疑似プロジェクトのかんばん作成
概要
- 日程: Day 9 / セッション 2
- 時間: 10:00-11:00(60分)
- 形式: 実習(ハンズオン実習、AIサポートあり)
- ゴール:
- 行動: 「学校での発表会」「宴会」「海外旅行」のいずれかについて、担当者・所要時間・成果物・終了条件を定めたかんばんを作成できる
- 条件: チームで合意しながら、AIを学習パートナーとして
- 基準: 50分以内に、タスク15枚以上(うちTodo/Doing/Doneのカード状態を含む)、終了条件がすべて「〜が完成している」「〜が決定している」の形式で書かれている
- 学習形式: AI協働型(ハンズオン実習)
導入(5分)
前のセッションで、WBS→ガントチャート→かんばんの流れを学びました。理屈はわかった。次は手を動かす番です。
ここでいきなり開発プロジェクトのかんばんを作ろうとすると、設計の難しさと管理手法の難しさが同時に襲ってきます。それでは何が原因でつまずいたのか分からなくなります。
そこで、まずは身近な題材でかんばんを作ります。
- 学校での発表会プロジェクト
- 宴会プロジェクト
- 海外旅行プロジェクト
どれも経験があったり想像しやすいテーマです。管理手法そのものに集中できるのがポイント。次のセッションでは、ここで身につけた感覚で自チームの開発計画を組みます。
本編(10分)
1. かんばんカードに書くべき4要素
身近なプロジェクトでも、開発プロジェクトでも、1枚のかんばんカードには以下を書きます。
| 項目 | 例(宴会プロジェクトの場合) |
|---|---|
| タスク名 | 会場を予約する |
| 担当者 | 田中 |
| 所要時間 | 30分 |
| 成果物 | 予約確認メール(紙またはスクショ) |
| 終了条件 | 予約確認メールが届き、人数・日時・場所が記載されている |
| 状態 | Todo / Doing / Done |
ここがポイント
担当者と終了条件は絶対に空欄にしない。担当者がいないタスクは誰もやりません。終了条件が曖昧なタスクは「なんとなく終わったつもり」になります。
2. 終了条件の良い例・悪い例
| 悪い例(曖昧) | 良い例(具体的) |
|---|---|
| 会場を準備する | 会場予約が確定し、確認メールが届いている |
| 料理を決める | コース表が完成し、参加者全員にURLで共有済み |
| みんなに連絡する | 全員からYES/NOの返信がスプレッドシートに記入されている |
| 旅行の計画を立てる | 1日ごとの行程表(時刻・場所・移動手段)が完成している |
ここがポイント
「準備する」「考える」「確認する」は、それだけでは終了条件になりません。何が完成していれば、その状態と判断できるかを書きましょう。「〜が完成している」「〜が決定している」「〜が共有されている」の語尾を使うと書きやすいです。
コラム
ソフトウェア開発の世界では、終了条件のことをDefinition of Done(完了の定義) と呼びます。チームで「何をもってDoneとするか」を事前に合意しておくと、「自分の中ではDoneだけど他人から見たらまだ」という認識ズレを防げます。たとえばWebアプリの機能開発なら「コードが動く+テストを書いた+他メンバーがレビューした+本番に近い環境で動作確認した」の4つすべて、と決めておく、という具合です。
3. 演習の進め方(5段階)
| 段階 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| ① 題材選び | 5分 | 3題材から1つチームで選ぶ。具体化する(例: 「20人規模の忘年会、12月、予算1人5000円」) |
| ② タスク洗い出し | 15分 | 思いつくタスクを付箋にどんどん書く。AIにも投げて漏れチェック |
| ③ かんばん化 | 15分 | 4要素(担当・時間・成果物・終了条件)を埋める。Todoに並べる |
| ④ 順序・並行確認 | 5分 | 依存関係を確認。並行できるタスクを特定 |
| ⑤ レビュー | 5分 | AIに「終了条件が曖昧なタスク」「抜けてそうなタスク」を指摘してもらう |
実習・演習(45分)
課題
以下の3題材から1つを選び、かんばんを作成してください。
題材A: 学校での発表会プロジェクト
- 設定: 5人グループで、ゼミの中間発表(持ち時間20分+質疑10分)を2週間後に行う
- ゴール: 発表当日に堂々と発表できる状態を作る
参考タスク例(最低15枚を目安に展開)。
| タスク名 | 担当 | 時間 | 成果物 | 終了条件 |
|---|---|---|---|---|
| テーマを決定する | 全員 | 60分 | テーマ決定メモ | テーマがチーム全員の合意で1つに決まっている |
| 役割分担を決める | リーダ | 30分 | 役割分担表 | 5人それぞれの担当パートが文書化されている |
| 資料の章立てを決める | 全員 | 60分 | アウトライン | 章タイトル・ページ目安・担当者が記載されている |
| 各章の本文を書く | 各担当 | 各120分 | スライド | 担当章のスライドがすべて完成している |
| 図表を作成する | デザイン担当 | 90分 | 図表ファイル | 必要な図表3点が完成し、スライドに組み込まれている |
| 全体を結合する | リーダ | 30分 | 統合版スライド | 1つのファイルに全員分のスライドが連結されている |
| トーンを揃える | デザイン担当 | 60分 | 統合版スライドv2 | フォント・色・余白が統一されている |
| 想定質問を準備 | 全員 | 60分 | 想定問答集 | 質問10件と回答案が文書化されている |
| 通しリハ | 全員 | 60分 | リハ記録 | 20分以内に収まり、各自の話す内容が決まっている |
| 最終チェック | 全員 | 30分 | チェックリスト | 機材・配布物・接続テストが全項目チェック済 |
題材B: 宴会プロジェクト
- 設定: 30人規模の忘年会を1か月後に開催。幹事は3人
- ゴール: 全員が満足して帰る忘年会を実施する
参考タスク例。
| タスク名 | 担当 | 時間 | 成果物 | 終了条件 |
|---|---|---|---|---|
| 日程候補を3つ出す | 幹事A | 30分 | 日程候補表 | 候補日3つが文書化されている |
| 出欠アンケートを取る | 幹事A | 15分 | アンケートURL | URLが全員に送付され、回答締切が明記されている |
| 会場を3つ比較する | 幹事B | 60分 | 比較表 | 価格・人数・アクセス・コースの比較表が完成している |
| 会場を予約する | 幹事B | 30分 | 予約確認メール | 確認メールが届き、日時・人数・コース・金額が記載されている |
| コース・飲み放題を決定 | 幹事B | 30分 | コース表 | コース内容が確定し参加者に共有済み |
| 会費を確定する | 幹事C | 15分 | 会費案内 | 1人あたり金額・集金方法・締切が文書化されている |
| 集金する | 幹事C | 5日間 | 集金リスト | 全員から会費を回収済み |
| 余興を企画する | 幹事A | 90分 | 余興進行表 | 余興3本のタイトル・時間・担当が決定している |
| 景品を準備する | 幹事C | 60分 | 景品リスト | 景品5点が手元にある |
| 当日進行表を作る | 幹事A | 30分 | 進行表 | 開始から終了までの分刻みの進行が文書化されている |
| 二次会を予約する | 幹事B | 30分 | 二次会予約 | 二次会会場の予約確認が届いている |
題材C: 海外旅行プロジェクト
- 設定: 友人4人で5日間の海外旅行を3か月後に予定。行き先は未定
- ゴール: 全員が満足する旅程を完成させ、当日無事に出発する
参考タスク例。
| タスク名 | 担当 | 時間 | 成果物 | 終了条件 |
|---|---|---|---|---|
| 行き先候補を3つ出す | 全員 | 60分 | 候補リスト | 候補3つと選定基準が文書化されている |
| 行き先を決定する | 全員 | 30分 | 決定メモ | 行き先が1つに決まり、全員合意済 |
| 予算を決める | リーダ | 30分 | 予算表 | 1人あたり総予算(航空券・宿泊・現地費)が決まっている |
| 航空券を予約する | リーダ | 60分 | 予約確認 | 4人分の予約確認メールが届いている |
| ホテルを予約する | 担当B | 60分 | 予約確認 | 全宿泊日のホテルが予約済 |
| パスポート確認 | 各自 | 各15分 | 確認 | 全員のパスポート有効期限が出発時から6か月以上ある |
| ビザ・ESTA申請 | 各自 | 各30分 | 申請完了画面 | 必要な渡航許可が4人全員分取得済 |
| 海外旅行保険に加入 | 各自 | 各20分 | 加入証明 | 4人全員が加入完了している |
| 観光地リストを作る | 担当C | 90分 | 観光地リスト | 行きたい場所10件+営業時間+入場料が文書化されている |
| 日別行程表を作る | 担当C | 90分 | 行程表 | 5日分の時刻・場所・移動手段が文書化されている |
| 現地通貨を両替 | 各自 | 各30分 | 両替済通貨 | 各自が初日分の現金を手元に保有 |
| 持ち物リスト確認 | 全員 | 30分 | 持ち物チェックリスト | 全員が出発前日にチェック済 |
成果物
- ホワイトボード/Googleスプレッドシート/物理付箋などで作成したかんばん
- カード15枚以上(うち最低3枚はDoneにし「完了状態」も表現)
- 4要素(担当・時間・成果物・終了条件)がすべて記入されている
ヒント
- まず大きなタスクをざっと並べてから細かく分解する(WBSの順序)
- 並行できるタスクは横並びで色を変えると見やすい
- AIに「このプロジェクトで抜けがちなタスクは?」と聞くと盲点が見つかる
- 終了条件に迷ったら「他人が見て、できたかどうか1秒で判別できるか?」を自問する
- 「自分が休んでも他のメンバーが引き継げる粒度か」を意識する
AIへの問いかけ例
- 「30人規模の忘年会で見落としがちなタスクを5つ教えてください」
- 「私が書いた終了条件『資料を作る』は曖昧ですか?具体化してください」
- 「海外旅行で、トラブル発生時に備えて準備すべきタスクは何ですか?」
まとめ(5分)
このセッションでは、身近なプロジェクトでかんばんを作りました。3つのコツを覚えてください。
- 担当者は必ず特定の人にする(「みんなで」は誰もやらない)
- 終了条件は「〜が完成している」の語尾で書く
- AIに漏れチェックを頼むことで盲点をなくす
完成したかんばんは、次のセッションの開発プロジェクトかんばんのひな型になります。最後に他チームに見せて「終了条件が曖昧なものはないか」「漏れがないか」を相互レビューしましょう。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう。
- かんばんカードに必ず書く4つの要素は何ですか?
- 「準備する」を良い終了条件に書き直すと、どう書けますか?
- AIにレビューを依頼するとき、どんな質問が有効ですか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 関連用語: Definition of Done、ストーリーポイント、付箋ファシリテーション
- 発展課題: 完成したかんばんを「ガントチャート」に変換してみる(依存関係と時間軸が見えるか確認)
- 参考: 次のセッションで、自チームの開発プロジェクトに同じ手法を適用します
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| タスクが30枚以上になってしまいました。多すぎますか? | 多すぎることはあまり問題ではありません。むしろ「粒度が大きすぎて見落としがあるリスク」のほうが怖い。ただし管理しきれないなら、上位カテゴリでグループ化(「準備」「当日」「事後」など)すると見通しが良くなります |
| 担当者を1人に決められません。複数人でやるタスクは? | 「主担当1人+協力者」と分けて書きます。最終責任を持つ人を1人決めるのがコツ。誰もが当事者だと、誰も当事者になりません |
| 所要時間の見積もりが当たる気がしません | 最初は当たらなくて当然です。実績を記録し、見積もりとの差を観察するクセをつけると、3〜4回で精度が上がります |
| すべてのタスクを順番にやるべきですか? | いいえ。「依存関係があるもの」だけが順番制約。それ以外は並行できます。並行できる箇所を見つけることが、プロジェクトを早く終わらせるコツです |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 終了条件に「ちゃんと」「しっかり」を使ってしまう | これらの言葉は人によって基準が違います。「3人にレビューを依頼し、全員がOKと回答済み」のように、第三者でも確認できる事実で書きましょう |
| タスクを書きすぎて時間切れになる | 60分の演習なので、洗い出しに使うのは前半20分まで。残り時間で精度を上げる発想に切り替えましょう |
| AIに頼りすぎてチームの議論が浅くなる | AIは「壁打ち相手」で、決めるのはチームです。AIの提案を鵜呑みにせず「これは私たちのテーマに当てはまるか」を必ず議論しましょう |
| 担当者欄に「全員」と書いてしまう | 「全員」は責任の所在が消えます。1人を主担当に指名し、必要なら協力者欄を別に作る |