ペルソナのプロフィール作成
概要
- 日程: Day 3 / セッション 2
- 時間: [10:00-11:00]
- 形式: 実習
- ゴール: 開発テーマに対して、10項目以上の属性を持つペルソナのプロフィールを60分以内にチームで作成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
前のセッションで、ペルソナとは「価値を提供する相手を描き出した象徴的な人物像」だと学びました。ここからは手を動かす時間です。
昨日決めた開発テーマを思い出してください。そのテーマで一番困っているのは、どんな人でしょうか?頭の中にぼんやり浮かんだ「誰か」を、これから60分で、名前と生活を持つ1人の人物に育て上げます。
このセッションの面白いところは、AIにペルソナを演じてもらうことです。作ったペルソナにAI経由でインタビューし、「この人、本当にいそうか?」を確かめながら深掘りします。履歴書を書くだけでなく、本人と面談までする——そんなイメージで進めましょう。
本編(10分)
1. 進め方の全体像
実習は3ステップで進めます。
たたき台を作る
(15分)"] --> S2["Step2
AIインタビューで深掘り
(25分)"] S2 --> S3["Step3
一貫性チェックと仕上げ
(15分)"]
- Step1: チームで話し合い、基本属性のたたき台を作る
- Step2: AIにペルソナを演じてもらい、インタビューで属性を深掘り・追加する
- Step3: 属性間の矛盾がないかチェックし、プロフィールとして清書する
埋めるべき属性は以下です(10項目以上が目標)。
- 名前 / 年齢 / 性別 / 居住地
- 仕事(職種・働き方・勤務時間)
- 生活パターン(平日と休日の1日の流れ)
- 価値観(何を大事にしているか)
- 課題(開発テーマに関連する困りごと)
- 家族構成
- 趣味や興味の対象
- インターネットの使用状況(使うデバイス・アプリ・時間帯)
ここがポイント
- 課題の属性は開発テーマと直結させる。テーマと無関係な悩みを書いても設計に使えない
- 名前は必ず付ける。「ペルソナA」と「田中健太さん」では、チームでの議論の盛り上がりがまるで違う
- よくある間違い: 最初から完璧を目指して議論が止まる。まず仮置きで埋め、Step2のインタビューで直せばOK(PDCAを小さく沢山)
コラム
プロのUXデザイナーの現場では、ペルソナのプロフィールに顔写真(フリー素材)を貼り、執務室の壁に貼り出すことがあります。ある企業では会議室にペルソナの等身大パネルを置き、議論が紛糾すると全員がパネルを見て「で、この人はどう思う?」と問い直す文化があったそうです。やりすぎに見えますが、「作り手の都合」へ流れるのを防ぐ効果は絶大だったとか。みなさんもペルソナ完成後は、チームの会話に名前で登場させてあげてください。
2. AIインタビューのやり方
Step2では、AIに「ペルソナ本人」を演じてもらいます。これには2つの効果があります。
- 質問に答えてもらう中で、考えていなかった属性が見つかる(深掘り)
- 回答に違和感があれば、設定に無理がある証拠(実在感の検証)
これは、刑事ドラマの取り調べに少し似ています。設定に嘘がある容疑者は、質問を重ねると矛盾が出ます。ペルソナも同じで、インタビューに耐えられる人物像は一貫性がある人物像です。
コード例・実例
AIにペルソナを演じてもらうプロンプト例です。そのままコピーして、自チームの内容に置き換えて使ってください。
あなたはこれから、以下のプロフィールを持つ人物「本人」として振る舞ってください。
【プロフィール】
- 名前: 田中健太
- 年齢: 32歳、男性
- 居住地: 埼玉県さいたま市
- 仕事: 食品メーカーの経理担当。平日9時〜18時勤務
- 家族構成: 妻と保育園に通う娘(3歳)の3人暮らし
- 課題: 保育園の送り迎えと仕事の両立で、自分の時間がほとんど取れない
【ルール】
- 私はインタビュアーです。あなたは田中健太として一人称で答えてください
- プロフィールにない質問をされたら、矛盾しない範囲で自然に設定を補って答えてください
- 補った設定は回答の最後に【補足設定: 〜】として明記してください
- 大げさな演技は不要です。実在の人物らしく、ときには曖昧に答えてください
準備ができたら「どうぞ」と言ってください。インタビューを始めます。
インタビューの質問例です。
- 「平日の朝、起きてから家を出るまでの流れを教えてください」
- 「その課題で一番つらいと感じた瞬間のエピソードを教えてください」
- 「これまでにその課題を解決しようと試したことはありますか?なぜうまくいきませんでしたか?」
- 「スマホは1日どれくらい使いますか?よく使うアプリは?」
- 「もし自由な時間が1時間増えたら、何をしたいですか?」
AIが【補足設定】として答えた内容のうち、納得感のあるものをプロフィールに採用していきます。
ここがポイント
- 「はい/いいえ」で終わる質問より、エピソードを引き出す質問が深掘りに効く(「一番つらかった瞬間は?」など)
- AIの回答に「この人ならそうは言わないのでは?」と感じたら、それは設定の矛盾シグナル。プロフィール側を修正する
- よくある間違い: AIの補足設定を無批判に全部採用してしまう。チームで「採用/不採用」を判断するのはあくまで人間
コラム
「インタビューで人物を作り込む」手法は、俳優の世界では昔から使われています。名優ロバート・デ・ニーロはタクシー運転手の役作りのため、本物のタクシー免許を取って数週間営業したという逸話があります。役(ペルソナ)に「住所は?昨日の夕飯は?」と聞かれて即答できるレベルまで作り込むと、演技に実在感が宿る。ペルソナ作りもまったく同じです。ちなみにAIは文句も言わず何十問でも答えてくれるので、デ・ニーロより手軽です。
💬 AIに聞いてみよう
実習を始める前に、疑問があればAIに質問してみましょう。たとえば:
- 「ペルソナの属性で『価値観』と『趣味』はどう違う?例を挙げて」
- 「うちの開発テーマ『〜』の場合、ペルソナの課題はどんな書き方が良い?」
- 「ペルソナインタビューで他に有効な質問を5つ提案して」
実習・演習
課題
開発テーマに対するペルソナのプロフィールを、チームで1人分作成してください。
- Step1(15分)たたき台作成: チームで話し合い、属性リストを仮置きで埋める。昨日決めた「取り組む課題」「開発テーマ」を必ず手元に置くこと
- Step2(25分)AIインタビュー: 上記プロンプト例を使い、AIにペルソナを演じさせてインタビューする。質問役・記録役を交代しながら、全員が最低1問は質問する。深掘りで得た設定をプロフィールに反映する
- Step3(15分)一貫性チェックと仕上げ: 属性間に矛盾がないか確認し、プロフィールを清書する。最後にAIへ「このペルソナのプロフィールに矛盾や実在感のない部分があれば指摘して」と依頼してレビューを受ける
- (5分)共有: 完成したペルソナをチーム全員で声に出して読み上げ、「この人、いそうだね」と全員が納得できるか確認する
成果物
「ペルソナのプロフィール」
- 属性10項目以上(名前・年齢・性別・居住地・仕事・生活パターン・価値観・課題・家族構成・趣味・インターネット使用状況等)
- 開発テーマに関連する「課題」が具体的なエピソード付きで書かれていること
- チーム全員が合意していること(Day 1の合意形成ルールを使う)
ヒント
- 議論が発散したら、まず「課題」の属性から固めましょう。課題が決まると他の属性が連鎖的に決まります
- AIインタビューでAIの演技が大げさすぎる場合は「もっと普通の人らしく、淡々と答えて」と指示すれば直ります
- 属性の一貫性に不安があれば、AIに「年齢32歳・経理職・さいたま市在住で、この生活パターンは現実的?」と確認できます
- 時間が足りなくなったら、Step2を切り上げてStep3の一貫性チェックを優先してください。矛盾だらけの12項目より、一貫した10項目です
- ペルソナが決まらず空中戦になったら、Day 1で決めた合意形成ルールの出番です
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると「ペルソナはインタビューに耐える一貫した1人の人物として作り込む」です。
- たたき台→AIインタビューで深掘り→一貫性チェック、の3ステップ
- AIにペルソナを演じさせると、属性の発見と実在感の検証が同時にできる
- 完成したペルソナは、今後の全工程(CJM・情報設計・外部設計・プレゼン)で使い続ける相棒になる
次のセッションでは、このペルソナを主人公にして、カスタマージャーニーマップ(As-Is版・To-Be版)を作成します。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 自チームのペルソナの名前・課題・生活パターンを、資料を見ずに説明できますか?
- AIにペルソナを演じてもらうプロンプトの要点(役割指定・補足設定の明記ルール)を説明できますか?
- ペルソナの「実在感」を確かめる方法を1つ以上挙げられますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: 前セッション資料「Day3_Session01_ペルソナとカスタマージャーニーマップ.md」
- 発展課題: 完成したペルソナと正反対の属性を持つ「アンチペルソナ(対象外の人物像)」をAIと作ってみると、対象ユーザーの輪郭がさらに明確になります
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| チーム内でペルソナ像が割れて決まらない | 「開発テーマの課題に最も深く困っているのは誰か」で判断する。決まらなければ合意形成ルール(多数決等)を発動 |
| 属性は多ければ多いほど良い? | 量より一貫性。設計判断に使わない属性を増やしても意味は薄い。10〜15項目で十分 |
| 実在の知人をモデルにしていい? | 出発点としては有効。ただし特定個人に引きずられず、課題を象徴する人物に調整する |
| AIが演じるペルソナの回答は信用していい? | AIの回答は「もっともらしい仮説」。採用判断はチームで行う。違和感は設定矛盾のシグナルとして活用する |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| たたき台作成で時間切れになる | 完璧を目指さない。空欄があってもStep2に進む。インタビューの方が早く埋まることも多い |
| インタビューが雑談で終わる | 「課題に関するエピソード」を引き出す質問に集中する。質問例リストを活用する |
| AIがプロフィールを忘れて矛盾した回答をする | 「プロフィールを再掲します」と最初の設定を貼り直すと安定します |
| 課題の属性が抽象的(例: 「忙しい」) | 「いつ・どこで・何をしているときに・どう困るか」まで分解する。AIインタビューで「具体的なエピソードは?」と聞く |