機能」と「情報」を混同しないことです。「グラフ表示機能」はこの段階で書く対象ではありません。書くべきは「グラフに使われる支出額・カテゴリ」といった情報そのものです。よくある間違いとして、いきなり画面や機能をリストアップしてしまうケースがありますが、正しくは「その画面や機能が扱っている情報は何か」まで分解して書き出すことです。
コラム
ブレインストーミングという言葉を広めたのは、広告会社BBDOの創業者アレックス・オズボーンだと言われています。彼が1940年代に提唱した際に大事にしたルールの1つが「批判厳禁」でした。会議中に「それは無理だ」と言われた瞬間、人はアイデアを出すのをやめてしまう、という観察からきているそうです。今日のこの演習でも、チームメンバーの発言に対しては「いいね、他には?」で受け止めてみてください。生成AIに壁打ちする場合も同じで、AIは絶対に「それは無理だ」と言わずに付き合ってくれるので、遠慮なく数を出す練習相手として使ってみましょう。
💬 AIに聞いてみよう
🗣️ 要約
情報が出ないとき、情報と機能の区別が難しいときは、具体的な言い方でAIに聞くと解決しやすい
ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。たとえば:
- 「(開発テーマ)に関わる情報を10個挙げて」
- 「情報と機能の違いがまだよく分からないので、別の例で説明して」
- 「このリストの中に、機能っぽいものが混ざっていないかチェックして」
演習
演習の進め方(10分)
チームで開発テーマに登場する情報を、ブレインストーミング形式でなるべく多く洗い出し、表形式の「情報定義書」として清書してください。
- まず1〜2分、思いつく情報を書き出す(他人の意見を否定しない)
- チームで出た情報を1つの表にまとめる
- AIに「他に見落としている情報はないか」を確認してもらう
- 演習終了後チーム毎に発表してください
成果物
「情報定義書」(No.、情報名、具体例、気づいたことの4列を持つ表。なるべく多く。)
ヒント
🗣️ 要約
情報が出ないときはAIに「(開発テーマ)に関わる情報を10個挙げて」と聞くと出しやすい ペルソナが「入力する」「見る」「検索する」ものを想像すると情報が見つかりやすい 名詞か動詞かで、情報か機能かを見分けられる
- 情報がなかなか出ないときは、AIに「(開発テーマ)に関わる情報を10個挙げて」と聞いてみてください。そこから自分たちのテーマに合わせて取捨選択・アレンジすると出しやすくなります
- ペルソナ(利用者)が「入力する」「見る」「検索する」ものを1つずつ想像すると情報が見つかりやすいです
- 「機能」を書いてしまっていないか迷ったら、「これは名詞か、動詞か」を確認してください。名詞であれば情報の可能性が高いです
まとめ(5分)
🗣️ 要約
情報を出すときは、選ばずにまず量を出すことが重要 次回は「アーキテクチャとは」「情報が持つ特性」を学び、今日の情報定義書を午後に見直す
今回学んだことを一言でまとめると、「情報を出すときは、選ばずにまず量を出す」です。情報定義書ができていれば、このセッションの目的は達成です。
次回は「アーキテクチャとは」「情報が持つ特性」を学びます。今日出した情報定義書を、午後は「価値」「可視性」「多義性」という3つの視点で見直していくので、しっかり手元に残しておきましょう。
🔄 振り返りチェック
🗣️ 要約
情報定義書に機能が混ざっていないか なぜこの段階では整理・分類をしないのか
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 情報定義書に「機能」が混ざっていないか、説明できますか?
- なぜこの段階では整理・分類をしないのか、説明できますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
🗣️ 要約
参考リンクは特になく、AIと対話しながら情報を広げるとよい 発展課題は、洗い出した情報を「毎日触れる情報」と「たまにしか触れない情報」に色分けすること
- 参考リンク: なし(チームの開発テーマに応じてAIと対話しながら情報を広げてください)
- 発展課題: 洗い出した情報のうち、ペルソナが「毎日触れる情報」と「たまにしか触れない情報」を色分けしてみましょう(午後の分類演習の下準備になります)
学習ガイド
🗣️ 要約
受講者からよく出る質問への回答例と、つまずきやすいポイントへの対処法をまとめている
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
🗣️ 要約
情報が思いつかないときは「入力する・表示する・検索する」の3視点で考えると出やすい 意見がかぶるのは問題ではなく、いったんすべて書き出してから見比べればよい 情報と機能の違いは、動詞(する)が付くかどうかで見分けられる
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 情報が10個も思いつきません | 「入力する情報」「表示する情報」「検索する情報」の3視点に分けて考えると出やすくなります。AIに具体例を出してもらい、そこから自分たちのテーマに合わせるのも有効です |
| チームメンバーの意見がかぶってしまいます | かぶること自体は問題ありません。表現が違うだけで別の側面を指している場合もあるので、いったんすべて書き出してから後で見比べましょう |
| 情報と機能の違いがまだ曖昧です | 「◯◯を表示する」は機能、「表示される◯◯そのもの」は情報です。動詞(する)が付くかどうかで見分けられます |
つまずきやすいポイント
🗣️ 要約
機能や画面名を情報としてリストアップしてしまいやすい 完璧な分類をしようとして手が止まりやすい 具体例が1つのペルソナ像に偏りやすい
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 機能や画面名を情報としてリストアップしてしまう | 「グラフ表示」ではなく「グラフに使われる数値(支出額など)」のように、名詞化して書き直すよう促してください |
| 完璧な分類をしようとして手が止まる | このセッションでは分類禁止、量を出すことだけがゴールであると再度伝えてください。分類は午後のセッション9で行います |
| 具体例が1つのペルソナ像に偏る | 「他にこのシステムを使う人はいないか」をAIに聞いてもらうと、見落としていた情報に気づきやすくなります |