AIブレスト初体験〜身近な課題を解決アイデアに変える
概要
- 日程: Day 1 / セッション 2
- 時間: [10:00-11:00]
- 形式: 実習
- ゴール: 生成AIとの対話を通じて、身近な課題1つに対する解決アイデアを3つ以上、30分以内に書き出せる
- 学習形式: AIブレスト(ハンズオン実習)
導入(5分)
ここからは手を動かす時間です。この研修で最初の**「動いた!できた!」**を体験しましょう。
まず問いかけです。
「最近、日常生活で『ちょっと面倒だな』『不便だな』と思ったことはありますか?」
たとえば……
- 朝、傘を持っていくか迷って、結局濡れた
- 冷蔵庫の中身を忘れて、同じものを買ってしまった
- サークルの集合時間の連絡が流れて、誰も覚えていなかった
こうした「ちょっとした不便」こそ、システム開発の出発点です。世の中のヒット製品の多くは、誰かの「面倒くさい」から生まれました。
このセッションでは、生成AIを壁打ち相手にして、身近な課題を解決アイデアに変える体験をします。壁打ちとは、テニスの壁打ち練習のように「自分の考えをぶつけて、返ってきたものからさらに考える」対話のことです。
ここで身につけるAIとの対話スタイルは、今後22日間ずっと使う学習の土台になります。インターネット上の情報やAIを自ら活用する、双方向のコミュニケーション。その第一歩です。
本編(5分)
1. AIブレストの進め方〜3ステップ
やることはシンプルです。3ステップで進めます。
課題を1つ選ぶ"] --> S2["ステップ2
AIと壁打ちして広げる"] S2 --> S3["ステップ3
アイデアを3つ以上書き出す"]
- ステップ1(5分): 身近な「不便・面倒」を1つ選ぶ
- ステップ2(15分): AIに投げかけ、返答にさらに質問を重ねる
- ステップ3(5分): 良いと思った解決アイデアを3つ以上、自分の言葉でメモする
大事なのは1回の質問で終わらせないことです。検索エンジンは「1回聞いて答えを得る」道具ですが、生成AIは「会話を重ねて考えを深める」相手です。キャッチボールに例えると、1球投げて終わりではなく、返ってきた球を見てまた投げ返す。これが壁打ちです。
ここがポイント
- 課題は「自分が本当に困った経験」から選ぶ。実感のない課題ではアイデアも薄くなる
- AIの答えを鵜呑みにせず、「もっと具体的に」「別の角度で」と追撃する
- よくある間違い: 「良いアイデアを出してください」とだけ聞く。状況を具体的に伝えるほどAIの答えは良くなる
コラム
ブレインストーミングを発明したのは、アメリカの広告会社BBDOの重役アレックス・オズボーン(1940年代)です。社内会議で若手が偉い人に遠慮して発言しない様子を見て、「批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎」のルールを作りました。面白いことに、生成AIは「遠慮」も「眠気」も「機嫌の悪さ」もない、ある意味で理想のブレスト相手です。深夜2時に100個アイデアを出させても文句を言いません。ただし「実際に困った実感」だけは持っていないので、そこは人間であるみなさんの出番です。
💬 AIに聞いてみよう
実習の前に、AIとの対話に少し慣れておきましょう。ウォーミングアップとして聞いてみてください:
- 「あなたは何が得意で、何が苦手? ブレストの相手として使うときの注意点は?」
- 「壁打ちって何? AIとの壁打ちのコツを3つ教えて」
実習・演習(25分)
課題
身近な課題を1つ選び、生成AIとの対話を通じて、解決アイデアを3つ以上書き出してください。制限時間は30分(このセッションの残り時間)です。
ステップ1: 課題を選ぶ(5分)
次のプロンプトをコピーして使えます。課題が思いつかない人向けです。
私は新入社員研修でブレインストーミングの練習をしています。
大学生や新社会人が日常生活で感じがちな「ちょっとした不便・面倒」の例を10個挙げてください。
通学・通勤、食事、お金の管理、友人との連絡などの場面を含めてください。
出てきた例を眺めて、「あ、それ自分も困った」と思えるものを1つ選びます。自分の経験から選べる人は、このステップは飛ばしてOKです。
ステップ2: AIと壁打ちする(15分)
選んだ課題をAIに投げます。次のプロンプトをコピーし、【 】を自分の内容に書き換えて使ってください。
あなたはブレインストーミングのパートナーです。
私の課題:【例: 冷蔵庫の中身を忘れて、同じ食材を二重に買ってしまう】
私の状況:【例: 一人暮らし1年目。買い物は週2回、仕事帰りにスーパーで】
この課題を解決するアイデアを5個出してください。
条件:
- 批判せず、自由な発想で、質より量を重視してください
- 現実的な案と、突拍子もない案を混ぜてください
- それぞれ1〜2行で簡潔に
AIの返答が来たら、そこで終わらせずに追撃します。追撃プロンプトの例:
3番のアイデアが面白いです。もっと具体的にすると、どんな機能を持ったアプリになりますか?
画面のイメージも文章で説明してください。
今出たアイデアは普通すぎる気がします。
「お金を一切かけない」「逆に課題を楽しみに変える」という制約で、別のアイデアを5個出してください。
小学生でも使える解決策にするとしたら、どう変わりますか?
視点を変える魔法の言葉も使ってみましょう:
このアイデアの弱点を3つ指摘してください。そのうえで、弱点を克服した改良案を出してください。
ステップ3: アイデアを書き出す(5分)
対話の中で「これは良い」と思った解決アイデアを3つ以上、自分の言葉でメモに書き出します。AIの文章のコピペではなく、自分で言い換えるのがポイントです。
書き出すフォーマット例:
課題: 冷蔵庫の中身を忘れて二重買いしてしまう
アイデア1: レシートを撮影すると在庫リストを自動更新するアプリ
アイデア2: 冷蔵庫の扉に貼る「使い切りチェック式」ホワイトボード運用
アイデア3: 買い物前に冷蔵庫内を撮影して、AIが「買うべきものリスト」を提案
成果物
- 選んだ課題1つと、解決アイデア3つ以上を書いたメモ(テキストファイルまたは紙)
- 時間が余った人は「いちばん気に入ったアイデアとその理由(1行)」を追記
ヒント
- AIの答えが平凡なときは、状況を具体的に伝え直すと一気に良くなります。「誰が・いつ・どこで・どれくらい困るか」を足してみましょう
- 「アイデアを5個」のように数を指定すると、AIは出し切ってくれます
- 行き詰まったら「別の業界ではこの課題をどう解決している?」と聞くと視点が変わります
- AIの操作やエラーで困ったら、遠慮なく周りの受講者や運営に声をかけてください。「エラーや変な動きが起きたら、その画面の文章をそのままAIに貼り付けて『どうすればいい?』と聞く」のも有効です
- 30分は意外と短いです。1つの課題を深掘りする方が、課題を選び直すより成果が出ます
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると、**「AIは1回聞いて終わりの検索エンジンではなく、会話を重ねて考えを深める壁打ち相手」**です。
- 状況を具体的に伝えるほど、AIの答えは良くなる
- 返答には必ず追撃する(具体化・制約変更・弱点指摘)
- 最後は自分の言葉でまとめる。判断するのは人間
そして何より、今日みなさんは「AIと対話して、ゼロからアイデアを生み出す」ことができました。これがこの研修最初の成功体験です。この壁打ちのスタイルは、明日の課題出し(Day 2)、ペルソナ作り(Day 3)、設計レビュー、実装のエラー解決まで、22日間ずっと使い続けます。
次回(セッション3)は、「なぜ1人ではなくチームで開発するのか」を学びます。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 解決アイデアを3つ以上、書き出せましたか?
- AIへの最初の質問と2回目以降の質問(追撃)で、何を変えましたか?
- 「壁打ち」とはどういう対話のことか、自分の言葉で説明できますか?
- AIの答えが平凡だったとき、どんな工夫で良くしましたか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: オズボーンのチェックリスト(発想を広げる9つの視点。「オズボーンのチェックリスト」で検索)
- 発展課題: 今日書き出したアイデアの1つについて、AIに「このアイデアの想定ユーザーを3パターン挙げて」と聞いてみましょう。Day 3で学ぶ「ペルソナ」の予習になります
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| AIの答えをそのまま成果物にしていい? | 最後のメモは自分の言葉で言い換える。理解して言い換えられるかが学習のバロメータ |
| 課題がどうしても思いつかない | ステップ1のプロンプトでAIに例を出させる。「今朝起きてから今までの行動」を振り返るのも有効 |
| アイデアが現実的じゃない気がする | このセッションでは質より量・自由奔放でOK。実現可能性の評価はDay 2で学ぶ |
| プロンプトは敬語で書くべき? | 言葉遣いより「状況・条件・出力形式」の具体性が重要。書きやすい文体でよい |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 1回質問して満足してしまう | 必ず追撃する。「もっと具体的に」「弱点は?」「制約を変えると?」の3パターンを試す |
| 質問が抽象的でAIの答えも抽象的になる | 「誰が・いつ・どこで・どれくらい困るか」を質問に足す |
| AIの長い回答を全部読もうとして時間切れ | 「それぞれ1〜2行で」「箇条書きで」と出力形式を指定して短くさせる |
| コピペ用プロンプトを書き換えずに使う | 【 】の部分は必ず自分の課題・状況に書き換える。自分ごと化が成果の質を決める |