中間発表の準備〜進捗まとめとデモ準備
概要
- 日程: Day 14 / セッション 2
- 時間: [9:40-11:00]
- 形式: 実習
- ゴール: 進捗状況・デモ・課題と相談事項をまとめた中間発表資料を80分以内に作成し、デモの動作確認を完了できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
ここから80分で、中間発表の資料とデモを仕上げます。
その前に1つ問いかけです。
「『開発は順調です』という報告を聞いて、あなたは何が分かりますか?」
実は、ほとんど何も分かりません。「順調」は報告者の感想であって、事実ではないからです。聞き手が知りたいのは「どこまで終わって、何が残っていて、何に困っているか」という事実です。
中間発表は成果発表会(Day 21)とは目的が違います。成果発表会は製品の価値を「アピール」する場、中間発表は現在地を「共有」して助言をもらう場です。かっこよく見せる必要はありません。正確に伝えることに集中しましょう。
本編(15分)
1. 進捗は数字で報告する
進捗報告の鉄則は、感想ではなく数字で語ることです。
たとえるなら、マラソンの中継です。「選手は頑張っています」では何も伝わりませんが、「30km地点を通過、先頭と2分差」なら誰でも状況が分かります。かんばんがあるみなさんは、この数字をすぐに作れます。
- 数字での報告に該当する例: 「全タスク20個のうち12個が完了(60%)。計画では14個の予定だったので2個の遅れです」
- 該当しない例: 「だいたい半分くらい終わって、まあまあ順調です」。基準が報告者の感覚にしかなく、聞き手が遅れの有無を判断できないからです
数字に加えて「計画との差」と「差の理由」を一言添えると、報告の質が一段上がります。
ここで考えてみてください。
「遅れを正直に数字で報告すると、評価が下がると思いますか?」
逆です。遅れを早く正確に共有するチームほど、助言と支援を早く受けられます。仕事の世界では「悪い報せほど早く」が鉄則です。
コード例・実例
発表資料の構成例(5〜7枚で十分):
| ページ | 内容 |
|---|---|
| 1. テーマ | 開発テーマと「誰の・何を・どう解決するか」を1行で |
| 2. 進捗 | 完了タスク/全タスク、計画との差、かんばんの写真 |
| 3. デモ | 動く機能の実演(資料には操作の流れだけ書く) |
| 4. 課題・相談 | 困っていること+聞きたいことを具体的に |
| 5. 今後の予定 | 残り実働3日でやること |
ここがポイント
- 進捗は「完了タスク数/全タスク数」+「計画との差」+「理由」のセットで
- かんばんがそのまま進捗の証拠になる。昨日の終会で数えた数字を使う
- よくある間違い: 「あと少しで終わるタスク」を完了に数える。Doneの条件を満たしたものだけがDone
コラム
「順調です」報告の危険性は、ソフトウェア業界で「90%シンドローム」として知られています。プロジェクトの進捗報告が90%に達してから、残り10%に全体の半分の時間がかかる現象です。原因は、残作業を楽観的に見積もる人間の癖にあります。だからこそ「Done条件を満たしたタスク数」という客観的な数字が大切なのです。ちなみに名著『人月の神話』の著者ブルックスは「プロジェクトはどうやって1年も遅れるのか? ……1日ずつだ」という名言を残しています。1日の遅れを毎日数字で見ていれば、1年の遅れは防げるのです。
2. 助言を引き出す課題の書き方とデモ準備
課題は具体的に書くほど、もらえる助言の質が上がります。
質問の仕方を対比してみましょう。
- 具体的な相談に該当する例: 「予約一覧の検索機能で、日付の絞り込みが遅い。データ300件で3秒かかる。クエリの書き方を見直すべきか、表示の工夫で逃げるべきか意見がほしい」
- 状況・数字・選択肢があり、聞かれた側はすぐ助言できます
- 該当しない例: 「検索がうまくいきません」
- 何がどう「うまくいかない」のか分からず、聞かれた側は質問を返すしかありません
課題スライドは「困っていること」+「相談したいこと(質問文)」のセットで書きます。質問文の形にしておくと、発表後の質疑が自然に始まります。
**デモ準備の鉄則は「本番と同じ条件で通すこと」**です。
- デモシナリオを決める: 「誰が・どの画面から・何を入力して・何を見せるか」を1本の流れにする
- 本番の機材・画面で最低1回通す
- 失敗に備える: スクリーンショットや画面録画を保険として用意する
ここがポイント
- 課題は「状況+数字+聞きたいこと」の形に。あいまいな相談にはあいまいな助言しか返らない
- デモは欲張らない。動く1機能を確実に見せる方が、不安定な5機能より伝わる
- デモ中の入力値は事前に決めておく。その場で考えると焦って詰まる
コラム
デモの失敗はプロでも避けられません。1995年、マイクロソフトのビル・ゲイツがWindows 98のデモ中に画面が真っ青なエラー(ブルースクリーン)になり、会場は大爆笑。ゲイツは「これがまだ出荷していない理由です」と切り返して拍手をもらいました。この事件以来、業界では「デモの神様」という言葉が冗談で使われます。本番のデモは必ず何かが起きるもの。だから保険(スクリーンショット・録画)と、何かあっても笑って切り返す心の準備が大事なのです。
💬 AIに聞いてみよう
準備を進める中で困ったら、AIに相談してみましょう。たとえば:
- 「この進捗データ(完了12/全20、計画比−2)を、1分で伝わる報告文にして」
- 「この課題の説明を、聞いた人が助言しやすい質問文に直して」
- 「デモが途中で失敗したときの切り返し方を3パターン教えて」
実習・演習(60分)
課題
朝会で確認した分担に従い、チームで次を完成させます。
- 進捗まとめ(目安15分)
- かんばんから完了タスク数/全タスク数を確定する
- 計画との差と、差が出た理由を1〜2行でまとめる
- 発表資料の作成(目安25分)
- 本編の構成例(テーマ・進捗・デモ・課題相談・今後の予定)に沿って5〜7枚作る
- 課題スライドは「状況+数字+聞きたいこと」の形にする
- 文章はAIに推敲を手伝ってもらってよい(数字と事実はチームが責任を持つ)
- デモ準備と動作確認(目安15分)
- デモシナリオ(操作の流れ・入力値・見せ場)を決める
- 本番と同じ機材・画面で最低1回通しで確認する
- 失敗時の保険(スクリーンショット・録画)を用意する
- ミニリハーサル(目安5分)
- 役割分担どおりに1回通す。時間を計り、持ち時間に収まるか確認する
成果物
- 中間発表資料(進捗・デモ・課題と相談事項を含む)
- 動作確認済みのデモ(+失敗時の保険)
- 発表のタイムテーブルと役割分担メモ
ヒント
- 時間が足りないときの優先順位は「デモ確認 > 進捗の数字 > 課題の文章 > 資料の見た目」
- 資料の見た目に凝り始めたら危険信号。中間発表は伝われば十分
- デモでエラーが出たら、エラー全文をAIに貼り付けて相談すると解決が早いです
- 「相談したい課題が思いつかない」チームは、AIに「この進捗状況のチームが他チームに相談すべきことは?」と聞いてみましょう
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると、**「中間発表の準備とは、現在地を数字で示し、助言を引き出す問いを用意すること」**です。
- 進捗は感想ではなく「完了/全タスク+計画との差+理由」
- 課題は「状況+数字+聞きたいこと」の質問形に
- デモは本番条件で通し、保険も用意する
次回(本日セッション3)はいよいよ中間発表本番です。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう:
- 自チームの進捗を数字で、計画との差まで含めて言えますか?
- 発表で相談する課題を、質問文の形で言えますか?
- デモは本番と同じ条件で通りましたか? 失敗時の保険はありますか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 参考リンク: 「報連相 数字で報告」「進捗報告 書き方」で検索
- 発展課題: 完成した発表資料をAIに見せて、「聞き手が突っ込みたくなる点」を予想してもらい、回答を1つ準備してみましょう
学習ガイド
このセクションは、受講者が理解を深めることをサポートする参考情報です。
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 遅れている事実を発表するのが怖い | 中間発表の目的は助言を得ること。遅れ+原因+対策案まで言えれば、それは「良い報告」 |
| タスクの粒度がバラバラで数字に意味がある? | 完璧でなくてよい。同じ数え方を続ければ傾向は正しく伝わる。気になるならタスク数と機能数を併記する |
| 資料は何枚必要? | 5〜7枚で十分。発表時間から逆算し、1枚1分を目安にする |
| デモとプロトタイプどちらを見せる? | 動く実装を優先。未実装部分の補足としてプロトタイプを使うのは効果的 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 「順調です」と書いてしまう | 数字に置き換える。「完了12/全20、計画比−2」のように事実で語る |
| 課題スライドが「頑張ります」で終わる | 助言がほしい点を質問文にする。「〜すべきか、〜の方がよいか」の二択形式は答えやすい |
| 資料づくりに時間を使いすぎてデモ未確認 | デモ確認を先に終わらせてから資料に戻る段取りにする |
| AIに資料を丸ごと作らせて数字が不正確になる | 文章の推敲はAI、数字と事実の確認はチーム。発表で説明できないものは載せない |