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情報の洗い出しと整理・分類〜カードソーティング

概要

  • 日程: Day 4 / セッション 1
  • 時間: [9:30-9:55]
  • 形式: 座学
  • ゴール: 「整理」(必要な情報を残し不要な情報を捨てる)と「分類」(カテゴリ分け)の違いを説明し、オープン/クローズド・カードソーティングを使い分けられる
  • 学習形式: 対話型解説、デモンストレーション

導入(5分)

ここで、ちょっと身近な質問をします。「あなたの部屋を片付けてください」と言われたら、何から始めますか?

たいていの人はこう答えます。「まず床に散らかったものを集めて、いらないものを捨てて、残ったものを箱や棚に分けて入れる」。

実はこれが今日学ぶ「整理」と「分類」そのものです。「捨てる」が整理、「分ける」が分類。順番を間違えると「いらないものまで丁寧に分類」「必要なものを捨てる」という悲劇が起こります。

昨日(Day3)、あなたのチームはペルソナとCJMを作りました。今日はその「鈴木花子さんの旅」を支える情報を洗い出し、整理・分類します。25分の座学で「正しい片付け方」を学び、そのあと60分の実習で実際にやります。

本編(15分)

1. 情報設計の全体像と現在地

まず地図を確認します。情報設計は次の流れ。私たちは今、後半に入ります。

flowchart LR A["Day2
課題決定"] --> B["Day2
テーマ決定"] B --> C["Day3
ペルソナ"] C --> D["Day3
CJM"] D --> E["Day4 午前
情報定義"] E --> F["Day4 午後
情報モデル"] F --> G["Day5以降
外部・内部設計"] style E fill:#ffe4b5 style F fill:#ffe4b5

ペルソナとCJMで「誰のために・どんな旅を支えるか」が決まりました。今日はその旅に登場する「情報」を全部洗い出し、使える形に整えます。

ここがポイント

情報定義書がしっかり作れていないと、明日以降の画面設計・テーブル設計が空中に浮きます。今日の作業は地味ですが、外部設計・内部設計の「土台のコンクリート」を打つ作業です。

2. 整理と分類は別物 — 部屋の片付けで理解する

「整理」と「分類」は、日常会話では似た意味で使われますが、情報設計では明確に区別します。

用語 意味 部屋の片付けで言うと
整理 必要な情報を残し、不要な情報を捨てる 「いらない服を捨てる」
分類 残った情報をカテゴリに分ける 「夏服と冬服を別の箱に入れる」

順番が大事です。先に整理(捨てる)→次に分類(分ける)。逆だと、いらない服まで季節ごとに丁寧に畳んで収納することになります。

情報設計での具体例

例: ECサイトの「商品レビュー機能」に必要な情報を洗い出した結果

[洗い出し直後の全リスト]
- 投稿者名
- 投稿者の血液型 ← いる?
- 商品名
- 評価点(5段階)
- レビュー本文
- 投稿日時
- 投稿者の星座 ← いる?
- 「役に立った」ボタン数
- 投稿者のIPアドレス ← セキュリティ目的なら残す

整理ステップ: ペルソナの目的(「他の人のレビューで商品を選びたい」)から見て不要なものを削除
→ 血液型・星座を削除(判断に使わない)

分類ステップ: 残ったものをグループ化
→ 「投稿者情報」「商品情報」「レビュー本体」「評価指標」の4カテゴリに分類

ここがポイント

「迷ったら残す」ではなく「迷ったら整理基準(ペルソナの目的)に立ち返る」。残しすぎると、後の設計工数が膨らみます。

3. カードソーティング — 分類のための定番手法

分類のとき、頭の中だけで考えると行き詰まります。情報を「1件1カード」にして物理的に動かす手法がカードソーティングです。

2つのカードソーティング

種類 説明 いつ使うか
オープン・カードソーティング カテゴリ名を決めずに、似たもの同士でグループを作り、後からカテゴリ名をつける カテゴリ自体が未知の時。発見的
クローズド・カードソーティング カテゴリ名を先に決めて、各カードをそこに振り分ける カテゴリが既知の時。整理的

違いを図で

flowchart TB subgraph open["オープン (カテゴリ未知)"] O1["カード群"] --> O2["似たもの集める"] O2 --> O3["カテゴリ名を後付け"] end subgraph closed["クローズド (カテゴリ既知)"] C1["カテゴリ枠あり"] --> C2["カード群"] C2 --> C3["枠に振り分ける"] end

デモ: 料理の食材で違いを体験

15枚のカードがあるとします: 「人参」「鶏肉」「醤油」「玉ねぎ」「豚肉」「砂糖」「キャベツ」「鮭」「塩」「じゃがいも」「牛肉」「味噌」「ピーマン」「鯖」「酒」

  • オープン: 並べてみて「あ、肉系・魚系・野菜系・調味料系に分かれそう」と気づく
  • クローズド: 先に「肉/魚/野菜/調味料」の4カテゴリを用意し、振り分ける

カード内容によって、カテゴリが自明な時はクローズドで速く、自明でない時はオープンで発見的に進めます。

ここがポイント

カードソーティングは「グループ化を可視化する」のが本質。デジタルツール(Miro、FigJam)でもできますし、付箋+ホワイトボードでもできます。重要なのは「動かせる」こと。頭の中で完璧を目指さない。

コラム — カードソーティングと情報アーキテクチャの父

カードソーティングを情報設計に持ち込んだ第一人者は、Richard Saul Wurman(リチャード・ソール・ワーマン)です。彼はTEDの創設者としても有名な、米国の建築家・情報設計家です。

彼は1976年の著作『Information Anxiety(情報不安症)』で、「人間は情報を5つの観点でしか整理できない」と主張しました。それがLATCH法(Location/Alphabet/Time/Category/Hierarchy)です。

彼の有名な言葉に「Understanding precedes action(理解は行動に先立つ)」があります。情報を整理せずに行動を起こす(=設計を始める)と、必ず破綻すると言っているのです。

豆知識:Wurmanは2000年代に「LATCH法」をさらに広めるため、世界中の博物館・空港・図書館の案内表示を分析する研究を行いました。「迷子になる空間は、LATCHのいずれにも基づかずに表示されている」という結論は、Webサイトの情報設計にもそのまま使えます。あなたたちが午後作る情報モデルも、LATCH法のどれかに沿っているはずです。

💬 AIに聞いてみよう

  • 「ECサイトの『カート機能』に必要な情報を10個挙げて」
  • 「『整理』と『分類』を、引っ越しのたとえで説明して」
  • 「オープン・カードソーティングを実際にやる手順を教えて」
  • 「私たちのテーマで、最初にやるべきはオープン? クローズド?」

まとめ(5分)

このセッションで学んだのは、次の3点。

  1. 情報設計後半は「洗い出し→整理→分類」の3ステップ
  2. 整理と分類は別物: 整理=捨てる、分類=分ける。順番が大事
  3. カードソーティング: オープン(カテゴリ未知)とクローズド(カテゴリ既知)を使い分け

次のセッション(9:55-)からは、いよいよ実習。あなたのチームの開発テーマで、情報を30個以上洗い出し、整理・分類して「情報定義書」を作ります。

部屋の片付けと同じです。最初は「うわ、こんなに散らかってた」と圧倒されますが、捨てて分けると気持ちよく整います。情報も同じです。

🔄 振り返りチェック

  • 「整理」と「分類」の違いを、自分の言葉で説明できますか?
  • オープンとクローズドのカードソーティングを、いつ使うか説明できますか?
  • 情報設計の流れ(洗い出し→整理→分類)を、隣の人に1分で語れますか?
  • 「迷ったら整理基準に立ち返る」とはどういう意味か、自分の例で言えますか?

補足資料

  • 参考書籍: Richard Saul Wurman『Information Anxiety』
  • 参考書籍: Donna Spencer『Card Sorting: Designing Usable Categories』
  • 参考ツール: Optimal Workshop(オンラインカードソーティング)、Miro、FigJam
  • 発展課題: 自分のスマホのアプリアイコン配置を、カードソーティング視点で分析

学習ガイド

想定される質問と回答例

質問 ヒント
整理と分類、どっちが大事? どちらも大事。ただし「整理→分類」の順を守る
カードは何枚くらい用意する? 30〜100枚が目安。少なすぎると洞察が出ない、多すぎると消化不良
デジタルと紙、どっちが良い? 議論主体なら紙、保存・共有重視ならデジタル。研修ではデジタル推奨
オープンで出たカテゴリが多すぎる 7±2個に集約する(ミラーの法則)。さらに親カテゴリでくくる
LATCH法も知っておくべき? 知っているとカテゴリ命名が速くなる。発展課題で調べてみる

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
整理せずに分類を始める 「先に整理」のルールを徹底。捨てるものから決める
カテゴリが10個以上に分裂 似たカテゴリを統合。「親カテゴリ」を作って階層化
「これは整理すべき? 分類すべき?」で迷う ペルソナの目的に立ち返る。目的に使うなら残す、使わないなら捨てる
カテゴリ名が「その他」に逃げる 「その他」が出たら命名失敗。再分類または分割
1枚のカードが複数カテゴリにまたがる カードの粒度が粗い。分割するか、メインカテゴリを1つ決める
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