情報設計の全体像と「良い課題」の条件
概要
- 日程: Day 2 / セッション 1
- 時間: 09:30-09:55(25分)
- 形式: 座学(対話型解説)
- ゴール: 情報設計の流れ(課題決定→テーマ決定→ペルソナ→CJM→情報定義→情報モデル)を順番に並べ、「良い課題」の前提条件(世の中でまだ解決されていない)を説明できる
- 学習形式: 対話型解説
導入(5分)
おはようございます。Day 1お疲れ様でした。チーム計画書はできていますね?
今日からはチームで本格的に作るものを決めていきます。何のシステムを、誰のために、どう作るのか。これを決める一連の作業を情報設計と呼びます。
問いかけです。世の中のシステムが「使われない」「すぐに飽きられる」最大の理由は何だと思いますか?
答えはいろいろありますが、最も多いのは——そもそも誰も困っていない問題を解いてしまったこと。技術的にすごくても、誰も望んでいなければ使われません。
このセッションでは、Day 2-4の3日間で進める「情報設計」の全体地図を見せ、その入口である**「課題決定」と「テーマ決定」**の前提条件を学びます。
本編(15分)
1. 情報設計の全体像〜3日間の地図
情報設計はDay 2〜Day 4の3日間で行います。流れは次の通りです。
Day 2"] --> B["開発テーマの決定
Day 2"] B --> C["ペルソナの定義
Day 3"] C --> D["カスタマージャーニーマップ
Day 3"] D --> E["情報定義書
Day 4"] E --> F["情報モデル定義書
Day 4"] F --> G["外部設計へ
Day 5"]
各ステップは前のステップの成果物を入力にして次へ進むバケツリレーです。「ペルソナを決めずにCJMを書く」「CJMを書かずに情報を洗い出す」は順序違反で、必ず後で破綻します。
今日(Day 2)はこの地図のいちばん左、「取り組む課題」と「開発テーマ」を決めます。一見地味ですが、ここがズレると後の全てがズレます。
ここがポイント
「前のタスクの成果物を本当に使っているか?」をDay 3以降も毎日自問してください。これはDay 1で共有した3つの心がけの1つです。
2. 「取り組む課題」と「開発テーマ」の違い
似ているようで違う2つの言葉を区別します。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 取り組む課題 | 解決したい困りごと | 「飲食店の予約変更が電話でしかできず手間がかかる」 |
| 開発テーマ | 課題を解決する手段としての開発対象 | 「Webで予約変更ができる飲食店向け予約管理システム」 |
課題が先、テーマが後。順番が大事です。「Webアプリを作る(テーマ)→何の問題を解決する?(課題)」は本末転倒で、誰のためのアプリかわからなくなります。
コード例・実例
悪い例:
テーマ: 「AIを活用したマッチングアプリ」
課題: ???(後付け)
これでは「技術ありき」で、誰の何を解決するのか不明です。
良い例:
課題: 「シニア世代が地域コミュニティの催しに参加しにくく、孤立しやすい」
テーマ: 「シニアと地域コミュニティをつなぐ参加申し込み支援アプリ」
順序が逆だと、ペルソナ・CJM・機能設計まで全部「後付けの正当化」になります。
3. 「良い課題」の前提条件〜世の中でまだ解決されていない
本研修では、取り組む課題に1つだけ強い条件があります。
世の中でまだ解決されていない課題であること
なぜこの条件があるのでしょうか。
すでに解決されている課題に挑戦しても、世の中にはより優れた既存サービスがあります。たとえば「タクシーを呼ぶのが面倒」という課題は、Uberや配車アプリで解決済みです。同じものをもう1つ作っても価値がありません。
ただし「完全に新しい課題」を見つける必要はありません。次のパターンで「まだ解決されていない部分」を見つけられます。
| パターン | 例 |
|---|---|
| 既存解決策が高価すぎる | 既存はB2B数百万円→個人向け数千円で出す |
| 既存解決策が複雑すぎる | 既存は機能100個→必要な3機能だけ提供 |
| 既存解決策がカバーしていない層 | 都心向け→地方向け、若者向け→シニア向け |
| 既存解決策が時代遅れ | FAX/電話→アプリ |
| 課題の一部だけ未解決 | 予約はできるが「変更」が電話のみ |
コード例・実例
「既存解決策がカバーしていない層」の典型例:
スマホ決済は若者中心に普及しましたが、シニア層は「QRコードがわからない」「タッチで支払うのが怖い」など独自の課題を持っています。ターゲット層を絞ると、まだ未解決の課題が見つかります。
ここがポイント
「世の中で解決されていない」を判断するには、競合調査が必須です。AIに「『○○』という課題に対する既存サービスを5つ挙げ、それぞれの強みと弱点を教えて」と聞くと、調査の出発点になります。「ない」ことを示すには「ある」ものをすべて確認します。
コラム
スティーブ・ジョブズは「人は形にされるまで自分が何を欲しいかわからない」と言いました。
ヘンリー・フォードも「もし顧客に何が欲しいか聞いていたら、彼らはより速い馬と答えただろう」と言ったと伝えられます(出典は諸説あり)。
ここから2つ学べます。1つ目、顧客は自分の課題を正確には言語化できない。2つ目、だから観察と仮説立てが必要。本研修でDay 3にペルソナとCJMを作るのは、まさにこの「顧客が言語化できない課題」を可視化するためです。
4. 「開発テーマ」の前提条件〜情報処理をともなうシステム
開発テーマにも条件があります。
情報処理をともなうシステムの開発であること
詳細はDay 2セッション3で扱いますが、今は「何らかの情報を入力・保管・処理・出力するシステムであること」と覚えておけば十分です。
例:
- ○ ECサイト(商品情報・注文情報を扱う)
- ○ 学習管理アプリ(進捗情報を扱う)
- × 物理的なペーパークラフト(情報を扱わない)
💬 AIに聞いてみよう
ここまでの内容で疑問があれば、AIに質問してみましょう。
- 「『世の中でまだ解決されていない課題』の見つけ方を、初学者向けに教えて」
- 「私が考えている『○○』という課題は、既にどんなサービスで解決されている?」
- 「『課題』と『ニーズ』と『要求』の違いを、具体例で説明して」
- 「課題発見で初心者がやらかしがちな失敗例を5つ挙げて」
まとめ(5分)
このセッションでは、3つを学びました。
- 情報設計の全体地図: 課題→テーマ→ペルソナ→CJM→情報定義→情報モデルの順番
- 課題とテーマの違い: 課題が先、テーマが後
- 良い課題の条件: 世の中でまだ解決されていない(または、部分的に未解決)
次のセッションでは、ブレストで課題候補を20個以上洗い出します。今日学んだ「未解決」のパターンを意識して、できるだけ多様な視点で挙げていきます。
🔄 振り返りチェック
- 情報設計の6ステップを順番に言えますか?
- 「取り組む課題」と「開発テーマ」、どちらを先に決めますか?
- 「世の中でまだ解決されていない」を判断する手段は何ですか?
- 自分が今思いつく「身近な未解決課題」を1つ挙げてみてください
補足資料
- 参考リンク
- クリステンセン『ジョブ理論』(顧客の「片付けたい仕事」を見つける)
- 『ザ・モデル』(顧客理解の体系)
- 発展課題
- 過去1週間で自分が困ったことを10個書き出し、「未解決度」で順位をつける
- 自分の好きなアプリ1つを取り上げ、「どんな未解決課題を解いていたか」をAIと一緒に分析する
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 課題はチームで共通でなければいけない? | 最終的には1つに絞る。でも候補出しは個人ベースで始めてOK |
| 既存サービスがあると諦めるべき? | いいえ。「どこが未解決か」を見つける。完全な解決はめったにない |
| 「困っている人がいる」ことをどう確認する? | 周囲にヒアリング、Web検索(「○○ 困る」「○○ 不満」)、AIに「典型的な不満」を聞く |
| 規模が大きすぎる課題は? | 「○○の中の××だけ」のように切り出す。例: 教育全般→大学生のレポート時間管理 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 「面白そうな技術」から発想してしまう | 課題から発想する。技術はあとから選ぶ |
| 「みんなの課題」を狙ってしまう | ターゲットを絞る。「みんなのため」は「誰のためでもない」になりやすい |
| 既存サービスの調査をしない | 必ず調べる。AIに加えてWeb検索も |
| 課題を「解決策」で書いてしまう | 「Webサイトがない(解決策の不在)」ではなく「予約変更が手間(困りごと)」と書く |