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開発テーマの決め方〜情報処理をともなうシステムとは

概要

  • 日程: Day 2 / セッション 3
  • 時間: 11:10-11:35(25分)
  • 形式: 座学(対話型解説 + ケーススタディ)
  • ゴール: 「情報処理をともなうシステム」に該当する例と該当しない例をそれぞれ2つ以上挙げ、課題候補を絞り込む評価軸を説明できる
  • 学習形式: 対話型解説、ケーススタディ

導入(5分)

休憩明け、お疲れ様です。
前のセッションでは20案以上の課題候補が出ましたね。多くて頭がパンクしそうかもしれません。次のセッションでは、ここから1つに絞り込みます。

絞り込むには基準が必要です。「直感」や「多数決」で決めると、なぜそれを選んだか説明できません。お客様や上司に「なぜこれを作っているの?」と聞かれて答えられないシステムは、途中で迷走します。

このセッションでは、「情報処理をともなうシステム」というテーマの条件と、「実現可能性」「価値」の2軸での絞り込み方を学びます。次のセッションで使う武器を渡します。

本編(15分)

1. 「情報処理をともなうシステム」とは何か

本研修で開発するテーマには条件があります。

情報処理をともなうシステムの開発であること

なぜか?それは、本研修が情報設計→外部設計→内部設計→実装という一連のソフトウェア設計プロセスを学ぶための場だからです。情報を扱わないものでは、データベース設計もER図も意味がなくなってしまいます。

「情報処理」とは難しい言葉ですが、ざっくり言うと**「データを入力・保存・加工・出力すること」**です。

flowchart LR A["入力
(ユーザ・センサー)"] --> B["保存
(DB・ファイル)"] B --> C["加工
(計算・検索・変換)"] C --> D["出力
(画面・通知)"]

このサイクルが回るものが「情報処理をともなうシステム」です。

2. 該当する例 vs 該当しない例

定義より対比で覚えましょう。

○ 該当する例

どこが情報処理か
飲食店の予約管理アプリ 予約情報を入力・保存・検索・通知
体重記録アプリ 体重データを入力・保存・グラフ化
子どものお小遣い管理ツール 収支を入力・集計・残高表示
ペット散歩のマッチング 飼い主と散歩員の情報をマッチング
地域イベント参加管理 イベント情報・参加情報を保存・通知

× 該当しない例

なぜ該当しないか
お洒落なペーパークラフト 物理的なものを作るだけで情報を扱わない
折り紙の新作 同上
ハードウェアだけの装置(電気だけで動く) プログラムでの情報処理がない
1回限り使い捨てのチラシ 情報の保存も加工もない

コード例・実例

「ペーパークラフト」が×なのは分かりやすいですが、こんな迷いどころもあります。

迷いやすい例: 「おみくじ自販機

  • 物理的な機械だけ作るなら×
  • ただし「過去のおみくじ履歴を記録し、ユーザの傾向を分析するアプリ機能」をつければ○

つまり、情報処理の要素を「ともなう」設計にすれば該当します。本研修のテーマは、何らかの形で情報処理を含む設計にしてください。

ここがポイント

「情報処理をともなう」かどうか迷ったら、**「データベースに保存するものが何かあるか?」**を自問してください。保存するものがあれば、ほぼ該当します。

コラム

ENIAC(1946年、世界初の汎用電子計算機)は、もともと砲弾の弾道計算のために作られました。当時の「情報処理」とは数式の計算が中心でした。
それから80年。今では「情報処理」と言えば、SNSの投稿表示、地図のナビゲーション、AIによる画像生成まで含みます。情報処理の対象は数値から文章・画像・音声・行動データへと拡張し続けています。「何を情報として扱うか」自体が、デザインの一部なのです。

3. 候補を絞り込む2軸〜実現可能性 × 価値

20案以上の候補から1つに絞るとき、直感で決めないためのフレームワークを使います。それが実現可能性 × 価値マトリクスです。

flowchart TD A["全候補"] --> B["価値高 × 実現可能性高
★最優先"] A --> C["価値高 × 実現可能性低
魅力的だが要削減"] A --> D["価値低 × 実現可能性高
練習にはなる"] A --> E["価値低 × 実現可能性低
×除外"]

実現可能性は、22日間という制約の中で:

  • 残り18日(Day 5以降の設計・実装)で本当に作れるか
  • 必要な技術はチームが持っているか/学べるか
  • 必要なデータ・API・素材は手に入るか

価値は:

  • 「本当に困っている人」がいるか
  • 「未解決」または「既存より優れた解決」になっているか
  • 解決によって変わる体験の大きさ

4. 評価のやり方〜5段階×AIレビュー

候補20個を5段階で評価します。各メンバーが個別に評価→平均化するのがオススメです。集団で議論しながら付けると、声の大きい人に引っ張られます。

候補 実現可能性(1-5) 価値(1-5) 合計
案A 4 5 9
案B 3 3 6
案C 5 2 7

合計点の上位3案を最終議論の候補に絞り込みます。最終決定は次のセッションです。

AIにも評価を頼みましょう:

以下の課題候補3つについて、それぞれ
1. 22日間の研修期間で実現可能か(1-5で評価し理由)
2. 解決の価値の大きさ(1-5で評価し理由)
3. 「情報処理をともなうシステム」になりうるか(○/△/×)
4. 似た既存サービスは何か
を分析してください。

【候補1】〜
【候補2】〜
【候補3】〜

💬 AIに聞いてみよう

ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。

  • 「『情報処理をともなうシステム』の例と、紛らわしい『該当しない例』を5つずつ教えて」
  • 「22日間で作れる規模感のシステムって、機能数で言うとどれくらい?」
  • 「『価値の大きさ』を新人チームが判定するときの、ありがちな勘違いを教えて」
  • 「実現可能性 × 価値マトリクスの『価値高×実現可能性低』を、価値高×実現可能性高に変える典型パターンは?」

実習・演習(5分)

ここでは練習を1問だけ。

ミニ演習: 次の3つの候補を「情報処理をともなうか」で○/△/×評価してください。

  1. 「公園のベンチに花を飾るボランティア活動の運営」
  2. 「子どもの夜泣きを記録して傾向を可視化するアプリ」
  3. 「カフェに置く折り紙の新作セット」

回答例(チームで議論してから確認):

  1. △: 活動そのものは情報処理ではないが、「ボランティア募集・参加管理アプリ」にすれば○
  2. ○: 夜泣き情報を入力・保存・集計・可視化する典型例
  3. ×: 物理的な工作物のみで情報処理を含まない

まとめ(5分)

このセッションでは、3つを学びました。

  1. 情報処理をともなうシステム: 入力→保存→加工→出力のサイクルを持つもの
  2. 該当する/しないの対比: 「データベースに何を保存するか」で判別
  3. 絞り込み2軸: 実現可能性 × 価値マトリクス + AIレビュー

次のセッションでは、この2軸を使って候補を1つに絞り込み、開発テーマを決定します。Day 1で決めた合意形成ルールを最初に試す場です。

🔄 振り返りチェック

  • 「情報処理をともなうシステム」の例を3つ挙げられますか?
  • 「該当しない例」を2つ挙げられますか?
  • 実現可能性と価値、どちらか1つだけ高い候補にはどう対処しますか?
  • 自分の候補リストの中で、いま「最有力」と思うものはどれですか?

補足資料

  • 参考リンク
    • 『リーンスタートアップ』(MVP=最小実用製品の考え方)
    • 『How Google Works』(実現可能性 × インパクトの判断軸)
  • 発展課題
    • 既存の有名アプリ3つを「入力→保存→加工→出力」の図で書いてみる
    • 自分の候補リストの全案を5段階で評価し、AIにも評価させて差分を観察

学習ガイド

想定される質問と回答例

質問 ヒント
「価値高×実現可能性低」を諦めるべき? まず「機能を絞れば実現できないか」を考える。MVP化で救える場合あり
メンバーで評価が割れた候補は? 評価が割れること自体が情報。なぜ割れるかを議論し、評価軸を共通化
AIの評価と人間の評価が違う時は? AIは「平均的・一般的」な評価。チームの強みを知らない。両方見て総合判断
「斬新だけど作れない」案は捨てるしかない? 機能を1つに絞ったり、技術を変えれば作れる場合がある。諦める前に削減を試す

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
「やりたい度」で評価してしまう やりたい度は別軸。実現可能性・価値とは分けて評価
「情報処理」を狭く考えすぎる 数値計算だけでなく、検索・通知・集計・分類も情報処理
評価を口頭ですり合わせる 必ず数値で書き出す。記録に残さないと議論が空中戦になる
22日間で大規模なものを目指す 「核となる機能1つが動く」が現実的なゴール
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