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情報定義書の作成

概要

  • 日程: Day 4 / セッション 2
  • 時間: [9:55-11:00]
  • 形式: 実習
  • ゴール: ペルソナとCJMを参照しながら開発テーマに登場する情報を30個以上列挙し、整理・分類して情報定義書を60分以内に作成できる
  • 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)

導入(5分)

前のセッションで「整理(捨てる)→分類(分ける)」の手順と、カードソーティングの2つの手法を学びました。ここからは自分たちの開発テーマで実践します。

始める前に、机の上に2つの成果物を出してください。

  • 昨日作ったペルソナのプロフィール
  • 昨日作ったCJM 2枚(As-Is版・To-Be版)

なぜでしょうか?情報の洗い出しは、ゼロから空想する作業ではないからです。To-Be版CJMには、ペルソナの体験が時系列で描かれています。その体験の各場面で、システムは必ず何らかの情報を扱っています。CJMは情報の鉱脈です。

「タスクの関係を常に意識する」——研修初日に確認した心がけを思い出してください。前のタスクの成果物を利用しているか、飛躍がないか、漏れがないか。今日はそれを実地で試す日です。

本編(10分)

1. 情報定義書とは何か・作成の手順

情報定義書とは、開発テーマに登場する情報を列挙し、整理・分類した一覧表です。この後の情報モデル定義(次セッション以降)、さらには画面設計・テーブル設計(Day 5以降)すべての源流になります。

作成手順は、前セッションで学んだ通り3ステップです。

flowchart LR A["Step1 洗い出し
ブレインストーミングで列挙"] --> B["Step2 整理
不要な情報を捨てる"] B --> C["Step3 分類
カードソーティング"]

Step1 洗い出し(ブレインストーミング): Day 2で体験したブレストの4原則(批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎)をここでも使います。To-Be版CJMを左から右へたどり、「この場面でシステムは何を知っている必要がある?」と問いながら、情報を付箋に書き出します。1枚1情報を忘れずに。

たとえば「健太さんが空き枠を見て予約する」という場面なら——「空き枠の日時」「定員」「残り枠数」「予約者の名前」「連絡先」が出てきます。場面を変えれば「キャンセル理由」「通知の送信日時」も出てくるでしょう。

Step2 整理: 出そろった付箋から、システムの処理に使わない情報を捨てます。判断に迷ったら「To-Be版CJMのどの場面で使う?」と自問。答えられなければ捨て候補です。

Step3 分類: まずオープン・カードソーティングで自然なまとまりを見つけてカテゴリ名を付け、追加で出てきた情報はクローズドで振り分けます。

コード例・実例

情報定義書のフォーマット例です(題材: 飲食店予約システム)。

No. 情報名 説明 カテゴリ 出どころ(CJMの場面)
1 店名 予約対象の店舗の名称 店舗情報 店を探す場面
2 営業時間 店舗の開店・閉店時刻 店舗情報 店を探す場面
3 会員名 予約する会員の氏名 会員情報 予約する場面
4 メールアドレス 通知の送信先 会員情報 通知を受け取る場面
5 予約日時 予約した来店日時 予約情報 予約する場面
6 予約人数 来店する人数 予約情報 予約する場面
7 キャンセル理由 予約を取り消した理由 予約情報 予定変更の場面

「出どころ」列があると、漏れ・飛躍のチェック(タスクの関係の意識)が簡単になります。

ここがポイント

  • 洗い出しの量が勝負。30個はあくまで下限。最初の15分は批判禁止でとにかく出す
  • 情報名は名詞で短く。「予約をする」(動詞)ではなく「予約日時」「予約人数」(名詞)
  • よくある間違い: 画面や機能を書いてしまう(「予約画面」「検索機能」は情報ではない)。情報とは、システムが覚えておく・受け渡す事柄のこと

コラム

「30個も出るかなあ」と不安になった人へ。世界初の本格的なコンピュータ予約システムは、1960年代にアメリカン航空とIBMが作った「SABRE」です。開発前の調査で、たった1件のフライト予約に登場する情報を洗い出したところ、便名・区間・日付・座席クラス・乗客名・連絡先・経由地・運賃・発券状態……と、当時の紙の台帳から数百種類の情報が見つかったそうです。電話オペレーターが頭と紙で処理していた情報を全部洗い出したからこそ、システム化に成功しました。どんなに小さく見えるテーマでも、情報は思った以上に眠っています。掘りましょう。

2. AIを「もう一人のメンバー」として使う

今日のブレストでも、AIをチームの一員にしましょう。ただし使い方に順番があります。

  1. まず人間だけで出し切る(10分): 先にAIに聞くと、AIの答えに引っ張られてチームの発想が狭まります
  2. 行き詰まったらAIに視点を変えてもらう: 「管理者の立場から見ると、他にどんな情報が必要?」「お金に関する情報で漏れていそうなものは?」
  3. 最後にAIへ漏れチェックを依頼する: 洗い出した一覧を貼り付けて「飲食店予約システムとして、漏れていそうな情報を指摘して」

ここで少し考えてみてください。なぜ「最初からAIに全部出してもらう」のはダメなのでしょうか?

——AIが出した一覧は「一般的な正解」であって、あなたたちのペルソナの体験から出てきたものではないからです。ペルソナ固有の情報(例: アレルギー情報、子連れ可否)は、CJMを読み込んだチームにしか出せません。AIは補完役。主役はチームとペルソナです。

ここがポイント

  • AI活用の順番: 人間が出し切る → AIで視点追加 → AIで漏れチェック
  • AIへの依頼には文脈を渡す。「ペルソナは〜で、To-Be版CJMは〜です。この前提で漏れを指摘して」と背景込みで聞くと精度が上がる
  • よくある間違い: AIが挙げた情報を無検証で全部追加する。Step2の整理基準(処理に使うか)で必ずふるいにかける

コラム

ブレインストーミングの考案者アレックス・オズボーンは広告代理店BBDOの重役でした。「Brainstorm」は直訳すると「脳の嵐」。彼の著書によれば、会議で部下のアイデアが上司への忖度で潰されるのに腹を立て、「批判禁止」をルール化したのが始まりだそうです。それから約80年、いまや「忖度ゼロで何個でもアイデアを出す相棒」としてAIが登場しました。オズボーンが見たら泣いて喜ぶか、仕事を奪われたと嘆くか——どちらでしょうね。

💬 AIに聞いてみよう

実習を始める前に、疑問があればAIに質問してみましょう。たとえば:

  • 「『情報』と『機能』の違いがまだ曖昧。例を5組挙げて対比して」
  • 「情報の粒度が粗すぎないかを確認する方法は?」
  • 「うちの開発テーマ『〜』の場合、見落としがちな情報のジャンルを教えて」

実習・演習

課題

開発テーマに登場する情報を洗い出し、整理・分類して情報定義書を作成してください。

  1. (15分)Step1 洗い出し: To-Be版CJMを場面ごとにたどりながら、チームでブレインストーミング。情報を付箋(またはオンラインボード)に1枚1情報で書き出す。目標30個以上。最初の10分は人間だけで、残り5分はAIに視点追加を依頼してよい
  2. (10分)Step2 整理: 「システムの処理に使うか」「To-Be版CJMのどの場面で使うか」を基準に、不要な付箋を捨て候補置き場へ移す
  3. (20分)Step3 分類: オープン・カードソーティングでまとまりを見つけ、カテゴリ名を付ける。途中で追加の情報を思いついたらクローズドで振り分ける。迷うカードには印を付けて仮置きする
  4. (10分)清書と漏れチェック: 情報定義書のフォーマット(No.・情報名・説明・カテゴリ・出どころ)に清書する。完成したらAIに一覧を見せて「漏れていそうな情報」を指摘してもらい、採用するものを追記する
  5. (5分)チーム内読み合わせ: 全員で読み合わせ、「出どころ」が空欄の情報(=飛躍)がないか確認する

成果物

「情報定義書」

  • 情報が30個以上列挙されている
  • 各情報に説明とカテゴリが付いている
  • ペルソナ・CJMとの対応(出どころ)が記載されている
  • 整理(捨てる判断)を経ていること。捨てた情報は捨て候補置き場に残しておく

ヒント

  • 洗い出しが20個で止まったら、視点を切り替えましょう。「ペルソナ以外の登場人物(店側・管理者)が必要な情報は?」「日時・金額・状態・連絡先のジャンルで漏れは?」
  • AIに頼むときは文脈ごと渡すのがコツです。「ペルソナのプロフィールとCJMの要約を貼り付けたうえで」依頼すると、一般論ではない指摘が返ってきます
  • カテゴリ名で悩んだら「〜に関する情報」の形で仮置きしてください(例: 「予約に関する情報」)。きれいな名前は次セッション以降で磨けます
  • 「これは情報?機能?」で迷ったら、AIに「『空き枠を検索する』は情報と機能のどちら?理由も」と聞いてみましょう
  • 時間配分が崩れたら、Step3の分類を優先してください。分類済みの25個は、未分類の40個より次工程で役に立ちます

まとめ(5分)

今回学んだことを一言でまとめると「ペルソナとCJMを鉱脈にして情報を掘り出し、整理・分類して一覧表にする」です。

  • 洗い出しはTo-Be版CJMの場面ごとに「システムは何を知っている必要があるか」と問う
  • 整理(捨てる)→分類(オープン→クローズド)の順で情報定義書に仕上げる
  • AIは「視点の追加」と「漏れチェック」で使う。主役はチームとペルソナ

次のセッションは座学に戻り、「情報モデル」を学びます。今日作った情報定義書のカテゴリが、処理の単位=情報モデルへと進化します。

🔄 振り返りチェック

以下の問いに答えられるか確認してみましょう:

  • 情報の洗い出しでペルソナとCJMを参照する理由を説明できますか?
  • 「情報」と「機能・画面」の違いを例を挙げて説明できますか?
  • 自チームの情報定義書のカテゴリを、見ないで言えますか?
  • AIをブレストに参加させるときの順番(人間→視点追加→漏れチェック)とその理由を説明できますか?

答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。

補足資料

  • 参考リンク: Day2_Session02資料(ブレインストーミングの4原則)、Day4_Session01資料(整理・分類とカードソーティング)
  • 発展課題: 自チームの情報定義書をAIに見せて「この中で、個人情報として取り扱いに注意が必要なものはどれ?」と聞いてみましょう。実務で必ず問われる観点です

学習ガイド

このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。

想定される質問と回答例

質問 ヒント
30個も出ない CJMの場面を1つずつたどる。登場人物を増やす(利用者以外に店側・管理者)。「状態」(予約済み・キャンセル済み等)も情報であることを思い出す
情報の粒度がバラバラになる 「それ以上分けると意味を失う単位」まで分ける。「会員情報」は粗すぎ、「会員名」「メールアドレス」が適切
捨てるかどうかチームで意見が割れる To-Be版CJMの場面で使うかが基準。決まらなければDay 1の合意形成ルールを使い、捨て候補置き場へ仮置きして先へ進む
カテゴリが2個しかできない カードの粒度が粗い可能性が高い。大きなカードを分割してから再ソートする

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
機能や画面を情報として書いてしまう 「システムが覚えておく事柄か?」で判定。「検索する」は機能、「検索条件」「検索結果の店名」は情報
AIの出力をそのまま情報定義書にする AI案は候補にすぎない。1件ずつ「ペルソナの体験に必要か」を通す。通らないものは捨てる
1枚の付箋に複数情報を書く 「と」「や」が入っていたら分割のサイン(「名前と住所」→「名前」「住所」)
「出どころ」が書けない情報がある 飛躍のシグナル。CJMに場面を追記するか、その情報を捨てるかをチームで判断する
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