成果発表会〜チームプレゼンと質疑応答
概要
- 日程: Day 21 / セッション 2
- 時間: [9:50-11:00]
- 形式: 演習
- ゴール: チームで製品の紹介プレゼンを制限時間内に行い、質疑応答に準備した回答で対応できる
- 学習形式: プレゼンテーション(話す&行う)
導入(5分)
いよいよ本番です。Day 1にチームを組み、課題を見つけ、ペルソナを描き、設計し、実装し、磨いてきた製品。その価値を伝える90分が始まります。
ここで思い出してください。
この発表の目的は何でしょうか? 「うまく話すこと」でしょうか?
違います。目的は**「製品の価値を伝えること」**です。誰の・何が・どう変わるのか。みなさんのペルソナが抱えていた課題が、この製品でどう解決されるのか。それが聴衆に伝われば、多少噛んでも発表は成功です。逆に、流暢に話せても価値が伝わらなければ成功とは言えません。
そしてもう1つ。今日は他チームの発表を聴く日でもあります。同じ22日間で、別のチームが何を作り、どう伝えるのか。これ以上ない教材が目の前で続きます。
本編(10分)
1. 本番で価値を伝える〜ホールパート法を信じて堂々と
発表の道具立てはすべて揃っています。本番で意識するのは次の3つだけです。
- ホールパート法の流れに乗る: 全体(今日伝えること)→部分(課題・製品・デモ)→全体(まとめ)。Day 18で設計した通りに
- キャッチフレーズを軸にする: 迷ったら「誰の・何が・どう変わる」に戻る
- 堂々と振る舞う: 顔を上げ、聴衆を見て、練習よりワンテンポゆっくり話す
「堂々と」はテクニックです。緊張していても、背筋を伸ばして声を張れば、聴衆には自信があるように見えます。そして面白いことに、自信があるように振る舞うと、本当に落ち着いてきます。心理学で「as if(あたかも)の法則」と呼ばれる現象です。
ここで考えてみてください。
発表中にデモが動かなくなったら、最初にやることは何でしょうか?
慌てて操作を連打することではありません。準備した代替手段への切り替えです。「画面を撮影したものでご紹介します」と一言添えて、スクリーンショットや動画に切り替える。Day 20に準備した保険は、今日のためにあります。
ここがポイント
- 練習よりワンテンポゆっくり。緊張すると人は自覚なく早口になる
- トラブル時は3秒止まってもいい。沈黙は発表者が思うほど長く感じられていない
- タイムキーパーの合図を必ず確認する。時間厳守も発表の評価のうち
- 22日間の物語を背負っているのはみなさんだけ。自信を持って語ってよい
コラム
「人前で話すこと」は、アメリカの調査で長年「死よりも怖いもの」の上位に挙げられてきました。コメディアンのジェリー・サインフェルドはこれを「つまり葬式に出るなら、弔辞を読むより棺に入る方がマシということか」とネタにしています。それくらい、緊張するのは万国共通の正常な反応です。会場にいる全員(審査員も含めて)が「人前で話すのは怖い」と知っています。つまり、聴衆はみなさんの敵ではなく、最初から味方なのです。
2. 質疑応答〜怖がらず、誠実に、準備を使う
質疑応答を「攻撃される時間」と感じる人は多いですが、実際は逆です。質問が出るのは聴衆が製品に興味を持った証拠。一番怖いのは質問ゼロの無関心です。
対応の型は3つです。
- 準備した回答で返す: Day 19の想定問答集の出番。主担当が落ち着いて答える
- 想定外の質問: 「現時点では〜と考えています」「そこは検証できていないので、今後の課題です」と誠実に返す。知ったかぶりが一番信頼を失います
- 質問の意図が不明: 「〜という理解で合っていますか?」と確認してから答える。時間稼ぎにもなる一石二鳥の型です
回答は1人で抱え込まないでください。主担当が詰まったら、分かるメンバーが「補足します」と引き取る。チームで答える姿そのものが「チーム開発を経験した」何よりの証明になります。
ここがポイント
- 質問は攻撃ではなく興味の表明。「ご質問ありがとうございます」から入ると呼吸が整う
- 答えられない質問は誠実に「今後の課題」と返す。ごまかしは見抜かれる
- 質疑応答メモを取る担当を決める。明日(Day 22)のKPTと改善案の最重要材料になる
コラム
質疑応答の達人として知られた物理学者リチャード・ファインマンには、有名な逸話があります。難解な質問に対して「分からない」と即答し、続けて「でも、分からないことが分かったのは収穫だ」と笑ったそうです。ノーベル賞学者ですら「分からない」と言うのです。むしろ一流ほど、知らないことを知らないと言えます。新入社員のみなさんが質疑応答で「そこは考えられていませんでした。持ち帰って検討します」と言えたら、それは未熟さではなく誠実さの証明です。
3. 他チームの発表から学ぶ〜聴く側も本気で
自分の発表が終わっても、仕事は続きます。他チームの発表は「生きた教材」です。
聴くときの観点:
- 良いところを盗む: つかみ方、デモの見せ方、スライドの工夫。「いいな」と思ったら即メモ
- 自分ごとに変換する: 「自分たちの発表だったらどうするか」と置き換えて聴く
- 質問を最低1つする: 質問は発表チームへの最高の贈り物。Day 14の中間発表と同じ作法です
ここがポイント
- メモは「事実(何をしていた)+自分への学び(どう活かす)」のセットで残す
- 他チームの健闘を称える拍手を惜しまない。発表会の空気はみんなで作る
コラム
ピカソには「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」という言葉が伝えられています(本人が言ったかは諸説ありますが)。「盗む」とは表面のコピーではなく、本質を理解して自分のものにすること。他チームのプレゼンの「うまさ」の裏には必ず工夫があります。「なぜあのデモは分かりやすかったのか?」と一段掘って考えると、表面ではなく本質を持ち帰れます。
💬 AIに聞いてみよう
発表の合間や休憩時間に、AIに相談できます。たとえば:
- 「さっきの質疑応答で〜とうまく答えられなかった。次に同じ質問が来たらどう答えるべき?」
- 「他チームの発表で〜という見せ方がうまかった。どんなテクニックなのか解説して」
- 「発表メモを貼るので、明日のKPTに使えるよう整理して」
実習・演習(70分)
課題
チームごとに製品紹介プレゼンと質疑応答を行ってください。
- 発表: 制限時間内で、ホールパート法に沿って製品の価値(誰の・何が・どう変わる)を伝える。デモを含める
- 質疑応答: 準備した想定問答集を活用しつつ、想定外の質問にも誠実に対応する
- 聴衆として: 他チームの発表をメモを取りながら聴き、各チームに最低1つ質問する
- 記録: 自チームへの質問と回答、もらったコメントを質疑応答メモに残す
成果物
- チームプレゼン発表(制限時間内・デモ含む)
- 質疑応答メモ(受けた質問・回答・もらったコメント)
- 他チームの発表からの学びメモ
ヒント
- 発表直前に深呼吸(4秒吸って8秒吐く)。最初の一言を頭の中で唱えてから登壇しましょう
- デモが動かなくなったら、慌てず代替手段へ。切り替えの一言は Day 20 で決めた台詞をそのまま使えば大丈夫です
- 質問が聞き取れなかったら遠慮なく「もう一度お願いします」と言ってください。聞き直しは減点ではありません
- メモ係は発表で手一杯にならないよう、発表しないタイミングのメンバーが担当しましょう
まとめ(5分)
今回の経験を一言でまとめると、**「発表の成功とは流暢さではなく、製品の価値が伝わること」**です。
- ホールパート法とキャッチフレーズを軸に、堂々と伝える
- 質疑応答は興味の表明。誠実に、チームで答える
- 他チームの発表は生きた教材。盗んで、質問して、メモに残す
次のセッションは、個人戦のライトニングトークです。今度はチームではなく、あなた自身の22日間を語ります。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 発表の目的(うまく話すことではなく何か)を言えますか?
- 想定外の質問が来たときの誠実な返し方を2つ言えますか?
- デモが止まったとき、最初にやることは何ですか?
- 他チームの発表から「盗んだ」工夫を1つ挙げられますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: TED Talksの人気プレゼン動画(構成・間の取り方・デモの見せ方の宝庫です)
- 発展課題: 自分の発表を振り返り、「今日の発表をもう一度やれるなら変える点」を1つAIと議論して、明日のKPTの種にしましょう
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 頭が真っ白になったら? | スライドを見て次の一言を取り戻す。3秒の沈黙は聴衆には気にならない。最初の一言メモも保険になる |
| 厳しい指摘の質問が来たら? | 反論で守らず「貴重なご指摘です」と受け止め、対応の考えか今後の課題として返す |
| 制限時間が足りなくなりそう | タイムキーパーの合図でまとめに飛ぶ。Day 20で決めた「削る候補」を飛ばす |
| 質疑で誰が答えるか迷って沈黙してしまう | 主担当がまず口を開く約束にする。詰まったら他メンバーが「補足します」と引き取る |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 緊張で早口になり時間が余る/巻きすぎる | 練習よりワンテンポ遅く。スライドの切り替えごとに一呼吸入れる |
| 知らないことを知ったかぶりで答える | 信頼を失う最大の地雷。「検証できていません。今後の課題です」が正解 |
| 自分の発表が終わると気が抜けて聴かない | 他チームの発表は明日のKPTと今後の実務の教材。質問1つがノルマ |
| 質疑応答の内容を記録し忘れる | メモ担当を事前に決める。質疑メモは明日の振り返りの最重要インプット |