疑似プロジェクトのかんばん作成
概要
- 日程: Day 9 / セッション 2
- 時間: 10:00-11:00
- 形式: 実習
- ゴール: 「学校での発表会」「宴会」「海外旅行」のいずれかのプロジェクトについて、担当者・所要時間・成果物・終了条件を定めたかんばんを50分以内に作成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
前のセッションで、WBS・ガントチャート・かんばんという3つの道具を学びました。
でも、道具は説明を聞いただけでは使えるようになりません。自転車と同じで、乗ってみて初めて身につきます。
ここで1つ問いかけです。
なぜ、いきなり自分たちの開発プロジェクトでかんばんを作らないのでしょうか?
理由は、いきなり本番だと「開発の中身を考えること」と「かんばんの作り方を覚えること」を同時にやることになり、頭がパンクするからです。
料理を初めて習うとき、いきなりフルコースは作りませんよね。まず卵焼きから。
そこでこのセッションでは、誰でも中身を想像できる身近な疑似プロジェクトを題材に、かんばん作りの手順そのものに集中します。
ここで手法を体に入れておけば、次のセッション(自チームの開発計画)がスムーズになります。
本編(10分)
1. 演習の進め方〜タスク洗い出しからかんばんまで
手順は前セッションで学んだ流れの縮小版です。
- プロジェクトを選ぶ(3分): 3つから1つ選ぶ
- タスクを洗い出す(15分): ブレストで列挙→MECEに整理
- カードに4項目を書く(15分): 担当者・所要時間・成果物・終了条件
- かんばんに並べる(10分): Todo/Doing/Doneの3列を作り、全カードをTodoに置く。着手順も考える
- チーム内で読み合わせる(5分): 終了条件が曖昧なカードを指摘し合う
選べるプロジェクトは次の3つです。
- 学校での発表会プロジェクト: クラスで研究成果の発表会を開催する
- 宴会プロジェクト: 部署の歓迎会を企画・開催する
- 海外旅行プロジェクト: 友人と1週間の海外旅行に行く
どれも正解はありません。チームで「一番タスクを想像しやすいもの」を選びましょう。
ここがポイント
- 今日の主役は題材ではなく手法。宴会の店選びで盛り上がりすぎないこと
- かんばんは「Todo」「Doing」「Done」の3状態。今日は計画段階なので、全カードがTodoに並ぶのが完成形
- カードの4項目(担当者・所要時間・成果物・終了条件)が1つでも欠けたカードは「未完成のカード」
コラム
「宴会の幹事はプロジェクトマネージャの登竜門」と言われることがあります。予算管理(会費)、要員管理(出欠確認)、調達(店の予約)、リスク管理(ドタキャン対応)、ステークホルダー調整(上司の好み)——PMの仕事が全部詰まっているからです。実際、ある大手SIerでは新人に宴会幹事を任せて段取り力を見る文化があったとか。今日の演習は遊びに見えて、実はかなり実戦的です。
2. 終了条件の書き方〜今日一番の難所
このセッションで一番つまずきやすいのが終了条件です。
「お店を準備する」は終了条件として該当しません。「準備」がどこまでか人によって違うからです。
「人数分の席を予約し、予約番号をチームのチャットに共有済み」なら該当します。誰が見ても終わったか判定できるからです。
書き方のコツは、「〜する」ではなく「〜が完成している」「〜済みである」と状態で書くことです。
| 曖昧な例(NG) | 終了条件になっている例(OK) |
|---|---|
| 発表資料を準備する | 発表スライドが完成し、リーダーのチェックを通過している |
| お店を手配する | 全員分の予約が完了し、予約番号が共有されている |
| パスポートを確認する | 全員のパスポート有効期限が旅行日程をカバーしていることを確認し、一覧表に記録済み |
ここで考えてみてください。「会費を集める」の終了条件は、どう書けばよいでしょうか? チームで30秒話してから先に進みましょう。
ここがポイント
- 終了条件は「他人がDoneに動かしてよいか判定できる」レベルまで具体化する
- 所要時間は完璧でなくてよい。「30分?2時間?半日?」のざっくり3択でまず置いてみる
- 担当者は必ず1人にする。「全員」担当のタスクは、誰もやらないタスクになる
コラム
「誰の仕事でもない仕事は、誰もやらない」——これは社会心理学で「責任の分散」と呼ばれる現象です。1964年のキティ・ジェノヴィーズ事件の研究から有名になりました。「みんなでやろう」と言った瞬間、全員が「誰かがやるだろう」と思う。だからかんばんのカードには必ず1人の名前を書きます。冷蔵庫の「誰か牛乳買ってきて」メモがいつまでも実現しないのと同じ原理です。
💬 AIに聞いてみよう
演習中、こんなふうにAIを使ってみましょう:
- 「海外旅行プロジェクトのタスクを洗い出したので、漏れがないかチェックして」(自分たちで挙げてから聞くのがコツ)
- 「『お土産を買う』の終了条件、これで曖昧さは残ってない?」
- 「このタスク、所要時間はどれくらい見ておくのが普通?」
- 「タスクが25個になったけど、多すぎる? まとめた方がいいものはある?」
実習・演習(35分)
課題
チームで「学校での発表会」「宴会」「海外旅行」のいずれか1つのプロジェクトを選び、かんばんを作成してください。
- プロジェクトを1つ選ぶ(Day 1で決めた合意形成ルールを使うこと)
- プロジェクトのゴール(完了の定義)を1行で書く
- 例: 「参加者20名の歓迎会を開催し、無事に解散する」
- ゴールから逆算してタスクを洗い出す(目安: 10〜20個)
- 各タスクをカードにし、次の4項目を必ず書く
- 担当者(1人)
- 所要時間(見積もり)
- 成果物(何ができるか)
- 終了条件(どんな状態になったらDoneか)
- 「Todo」「Doing」「Done」の3列のかんばんを作り、全カードをTodoに並べる
- 「もし今日から始めるなら最初に動かす3枚はどれか」をチームで決め、印を付ける
成果物
- 疑似プロジェクトのかんばん1枚
- Todo/Doing/Doneの3列がある
- タスクカード10枚以上
- 全カードに担当者・所要時間・成果物・終了条件が記入されている
- 最初に着手する3枚に印がある
ヒント
- タスクが出てこないときは、時間軸でなぞると出てきます。「1ヶ月前は何をする?1週間前は?前日は?当日は?終わった後は?」
- 「準備する」「対応する」「確認する」で終わるカードは黄色信号。AIに「この終了条件は曖昧?」と聞いてみましょう
- 1枚のカードの所要時間が「1日以上」になったら、分解を検討。「2つに割るならどう割る?」とAIに相談できます
- 逆に「5分で終わる」カードが量産されたら細かすぎ。近いものをまとめましょう
- 時間が余ったら、依存関係(このタスクの前にあのタスクが必要)を矢印やメモで書き込んでみると、次のセッションの予習になります
- 行き詰まったら、AIに「宴会プロジェクトで忘れられがちなタスクは?」と視点を変える質問を投げるのも有効です
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると、**「かんばんのカードは、担当者・所要時間・成果物・終了条件の4点セットで初めて動かせる」**です。
- 身近な題材でも、タスクの洗い出し→カード化→かんばん配置の手順は本番と同じ
- 終了条件は「〜する」ではなく「〜が完成している」と状態で書く
- 担当者は1人。「全員」は「誰もやらない」と同じ
各チーム、作ったかんばんから「自信作のカード」を1枚選んで、終了条件を声に出して発表してみましょう(話す&行う)。
次のセッションでは、いよいよ自分たちの開発プロジェクトのWBS・ガントチャート・かんばんを作ります。今日の手法をそのまま使います。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- かんばんの3つの状態(列)を言えますか?
- カードに書く4項目をすべて挙げられますか?
- 「資料を準備する」がなぜ終了条件として不適切か、説明できますか?
- 担当者を1人に絞る理由を説明できますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: Trello・GitHub Projects・Notionボードビューなど、デジタルかんばんツールの入門記事
- 発展課題: 自分の「今週のプライベートのタスク」を5枚のカードにして、終了条件付きで書いてみましょう。かんばんは仕事以外でも使えます
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| タスクは何個くらいが正解? | 正解はないが、このサイズの題材なら10〜20個が目安。それ以下は粗すぎ、30個超は細かすぎの可能性 |
| 所要時間の見積もりが当てずっぽうになる | それでよい。見積もりは経験で精度が上がるもの。まず仮置きし、ずれたら学びとして次に活かす |
| 担当者が偏ってしまう | 所要時間を合計して人ごとに比べてみる。偏りが見えたら、それこそかんばんの効果。カードを動かして調整する |
| DoingやDoneには何を置くの? | 今日は計画時点なので全部Todoでよい。実際に運用が始まると(Day 11以降)カードが右に流れていく |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 題材選びで時間を使いすぎる | 3分で決める。合意形成ルール(多数決等)を機械的に適用してよい。題材の優劣はほぼない |
| 終了条件が全部「〜を確認する」になる | 確認した結果どういう状態になるかまで書く。「確認し、一覧表に記録済み」「確認し、チャットで共有済み」 |
| 成果物と終了条件の違いが分からない | 成果物は「モノ」(予約番号、買い物リスト)、終了条件は「状態」(共有済み、レビュー通過済み)。成果物が終了条件の中に登場することが多い |
| 細部の議論で手が止まる | 「宴会の予算はいくら?」などの設定は適当に仮決めしてOK。今日の目的は設定の精密さではなく手法の習得 |