プロジェクトマネジメント〜WBSとかんばん
概要
- 日程: Day 9 / セッション 1
- 時間: 09:30-10:00(30分)
- 形式: 座学(対話型解説、デモンストレーション)
- ゴール:
- 行動: WBSによるタスク分解の手順と、かんばんの3状態(Todo/Doing/Done)によるタスク管理を説明できる
- 条件: AIを学習パートナーとして使いながら、図と言葉で
- 基準: WBS→ガントチャート→かんばんの関係を、料理または旅行のたとえで1分以内に説明できる
- 学習形式: AI協働型(対話型解説)
導入(5分)
昨日まで8日間かけて、企画から内部設計まで作り上げてきました。明日からはいよいよ実装です。
ここで一度立ち止まって考えてみましょう。「設計書を渡されたら、そのまま実装に突入していいのでしょうか?」
おそらくこんな声が聞こえてきます。
- 「誰が何をやるんだっけ?」
- 「あと何日あるんだっけ?」
- 「どこまで進んでいるんだっけ?」
これらに答えられないまま走り出すと、終盤に「実は手付かずの機能がありました」「他の人と作業がかぶっていました」という事故が起こります。
このセッションでは、やることを見える化する3つの道具を学びます。WBS、ガントチャート、かんばん。一見ややこしそうですが、料理や旅行のたとえで一気に腹落ちさせていきます。
本編(25分)
1. プロジェクトマネジメントとは〜地図がないと迷子になる
プロジェクトマネジメント(PM)とは、期限・予算・品質を守ってゴールに到達するための舵取りです。
旅行にたとえます。あなたは家族で京都旅行に行くとしましょう。
- 行きたい場所(金閣寺・清水寺・嵐山)が3つある
- 1泊2日しかない
- 予算は1人2万円
- 子どもが歩き疲れない工夫が必要
これらの条件を全部考えながら「いつ・誰が・何を・どうやって」を決めるのが旅程表です。これがそのままプロジェクトマネジメントなのです。
コード例・実例
開発プロジェクトに置き換えるとこうなります。
| 旅行 | 開発プロジェクト |
|---|---|
| 行きたい場所 | 実装する機能 |
| 日程 | 開発期間(Day11-17の7日) |
| 予算 | チーム人数×工数 |
| 子どもが疲れない | バグなく動く・チームが疲弊しない |
ここがポイント
プロジェクトマネジメントは「いつかやろう」を「明日の午前にやる」に翻訳する作業です。漠然としたゴールを、具体的な行動に分解することが核心です。
コラム
「プロジェクト」という言葉は、ラテン語の "projectum"(前に投げ出されたもの)が語源です。つまり、いま手元にないものを未来に向かって投げ出す行為。だからこそ、着地点をはっきりさせる地図(計画)が必要なのです。「とりあえずやってみる」では空中で散らばってしまいます。
2. WBS〜大きな塊を分解する
WBS(Work Breakdown Structure) は、プロジェクトを階層的に分解する方法です。日本語にすると「作業分解構成図」。
カレー作りを例に分解してみましょう。
ポイントは2つあります。
- 大→小に分ける: いきなり「玉ねぎを切る」から始めない。まず「材料を切る」という大きな塊を作り、その中に細かいタスクを並べる
- これ以上分けられないところまで: 「玉ねぎを切る」は1人で30分以内に終わるレベル。これがWBSの末端(葉っぱ)
ここがポイント
WBSの良し悪しは、末端タスクが「誰が・何分で・何を終わらせれば良いか」が明確かどうかで決まります。「準備する」「がんばる」は末端タスクになりません。
3. ガントチャート〜時間軸にタスクを並べる
WBSで分解したタスクを時間軸に並べたものがガントチャートです。
ガントチャートでわかることは3つあります。
- 依存関係: 玉ねぎを切らないと炒められない(前のタスク待ち)
- クリティカルパス: 一番時間がかかる経路。ここが遅れると全体が遅れる
- 並行作業: 「煮込む(30分)」の間に「サラダを作る」など別のタスクをできる
ここがポイント
ガントチャートは遅れの早期発見装置です。予定の線と実績の線がズレ始めた瞬間に手を打てます。
4. かんばん〜「いま何が動いているか」を見える化
かんばんは、タスクをTodo(やること)/Doing(やってる)/Done(終わった) の3つの列に並べる方法です。トヨタ生産方式が起源で、今や世界中のソフトウェア開発で使われています。
かんばんの3つの良さ。
- 誰でも一目でわかる: 朝、ボードを見れば今日の状況がわかる
- 手詰まりが見える: Doingに長く居座っているタスクは何か困っている
- チームで助け合える: Todoが渋滞していたら手の空いた人が拾える
ここがポイント
「Doingに置けるタスクは1人2枚まで」のような上限ルールを作ると、マルチタスクの罠を避けられます。ひとつ終わらせてから次を取る。これが速さの秘訣です。
5. WBS→ガントチャート→かんばんは一本道
3つの道具の関係はこうです。
- WBSで「何を」やるかを洗い出す
- ガントチャートで「いつ」やるかを決める
- かんばんで「いま」どこまで進んでいるかを動かす
WBSは作る時、ガントチャートは計画する時、かんばんは毎日動かす時に見るもの。役割が違うので全部いります。
💬 AIに聞いてみよう
ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。たとえば。
- 「カレーじゃなくて、私が今度作る『推しのライブ参戦計画』をWBSに分解してください」
- 「ガントチャートとかんばんはどちらか1つでもいいのでは?役割の違いを例で教えて」
- 「Doingに上限をつけると本当に速くなるのですか?理由と反対意見も教えてください」
実習・演習
このセッションは座学です。演習はSession2(疑似プロジェクト)とSession3(自チーム開発)で行います。
ただし、座学の最後に3分間の即席WBSワークを行います。
課題
「明日の朝、家を出て会社に着くまで」をWBSで分解してください。末端は「3分以上、30分以内」で終わる粒度にすること。
成果物
紙またはAIチャットに書き出したWBS(末端5個以上)。
ヒント
- 大→中→小の順に分ける
- 「準備する」ではなく「歯を磨く」のように動詞で
- 並行作業(朝食を食べながら天気予報を見る)があれば矢印を増やす
まとめ(5分)
このセッションでは、プロジェクトマネジメントの3つの道具を学びました。
- WBS: やることを大→小に分解する
- ガントチャート: タスクを時間軸に並べて依存関係とクリティカルパスを見える化する
- かんばん: Todo/Doing/Doneでいま動いているタスクを見える化する
次のセッションでは、「学校での発表会」「宴会」「海外旅行」の3つから1つを選び、実際にかんばんを作ります。身近なテーマで手法そのものに集中しましょう。
🔄 振り返りチェック
以下の問いに答えられるか確認してみましょう。
- WBS・ガントチャート・かんばんはそれぞれ何を見える化する道具ですか?
- WBSの末端タスクが「適切な粒度」かどうかを判定する基準は何ですか?
- かんばんで「Doingに上限を設ける」のはなぜですか?
答えに自信がない場合は、該当部分を読み返すか、AIに質問してみてください。
補足資料
- 関連用語: PMBOK、スクラム、アジャイル、リーンスタートアップ
- 発展課題: トヨタ生産方式の「かんばん」と、ソフトウェア開発の「カンバン方式」の違いをAIに聞いてみる
- 参考: Day11以降の毎日の朝会・終会で、このかんばんを実際に動かします
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| WBSはどこまで細かく分けるべきですか? | 末端タスクが「1人で半日以内に完了できる」が目安。これより大きいとブラックボックス化し、小さすぎると管理コストが増える |
| ガントチャートとかんばんを両方作るのは面倒です | 役割が違います。ガントチャートは計画フェーズ、かんばんは実行フェーズ。最初に1回作ったガントチャートを、日々動くかんばんに変換すると考えてください |
| プロジェクトマネージャがいないチームでもPMは必要ですか? | 必要です。役割としてのPMは1人でも、PMという作業はチーム全員で行います。「自分のタスクの状況をかんばんに反映する」のは全員の責任です |
| 計画通りに進まなかったらどうしますか? | 計画は変えてOKです。大事なのは「ズレに気づくこと」と「変えた事実をチームに共有すること」。隠して帳尻を合わせようとするのが一番危ない |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| タスクを動詞でなく名詞で書いてしまう(例:「テスト」) | 「ログイン機能の正常系テストを完了する」のように動詞+目的語+終了条件で書く |
| WBSを完璧に作ろうとして時間を使いすぎる | WBSは生き物。最初は7割で動かし、走りながら更新する。完璧な計画より、動く計画 |
| かんばんを作ったが更新しなくなる | 朝会・終会で必ず触るルールにする。「更新しないかんばんは存在しないのと同じ」 |
| ガントチャートの依存関係を引きすぎる | 全部を線でつなぐと読めなくなる。「これがないと絶対に次が始められない」関係だけ引く |