チーム計画書の作成
概要
- 日程: Day 1 / セッション 4
- 時間: [11:40-12:40]
- 形式: 実習
- ゴール: チーム名・合意形成ルール・役割分担・コミュニケーション計画を含むチーム計画書を、時間内にチーム全員の合意のもとで完成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)、グループワーク
導入(5分)
ここからは、今日学んだことをすべて使う時間です。Day 1の成果物——チーム計画書——を作ります。
まず問いかけです。
「これから22日間一緒に戦うチームで、最初に決めておかないと後で揉めることは何だと思いますか?」
たとえば、こんな場面を想像してください。
- Day 8、設計の方針で意見が真っ二つに割れた。決め方を決めていなかったので、30分言い合いに……
- Day 12、メンバーの1人が良かれと思って画面デザインを変えた。他のメンバーは知らず、実装と食い違った……
どちらも「能力」の問題ではなく、「最初に決めていなかった」ことの問題です。チーム計画書は、こうした未来のトラブルへのワクチンです。元気な今日のうちに打っておきましょう。
チーム計画書はこの研修の到達目標No.1の成果物であり、Day 2以降、毎日使う「チームの憲法」になります。
本編(10分)
1. チーム計画書に書く4つの項目
チーム計画書に必ず含めるのは次の4つです。
| 項目 | 決めること | 良い例 |
|---|---|---|
| チーム名 | チームの名前と込めた意味 | 覚えやすく、言いやすい名前 |
| 合意形成ルール | 意見が割れたときの決め方 | 「全員が1分ずつ意見→5分で合意できなければ多数決」 |
| 役割分担 | 誰が何の責任者か(MECE) | PM・リーダ・サブリーダ・デザイン担当・開発担当 |
| コミュニケーション計画 | 会議体・レビュー・振り返りの予定 | 「朝会9:00から10分」「成果物は完成前に必ず相互レビュー」 |
そして、忘れてはいけない必須記載ルールがあります。
「合意した内容に変更が生じる場合には、事前に報告して調整する」
この一文を、チーム計画書に必ず明記してください。今日の合意は、明日以降の作業の土台です。変更を禁止するのではなく、「黙って変えない」ことをチームの約束にします。
ここがポイント
- 合意形成ルールには「時間切れのときの決め方」を必ず入れる(例: 多数決、リーダ判断)。決め方を決めておかないと、議論が無限に続く
- 役割分担は「重複なし・漏れなし(MECE)」をチェック。レビューの取りまとめ役や時間管理係など、見落としがちな仕事も誰かに割り当てる
- よくある間違い: 「全員一致するまで話し合う」をルールにする。理想的に聞こえるが、時間内に終わらない原因のNo.1
コラム
「チームの最初に名前を決める」のは、遊びのようでいて実は理にかなっています。社会心理学では、共通のラベルを持ったグループは協力行動が増えることが知られています(社会的アイデンティティ理論)。ちなみに有名企業のチーム名・社名も由来は意外とゆるく、Googleは数学用語googol(10の100乗)のスペルミスがそのまま社名になったという逸話があります。スペルミスでも世界企業になれるので、チーム名は気楽に、でも愛着を持てるものにしましょう。
2. 進め方とタイムボックス
75分を次のように区切って進めます。時間を区切る(タイムボックス)こと自体が「決められた時間内に終わらせる」練習です。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 11:40-11:50 | 本編の説明を読み、チームで進め方を確認 |
| 11:50-12:00 | チーム名の決定(最初の合意形成の練習) |
| 12:00-12:10 | 合意形成ルールの決定 |
| 12:10-12:20 | 役割分担の決定 |
| 12:20-12:30 | コミュニケーション計画の作成、計画書の仕上げ |
| 12:30-12:40 | 各チームが計画を声に出して発表 |
順番に意味があります。チーム名決め(軽い議題)で合意形成を一度体験してから、ルールを言語化する。軽い練習→本番の順です。
💬 AIに聞いてみよう
作業中、AIをチームの相談役として使いましょう。たとえば:
- 「合意形成ルールの具体例を5パターン教えて。それぞれの長所と短所も」
- 「5人チームの役割分担で、見落とされがちな仕事を挙げて」
- 「このチーム名の案、由来とセットでもっと良くするアイデアはある?」
実習・演習(60分)
課題
チーム全員の合意のもとで、以下の4項目+必須ルールを含むチーム計画書を時間内に完成させてください。完成後、各チームが計画を声に出して発表します(1チーム2分以内)。
手順1: チーム名の決定(10分)
- 各自1案ずつ出す(AIブレストの活用OK)
- 候補から1つに絞る。この「絞る過程」が最初の合意形成の練習
コピーして使えるプロンプト例:
私たちは新入社員5人のシステム開発研修チームです。
チームの雰囲気:【例: 明るい、慎重派が多い、ゲーム好きが多い】
覚えやすくて言いやすいチーム名の案を10個、由来つきで出してください。
手順2: 合意形成ルールの決定(15分)
以下の3つの場面を必ずカバーするルールを文章で決めます。
- 意見が割れたとき、どう決めるか(例: 全員1分ずつ意見→多数決)
- 議論が時間切れになりそうなとき、誰がどう打ち切るか(例: リーダが2案に絞り多数決)
- 決まったことを、どこに記録するか(例: チームの共有ドキュメント)
手順3: 役割分担の決定(15分)
- PM・リーダ・サブリーダ・デザイン担当・開発担当を基本に、チームの人数・得意分野に合わせて決める
- 各役割の「責任範囲」を1行ずつ書く
- MECEチェック: 重複していないか? 漏れている仕事はないか?
AIにレビューを依頼するプロンプト例:
私たちのチームの役割分担です。
【役割分担の内容を貼り付け】
MECEの観点(重複・漏れ)で問題がないかレビューしてください。
特に「誰も担当していない仕事」がないか指摘してください。
手順4: コミュニケーション計画の作成と仕上げ(15分)
- 会議体: 朝会・終会など、毎日の定例をいつ・何分・何のためにやるか
- レビュー: 成果物をいつ・誰が・どうチェックするか
- 振り返り: フェーズの節目にどう振り返るか(例: 各フェーズ最終日にKPT)
- 最後に必須ルール「合意した内容に変更が生じる場合には事前に報告して調整する」を明記
- 全員で読み合わせ、全員が合意したことを確認
手順5: 発表(10分)
- 各チーム2分以内で、チーム名(由来も)・役割分担・自慢のルールを発表
- 声に出して発表することで、合意が「自分ごと」になります(話す&行う)
成果物
チーム計画書(1チーム1部)。以下をすべて含むこと:
- チーム名(由来も一言)
- 合意形成ルール(時間切れ時の決め方を含む)
- 役割分担(役割・担当者・責任範囲。MECEチェック済み)
- コミュニケーション計画(会議体・レビュー・振り返り)
- 必須ルール「合意した内容に変更が生じる場合には事前に報告して調整する」の明記
ヒント
- 議論が止まったら、まず「決め方」に立ち返る。「あと3分で決めよう。決まらなければ多数決ね」と時間を区切るだけで前に進みます
- 役割決めで遠慮合戦になったら、「やりたい役割」ではなく「チームに必要な役割に自分はどう貢献できるか」で話すと決まりやすいです
- 全項目に時間をかけすぎないこと。完璧な計画書より、全員が納得して時間内に完成した計画書の方が価値があります
- 書式に迷ったら、AIに「チーム計画書のテンプレートをMarkdownの表で作って」と頼むと、たたき台が一瞬で手に入ります
- 「この合意形成ルールで困るケースはある?」とAIに聞くと、ルールの抜け穴を事前に発見できます
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると、**「チーム計画書は未来のトラブルへのワクチンであり、22日間の『チームの憲法』」**です。
- 軽い議題(チーム名)で合意形成を体験してから、ルールを言語化した
- 役割分担はMECEでチェックした
- 「合意した内容の変更は事前に報告して調整する」を全員で約束した
- 声に出して発表し、合意を自分ごとにした
これでDay 1のゴール達成です。おつかれさまでした!
明日(Day 2)は、このチームで「世の中でまだ解決されていない課題」を探し、開発テーマを決めます。今日決めた合意形成ルールが、さっそく本番で使われます。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 自分のチームの合意形成ルールを、見ないで説明できますか?
- 自分の役割と責任範囲を一言で言えますか?
- チームの会議体(いつ・何分・何のため)を言えますか?
- 「合意した内容に変更が生じる場合」に、自分は何をすべきですか?
答えに自信がない場合は、チーム計画書を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: 「ワーキングアグリーメント(Working Agreement)」— アジャイル開発チームが最初に決める約束事。チーム計画書の実務版として検索してみましょう
- 発展課題: 自分のチームの計画書をAIに見せて、「実際の開発現場のチームと比べて、足りない取り決めはある?」と聞いてみましょう
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 役割は途中で変えてもいい? | 変えてよい。ただし「合意した内容の変更は事前に報告して調整する」ルールに従い、チームで合意してから変える |
| 合意形成ルールはどこまで細かく書く? | 3つの場面(意見が割れた・時間切れ・記録)をカバーすれば十分。運用しながら育てればよい |
| 朝会・終会は何を話せばいい? | 朝会は今日の予定(1人1分)、終会は進捗・困りごと・明日の予定。Day 11以降のスケジュールにも組み込まれている |
| チーム名がふざけすぎてないか心配 | 全員が愛着を持てて、発表会で口に出せる名前ならOK。チームの一体感が目的 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| チーム名決めに時間を使いすぎる | タイムボックス(10分)を守る。決まらなければ多数決——それ自体が合意形成の練習 |
| 「全員一致するまで話し合う」ルールにしてしまう | 時間切れ時の決め方(多数決・リーダ判断等)を必ず用意する |
| 役割の責任範囲を書かずに名前だけ決める | 「PM: 進捗管理と対外窓口」のように1行でも責任範囲を書く。後の「それ誰の仕事?」を防ぐ |
| 必須ルールの記載を忘れる | 成果物チェックリストの最後に「必須ルール明記」を入れて、提出前に確認する |
| 発表を省略して時間を作業に回したくなる | 声に出すことで合意が確認・定着する(話す&行う)。2分でも必ず実施する |