プロットとアウトラインの作成
概要
- 日程: Day 18 / セッション 3
- 時間: [11:10-12:40]
- 形式: 実習
- ゴール: 伝えるためのストーリー(プロット)を決め、ホールパート法に沿ったプレゼン資料の全体構成(アウトライン)を時間内に作成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
前のセッションで、伝えたいこととキャッチフレーズが決まりました。プレゼン作成の手順で言えば、ステップ2まで完了です。
ここで問いかけです。
「同じ材料でも、話す順番を変えると印象が変わる。そんな経験はありませんか?」
たとえば友達に映画を勧めるとき。「ラストが衝撃的で、主人公が実は…」と結末から話してしまったら台無しですよね。逆にミステリー仕立てで「ある日突然、主人公の記憶が消えるんだ」と始めれば、続きを聞きたくなります。
内容が同じでも、順番(ストーリー)が伝わり方を決める。これがプロットの力です。
このセッションでは、スライドを作り始める前の最後の設計作業として、プロット(ストーリー)とアウトライン(全体構成)を固めます。今日の成果物がそのまま明日のスライド作成の設計図になります。
本編(10分)
1. プロットとは〜聴衆の感情を運ぶストーリー
プロットとは、伝えたいことを聴衆に届けるための話の筋書きです。
製品発表で使いやすい王道プロットは「課題解決型」です。
こんな困りごと
ありませんか"] --> B["課題
なぜ解決されて
いないのか"] B --> C["解決
私たちの製品なら
こうなる"] C --> D["証拠
デモ・実例"] D --> E["未来
ペルソナの生活が
こう変わる"]
このプロット、どこかで見た流れではありませんか? そう、カスタマージャーニーマップそのものです。As-Is版が「共感・課題」、To-Be版が「解決・未来」に対応します。みなさんはすでにストーリーの材料を持っているのです。
注意したいのは、プロットは「目次」ではないことです。「機能1の説明→機能2の説明→機能3の説明」と並べるのは、説明書の読み上げであってストーリーには該当しません。一方「困りごと→原因→解決→未来」は、聴衆の感情が「あるある→なるほど→すごい→欲しい」と動くのでストーリーに該当します。聴衆の感情がどう動くかで考えるのがコツです。
ここがポイント
- プロットは「聴衆の感情の動き」をデザインする作業
- CJM(As-Is版・To-Be版)がそのままストーリーの素材になる。Day 3 の成果物を必ず開く
- よくある間違い: 自分たちの作業順(設計→実装→苦労話)で話す。正しくは聴衆が聞きたい順(課題→解決→価値)で話す
コラム
ハリウッド映画の多くは「三幕構成」という型で作られています。第一幕で日常と事件(課題)、第二幕で葛藤(試行錯誤)、第三幕で解決。脚本家ブレイク・スナイダーの「SAVE THE CATの法則」では、映画開始から何分目に何が起きるべきかまで定式化されています。数億ドルをかける映画産業が「型」に頼るのは、型が観客の心を動かすと実証されているからです。5分のプレゼンが型を使わない理由はありませんね。
2. アウトラインとは〜ホールパート法で骨組みを作る
プロットが決まったら、それを**スライドの構成(アウトライン)**に落とします。アウトラインとは、各スライドの「見出しと一言メッセージ」だけを並べたものです。
ここで前セッションまでに学んだホールパート法の出番です。
| 構成 | スライド | 内容 |
|---|---|---|
| ホール | 表紙・つかみ | キャッチフレーズ、発表の全体像(今日伝えること3つ) |
| パート1 | 課題 | ペルソナの困りごと(共感→課題) |
| パート2 | 解決 | 製品紹介とデモ(解決→証拠) |
| パート3 | 価値 | ペルソナの変化(未来) |
| ホール | まとめ | 3つの再確認、キャッチフレーズで締める |
アウトラインは建築の「骨組み」です。骨組みの段階なら、柱の位置を変えるのは一瞬です。しかし壁紙(デザイン)まで作り込んだ後で「構成を変えよう」となると、大規模な手戻りになります。直すなら今が一番安いのです。これは外部設計を先にやってから実装した、この22日間の経験と同じですね。
各スライドには「1スライド1メッセージ」の原則で、そのスライドで言いたいことを1文だけ書きます。詳細な文章や図はまだ作りません。
ここがポイント
- アウトラインは「見出し+1文メッセージ」の一覧。スライドのデザインはまだしない
- 全体をホールパート法(全体-部分-全体)の構造にする
- 制限時間から逆算して枚数を決める(目安: 1枚あたり30秒〜1分)
- つまずきやすい点: アウトライン段階で1枚に情報を詰め込む。1スライド1メッセージを徹底する
コラム
Amazon の社内会議では PowerPoint が禁止されており、提案者は文章(ナラティブ)を書くことが求められます。創業者ジェフ・ベゾスいわく「箇条書きは考えの粗さを隠してしまう」から。つまり、構成と論理は文章の段階で固めるべきという思想です。みなさんが今やっているアウトライン作成は、まさにこの「スライドの見た目に逃げる前に、論理を固める」工程です。世界最大級の企業と同じ作法を実践していると思うと、ちょっと誇らしくありませんか。
💬 AIに聞いてみよう
実習の前に、疑問があればAIに質問してみましょう。たとえば:
- 「課題解決型以外のプロットの型(時系列型、比較型など)と使いどころを教えて」
- 「5分の発表なら、スライドは何枚くらいが適切?」
- 「つかみ(最初の30秒)の効果的なパターンを例つきで教えて」
実習・演習(55分)
課題
チームで以下の手順を実施してください。
ステップ1: プロットの決定(20分)
- 前セッションの「伝えたいこと」「キャッチフレーズ」と、Day 3 のCJM(As-Is版・To-Be版)を開く
- 「共感→課題→解決→証拠→未来」の流れに、自チームの内容を当てはめる
- デモを見せるタイミングをプロットの中に決める(証拠のパートが定番)
- AIにプロットをレビューしてもらう。プロンプト例:
製品「(製品名)」の発表プロットを作りました。
ペルソナ: (要約)
伝えたいこと: (1〜3つ)
プロット: (流れを箇条書きで)
聴衆の感情がどう動くかをシミュレーションして、
流れに飛躍や中だるみがないか指摘してください。
ステップ2: アウトラインの作成(25分)
- 発表の制限時間からスライド枚数の目安を決める(1枚30秒〜1分)
- ホールパート法の構造(ホール→パート→ホール)でスライドの見出しを並べる
- 各スライドに「1文メッセージ」を書く(1スライド1メッセージ)
- 最初のホールに「キャッチフレーズ」と「今日伝えること(1〜3つ)」、最後のホールに「まとめ」を必ず置く
ステップ3: 通し読みチェック(10分)
- アウトラインを声に出して最初から最後まで通し読みする(話す&行う)
- 「ここ、話が飛んでない?」と感じた箇所に印をつけて修正する
- メッセージだけ読んで時間を計り、制限時間に収まりそうかを確認する
- AIに「このアウトラインで聴衆が疑問に思う点は?」と最終チェックを依頼する
成果物
- プロット: 聴衆の感情の動きを意識したストーリーの流れ(箇条書き)
- プレゼン資料のアウトライン: スライドごとの見出しと1文メッセージの一覧(ホールパート法構造)。明日のスライド作成の設計図になる
ヒント
- プロットが平凡に感じたら、AIに「つかみを強くするアイデアを5つ」と相談してみましょう。発問で始める、衝撃の数字で始める、などの案が得られます
- スライド枚数が多すぎるときは、「このスライドを削ると伝えたいことが崩れるか?」と自問する。崩れないなら削れます
- 通し読みで詰まる箇所は、聴衆も必ず詰まります。「ここで何と言えばつながるか」をAIと一緒に考えましょう
- デモの位置は「期待が最高潮になった直後」が効果的。先に課題と解決方針を語ってからデモを見せます
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると、**「スライドを作る前に、聴衆の感情を動かすプロットと、ホールパート法のアウトラインで設計図を固める」**です。
- プロットは目次ではなくストーリー。CJMが最高の素材
- アウトラインは「見出し+1文メッセージ」。1スライド1メッセージ
- 声に出して通し読みすれば、流れの飛躍が見つかる
これで Day 18 の成果物(キャッチフレーズ・プロット・アウトライン)が揃いました。次回 Day 19 は、まず高橋メソッドともんたメソッドというスライド作成テクニックを学び、いよいよスライドを作ります。設計図があるので、明日の作業は驚くほど速いはずです。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- プロットと目次(機能の列挙)の違いを説明できますか?
- 自チームのアウトラインのどこが「ホール」で、どこが「パート」か指させますか?
- 「1スライド1メッセージ」とは何ですか?
- なぜスライドを作る前にアウトラインを固めるのですか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: 「プレゼン ストーリーテリング」「三幕構成」「アウトライン プレゼン」で検索してみましょう
- 発展課題: 自分の好きな CM を1本選び、15〜30秒の中の「共感→課題→解決→未来」を分解してみましょう
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| プロットとアウトラインの違いは? | プロットは「話の筋書き(感情の流れ)」、アウトラインは「スライド単位の構成表」。プロットを決めてからアウトラインに割り付ける |
| 苦労した実装の話はどこに入れる? | 聴衆の関心は価値が先。技術的工夫は「証拠」パートで短く触れるか、質疑応答用に温存する |
| デモが失敗したらと不安 | プロット上のデモ位置にスクリーンショットや動画の代替案をメモしておく。Day 20 のリハーサルで本格的に備える |
| 発表の制限時間がまだ不明な場合は? | 仮に5分と置いて作る。アウトライン段階なら時間変更への調整は容易、というのがまさに今日設計図を作る理由 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| アウトラインが機能一覧の順番になってしまう | 「聴衆の感情はどう動く?」と問い直す。共感から始まっているかをチェック |
| 1スライドにメッセージを2つ以上書いてしまう | メッセージごとにスライドを分ける。枚数が増えても1枚あたりの説明時間が短くなるので合計時間は変わらない |
| 通し読みを省略しようとする | 黙読では飛躍に気づけない。1人が読み、他のメンバーが聴衆役で聞くと効果が倍増する |
| チーム内で構成の意見が割れる | 「ペルソナにとって自然な順番はどちらか」を判断軸にする。決まらなければ合意形成ルールへ |