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AIブレストによる課題の洗い出し

概要

  • 日程: Day 2 / セッション 2
  • 時間: [9:55-11:00]
  • 形式: 実習
  • ゴール: ブレインストーミングの4原則を守りながら、チームで課題候補を20個以上、50分以内に列挙できる
  • 学習形式: AIブレスト

導入(5分)

前のセッションで「良い課題」の条件を学びました。では、その課題はどこから見つけてくるのでしょうか?

答えは「とにかくたくさん出す」です。

ここで少し考えてみてください。砂金採りの名人は、どうやって金を見つけるでしょうか? 1粒の砂をじっと見つめるのではなく、大量の砂をすくって、ふるいにかけますよね。課題探しも同じです。まず大量に出す。選別は後(セッション3・4)でやります。

そのための手法が**ブレインストーミング(ブレスト)**です。Day 1のセッション2で一度体験しましたね。今日はチーム全員+AIという布陣で、本番の課題出しに挑みます。

本編(10分)

1. ブレインストーミングの4原則

ブレストには、考案者アレックス・オズボーンが定めた4つの原則があります。これを守らないとブレストは機能しません。

  1. 批判禁止: 出されたアイデアを否定・批判しない。「それは無理でしょ」は禁句
  2. 自由奔放: 突飛なアイデア、ばかばかしいアイデア大歓迎。常識の枠を外す
  3. 質より量: 良いアイデアを1個出すより、玉石混交で100個出す
  4. 便乗歓迎: 他人のアイデアに乗っかって発展させてよい。「それなら○○もアリでは?」

なぜ批判禁止なのでしょうか? 焚き火に例えてみましょう。アイデアは小さな火種です。出た瞬間に水(批判)をかけられたら、誰も火種を出さなくなります。まず燃やして大きくする。消火活動(評価・選別)は、火がたくさん集まってからです。

「質より量」は直感に反するかもしれません。でも考えてみてください。20個目のアイデアと1個目のアイデア、どちらが意外性に富んでいるでしょう? 最初に出るのはありきたりな案。絞り出した後半にこそ、面白い案が眠っています。だから今日のノルマは20個以上なのです。

ここがポイント

  • 4原則: 批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎
  • 出す時間と評価する時間を完全に分ける。ブレスト中は「良い/悪い」を一切判断しない
  • よくある間違い: 「それ、もうアプリありますよ」と途中で検索を始めること。既存サービス調査はブレスト後。今は手を止めない
  • 沈黙が続いたら、それは「視点を変えるタイミング」のサイン。AIの出番です

コラム

ブレストの生みの親オズボーンは広告会社BBDOの重役で、1942年の著書でこの手法を発表しました。「brainstorm」は直訳すると「脳の嵐」。もともと「皆で脳を使って問題に突撃する(storm a problem)」という軍事的なニュアンスの命名でした。面白いことに、後年の心理学研究では「集団ブレストは個人作業の合計より生産性が下がることがある」(社会的手抜きや発言待ちが原因)と指摘されています。その弱点を補う改良版が「個人で書き出してから持ち寄る」ブレインライティングです。そして今日の皆さんはさらに進化版、「疲れ知らずで批判もしないAI」をメンバーに加えたブレストを行います。オズボーンが見たら羨ましがるでしょう。

2. AIを「もう一人のチームメンバー」にする

今日のブレストでは、AIを記録係や検索係ではなく、アイデアを出し合う対等なメンバーとして参加させます。

AIブレストの基本形は、この3つの役割です。

  • 触媒役: 人間が出したアイデアにAIが便乗し、変化球を返す
  • 視点転換役: 行き詰まったとき、別の角度からの問いを投げてもらう
  • 量産役: 「あと10個」のような数のプレッシャーを引き受けてもらう

すぐ使えるプロンプト例を用意しました。コピーして使って構いません。

ブレスト開始時の宣言(最初に貼る):

あなたは私たちのチームのブレインストーミングメンバーです。
テーマ:「世の中でまだ解決されていない、身近な課題」を洗い出す。
ルール: ブレストの4原則(批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎)を守ること。
実現可能性の評価や批判はしないでください。
まず「新入社員の日常生活」の視点で、課題を10個挙げてください。
1つの課題は「誰が・どんな場面で・何に困っている」の形式で書いてください。

行き詰まったときの視点転換:

アイデアが行き詰まりました。視点を変えます。
「高齢者」「子育て中の親」「地方在住者」「外国人観光光客」のそれぞれの立場で、
日常の困りごとを3個ずつ挙げてください。

便乗(深掘り)を頼むとき:

私たちのチームから「飲食店の行列で待ち時間が読めない」という課題が出ました。
この課題に便乗して、似た構造を持つ別の課題を5個挙げてください。
(例: 待ち時間が読めない、で困る別の場面)

逆転の発想を引き出すとき:

逆に聞きます。「毎日の生活がもっと不便になるとしたら、何が起きたとき?」
を10個挙げてください。そこから課題を逆算します。

大事なのは、AIの回答をそのまま採用しないことです。AIの案は火種。そこにチームの実体験(「あ、それうちの大学でもあった!」)を便乗させたとき、初めて自分たちの課題になります。

ここがポイント

  • AIには最初に「4原則を守るブレストメンバー」という役割を宣言する
  • 「誰が・どんな場面で・何に困っている」のフォーマットで出すと、後の選別が楽になる
  • AIの案はそのまま使わず、チームの実体験で便乗・上書きする
  • よくある間違い: AIに丸投げして人間が眺めるだけになること。人間1案→AI1案のラリーを意識する

コラム

「視点を変える」発想法の古典に、オズボーン自身が作った「オズボーンのチェックリスト」があります。転用・応用・変更・拡大・縮小・代用・再配置・逆転・結合の9つの問いでアイデアを変形させる手法で、後にSCAMPER法として整理されました。たとえば「拡大」から生まれたのがジャンボサイズの商品、「逆転」から生まれたのが回転寿司(客が動くのではなく寿司が動く)と言われます。AIへの「視点を変えて」というプロンプトは、実はこの伝統的な発想法をAIに実行させているのです。

💬 AIに聞いてみよう

ブレストを始める前に、不安があればAIに聞いてみましょう。たとえば:

  • 「ブレストの4原則を、それぞれ破るとどうなるか例で説明して」
  • 「課題を『誰が・どんな場面で・何に困っている』形式で書く練習をしたい。お手本を3つ見せて」
  • 「ブレストでファシリテーター役は何をすればいい?」

実習・演習(35分)

課題

チームでAIブレストを行い、課題候補を20個以上列挙してください。

進め方の目安:

  1. 準備(5分): 役割を決める(進行役・記録役は必須。AIへの入力役を交代制にすると全員が手を動かせます)。記録先(ホワイトボード・共有ドキュメント等)を決める
  2. 第1ラウンド(10分): 自分たちの実体験から出す。「最近イラッとしたこと」「不便だと思いながら我慢していること」を全員が口に出す。AIにも初期10案を出させる
  3. 第2ラウンド(10分): 視点転換。AIに別の立場(高齢者・子育て・地方・観光客・店舗側など)の課題を出させ、チームの実感と結びつける
  4. 第3ラウンド(5分): 便乗ラッシュ。面白そうな課題に便乗して、バリエーションを増やす
  5. 仕上げ(5分): 一覧を整える。重複をまとめ、各課題が「誰が・どんな場面で・何に困っている」の形になっているか確認する

成果物

  • 課題候補リスト(20個以上)
  • 各課題は「誰が・どんな場面で・何に困っている」の形式で記述されていること
  • 次のセッション4でこのリストから選定するので、チーム全員が見られる場所に保存すること

ヒント

  • 序盤に出ない・続かないときは、AIに「新入社員の朝起きてから寝るまでの行動を時系列で書き出して。各行動に潜む困りごとを添えて」と頼むと、視点が一気に広がります
  • 誰かが批判を始めてしまったら、責めずに「それは次のセッションで!」と合言葉で流しましょう(批判した人を批判しないのも4原則の精神です)
  • 15個あたりで失速するのが普通です。そこからの5個が勝負。「ばかばかしい案を3個出してください」とAIに頼むと場が温まります
  • AIの出力が抽象的(「環境問題」など)なときは、「もっと具体的な生活シーンに落として」と返しましょう
  • 記録は一字一句きれいに書かなくてOK。スピード優先。清書は仕上げの5分で行います

まとめ(5分)

今回学んだことを一言でまとめると、**「ブレストは4原則(批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎)で量を出す技術であり、AIは疲れ知らずのブレストメンバーになる」**ということです。

  • 出す時間と評価する時間を分ける
  • AIには役割とルールを宣言してから参加させる
  • AIの案に人間の実体験を便乗させて、自分たちの課題にする

次のセッションでは、この課題候補リストを絞り込むための物差し、「情報処理をともなうシステムとは何か」と評価軸を学びます。

🔄 振り返りチェック

以下の問いに答えられるか確認してみましょう:

  • ブレストの4原則をすべて言えますか?
  • なぜ「質より量」なのか、自分の言葉で説明できますか?
  • AIをブレストに参加させるとき、最初に何を宣言しますか?
  • 自チームの課題候補は20個以上あり、「誰が・どんな場面で・何に困っている」の形になっていますか?

答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。

補足資料

  • 参考リンク: アレックス・オズボーン『創造力を生かす』、SCAMPER法の解説記事
  • 発展課題: 今日のブレストのログを見返し、「人間だけでは出なかったとAIのおかげで出た課題」を1つ特定してみましょう。AIブレストの効果を自分の言葉で説明できるようになります

学習ガイド

このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。

想定される質問と回答例

質問 ヒント
AIが出した課題をそのまま使ってもいい? リストに入れるのはOK。ただしチームの誰かが「実感を持って語れる」課題でないと、後のペルソナ・CJM作成で苦しくなる
20個も出ません 視点転換プロンプトを使う。立場(年齢・職業・場所)×場面(朝・通勤・食事・夜)の掛け算で機械的に広げられる
似た課題が複数出たらどうする? ブレスト中はそのまま残す(便乗の証拠)。仕上げの5分でまとめる。まとめても20個を割らないよう余裕を持って出す
課題の良し悪しはいつ判断するの? セッション3で評価軸を学び、セッション4で選定する。今日はリスト作りに徹する

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
無意識の批判(「うーん」「微妙」という反応)で場が冷える 反応のルールを決める。どんな案にも「いいね、それなら〜」で返すと便乗が生まれる
AIとの対話に夢中になり、チーム内の会話が消える 入力役を交代制にし、「AIに聞く前にチームで30秒話す」を挟む
課題ではなく解決策(〜アプリ)の形で出てしまう 出ること自体はOK(自由奔放)。記録時に「それは誰の何の困りごと?」と問い直して課題形式に直す
1つの課題を深掘りしすぎて時間切れ 進行役がタイムキープする。深掘りは1案につき1〜2回の便乗まで、と区切って次へ進む
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