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取り組む課題と開発テーマの決定

概要

  • 日程: Day 2 / セッション 4
  • 時間: 11:35-12:40(65分)
  • 形式: 実習(グループワーク + AIディスカッション)
  • ゴール: 合意形成ルールに従い、課題候補から「取り組む課題」1つと「開発テーマ」1つを時間内に決定し、選定理由を1分で説明できる
  • 学習形式: グループワーク、AIディスカッション

導入(5分)

Day 2最後のセッションです。ここで取り組む課題1つ開発テーマ1つ決め切ります

「決め切る」と強調するのは理由があります。新人チームに多いのが、**「決めかけて何度も蒸し返す」**パターン。「やっぱりこっちが…」「いや昨日のあれが…」と振り出しに戻り続け、3日経っても何も進みません。

完璧な選択肢はありません。20案あれば、どれかは「これでは?」と思える。選んで進む、そして進みながら修正する——これが本研修の進め方です。Day 1で決めた合意形成ルールが、ここで初めて本格的に試されます。

本編(15分)

1. 「選び切る」勇気〜決定の心得

意思決定の心得を3つ。

心得1: 完璧な選択肢はない

20案あれば、どれかが100%正解ということはあり得ません。**「現時点の情報で最善」**を選び、進めながら学んだことで修正します。

心得2: 選ばなかった案にも価値がある

選ばなかった19案は、捨てるのではなく**「次の機会のストック」**として残します。今回採用した1案が頓挫しても、ストックがあれば即座にピボット(方向転換)できます。

心得3: 決定したらサポートする

メンバーに「もっと別の案がよかった」と思う人がいても、チームが決めたら全員で応援する。これがチームの基本です。決定を引きずる時間は前に進む時間を奪います。

2. 決定プロセスの設計〜段階的に絞り込む

20案→1案を一気に決めるのは無理です。段階的に絞ります。

flowchart TD A["20案以上"] --> B["前セッションの評価で
上位5案に絞る"] B --> C["各案を5要素で深掘り"] C --> D["AIに弱点を指摘してもらう"] D --> E["合意形成ルールに従って1案決定"] E --> F["決定した案から
開発テーマを言語化"]

このプロセスを意識的に踏むと、**「なんとなく決めた感」**がなくなります。

3. 候補の深掘り〜5要素で書き出す

Day 1で学んだ「解決アイデアの5要素」をここでも使います。

要素 内容
誰が(Who) ターゲットユーザ
何に困っているか(Problem) 解決したい困りごと
どう解決するか(Solution) 具体的な仕組み
なぜそれで解決するか(Why) 解決メカニズム
どこが新しいか(New) 既存サービスとの違い

上位5案について、この5要素を埋めます。埋まらない箇所がある案は要注意——その案には穴があります。

コード例・実例

5要素を埋めた例:

案A: シニア向け地域イベント参加管理アプリ

  • 誰が: 60-70代のシニア(スマホ操作は基本のみ可)
  • 何に困る: 地域の催しの存在を知る手段が回覧板や口コミだけで取り逃しがち
  • どう解決: 公民館・町内会と連携し、シニア向けに大きな文字とシンプルなUIで案内表示・参加申込
  • なぜ解決: 情報の発信元と利用者を同じアプリでつなぐ/文字サイズと操作の障壁を下げる
  • どこが新しい: 既存アプリは若者向け。シニア向けに特化したUIと、地域団体との連携運用

4. AIを「反対意見役」として使う

決定の最後で、AIに反対意見を言わせることが大事です。チームで盛り上がると、客観的な弱点が見えなくなります。

プロンプト例:

私たちのチームは次のテーマで開発を進めようとしています:
[5要素で書いた案]

このテーマの弱点・矛盾・実現困難な点を、辛口で10個指摘してください。
ユーザの反論・競合の存在・技術的困難・倫理的懸念など、あらゆる角度から。

AIの指摘のうち**「致命的なもの」**だけ対応します。すべての指摘を解消しようとすると進まなくなります。

5. 合意形成ルールの実行

Day 1で決めた合意形成ルールを思い出してください。たとえば「コンセンサスを基本、30分で結論が出なければリーダ決定」と決めたなら、その通りに運用します。

ルールを破ると、次から守られなくなります。ルールは1度破ると価値を失う。今日が最初の運用日ですから、特に注意してください。

💬 AIに聞いてみよう

意思決定の途中で行き詰まったら:

  • 「私たちは案Aと案Bで揺れています。それぞれのメリット・デメリットを3つずつ、新人開発チーム視点で比較して」
  • 「『情報処理をともなう』の観点で、案Aと案Bを比較してください」
  • 「PMの立場で、新人チームに次に決めるべきポイントを教えて」

実習・演習(40分)

進め方

flowchart TD A["1. 上位3-5案に絞る
10分"] --> B["2. 5要素で深掘り
15分"] B --> C["3. AIに弱点指摘
5分"] C --> D["4. 合意形成ルールで決定
5分"] D --> E["5. 開発テーマ言語化&発表準備
5分"]

ステップ1(10分): 上位3-5案に絞る

前セッションの評価表(実現可能性×価値)を見て、合計点上位の3〜5案に絞ります。各メンバーが異論があれば1人2分で発言して候補リストを最終化。

ステップ2(15分): 5要素で深掘り

候補3〜5案について、5要素表を埋めます。役割分担して同時並行で書き、完成したら全員で読み合わせ。埋まらない箇所のある案はこの段階で除外します。

ステップ3(5分): AIに弱点指摘

絞り込んだ2-3案について、AIに弱点・矛盾を10個指摘してもらいます。指摘を見て、致命的な弱点がある案を除外。

ステップ4(5分): 合意形成ルールで決定

Day 1で決めた合意形成ルールに従って、1案を決定します。コンセンサスを取る/多数決を取る/リーダが決定する——いずれにせよ、決定したら全員で支持する約束をもう一度確認。

ステップ5(5分): 開発テーマ言語化&発表準備

決定した案から、開発テーマを1文で言語化します。テンプレートは次。

「[誰]の[何の課題]を、[どう解決]することで、[どう変える]システム」

例:

「60-70代シニアの地域コミュニティ離れを、地域団体と連動した大きな文字のイベント参加アプリで解決することで、シニアの社会的つながりを保つシステム」

最後に、選定理由を1分以内のスピーチにまとめます(話す&行う)。

成果物

  • 取り組む課題(1つ、5要素で記述)
  • 開発テーマ(1文)
  • 選定理由のスピーチ(1分以内)
  • AIの弱点指摘ログ(反証メモ)

ヒント

  • 5要素表で埋まらない箇所は「埋まらない」と明記。穴は隠さない
  • AIの弱点指摘で「対応できないもの」は、Day 3以降のリスクとして記録しておく
  • 開発テーマの1文に**主語(誰)**が入っていないと、Day 3のペルソナで困る
  • 「これで決めていいか」と迷ったら、5要素表をもう1度声に出して読む

まとめ(5分)

このセッションで、Day 2は完了です。

  1. 取り組む課題を1つ決定(5要素で記述)
  2. 開発テーマを1文で言語化
  3. 選定理由を1分で説明できる

Day 3からは、決定したテーマを「誰のため」に作るかを、ペルソナとして描き出します。今日決めた「誰が」がそのまま入力になります。今日の決定は明日のすべての出発点です。

ここから**「合意した内容に変更が生じる場合には事前に報告して調整する」が本格的に効いてきます。誰かが「やっぱりテーマを変えたい」と思ったら、必ず事前に**チームに相談してください。

🔄 振り返りチェック

  • 決定した「取り組む課題」と「開発テーマ」を、1分で説明できますか?
  • 5要素表で埋まらなかった箇所はありますか?それはなぜですか?
  • AIが指摘した弱点のうち、致命的なものは何ですか?対応策は?
  • Day 1で決めた合意形成ルールは、今日機能しましたか?

補足資料

  • 参考リンク
    • 『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』
    • 『リーンスタートアップ』(仮説検証のサイクル)
  • 発展課題
    • 決定したテーマで、もし時間とリソースが無限にあったらどう発展させたいか、3案考える
    • 競合になりそうな既存サービスを3つ詳しく調べ、強み・弱みを比較表にする

学習ガイド

想定される質問と回答例

質問 ヒント
決めた後でいいアイデアを思いついたら? 「合意した内容の変更は事前報告」。チームに相談→合意で変更可能
全員が違う案を推している 評価表(数値化)で議論。それでも割れたらルール通りに決定
「これでいいの?」と決定後に不安になる 不安は当然。動かして学ぶことに切り替える
AIが「ダメ」と言った案を採用していい? AIは万能ではない。チームの判断が優先。指摘はリスクとして記録

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
決定を先延ばしにする 時間が来たらルールに従って決定。完璧な情報は揃わない
決まった後に蒸し返す 「変更は事前報告」のルール通りに。陰でグチを言わない
開発テーマが抽象的すぎる 「[誰]の[何]を[どう]」テンプレで具体化。主語必須
反対意見をAIだけに言わせる 人間の反対意見も歓迎する文化を作る。健全な議論はチームの強み
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