AIブレスト初体験〜身近な課題を解決アイデアに変える
概要
- 日程: Day 1 / セッション 2
- 時間: 10:00-11:00(60分)
- 形式: 実習(AIブレスト・ハンズオン)
- ゴール: 生成AIとの対話を通じて、身近な課題1つに対する解決アイデアを3つ以上、50分以内に書き出せる
- 学習形式: AIブレスト(個人ワーク中心、最後にチームで共有)
導入(5分)
前のセッションで「AIを学習パートナーとして使う」と話しました。さっそく試してみましょう。
このセッションのゴールは、「身近な課題1つに対して、解決アイデアを3つ以上出す」ことです。簡単そうに聞こえますか?
実はやってみるとわかりますが、「自由に発想して」と言われると、人間の脳はかえって固まります。最初は「うーん…思いつかない…」となるのが普通です。
そこで使うのがAIです。AIは「アイデアを思いつくこと」が得意です。皆さんはアイデアを評価し、深掘りし、自分のものとして言語化します。アイデアの原案はAI、評価と選別は人間。これが、これから22日間使うAI協働の基本パターンです。
本編(25分)
1. ブレインストーミングの4原則
「アイデアを大量に出す」会議のやり方を**ブレインストーミング(ブレスト)**と言います。1953年にアレックス・F・オズボーンという広告マンが提唱した手法で、4つの原則があります。
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| 批判禁止 | 出たアイデアをその場で否定しない |
| 自由奔放 | 突拍子もないアイデアを歓迎する |
| 質より量 | とにかく数を出す。質は後で選別 |
| 便乗歓迎 | 他人のアイデアに乗っかって発展させる |
なぜこの4原則が必要なのでしょうか。人間の脳は「批判される」と思った瞬間にアイデアを出さなくなるからです。「こんなこと言ったら笑われるかも」と思った瞬間、脳は安全策に走ります。安全策とは「ありきたりなアイデア」のことです。
コード例・実例
ブレストの典型的な失敗例:
Aさん「アプリ通知でゴミ出しを忘れない仕組みはどうですか?」
Bさん「いやそれ既にあるよね」
Aさん「(…)」
これでAさんはもう発言しなくなります。「既にある」かどうかは選別フェーズの話で、ブレストの最中に言うべきではありません。
ここがポイント
ブレストでは「いいね、それに加えて〜」「それを応用すると〜」と便乗するクセをつけてください。「いや」「でも」は禁句です。
コラム
オズボーンの本『独創力を伸ばせ(原題: Applied Imagination)』は1953年初版ですが、いまだに世界中の広告代理店・コンサルティング会社・スタートアップで使われています。
ちなみにオズボーンは「Imagination is more important than knowledge(想像力は知識より大事)」と言ったアインシュタインを尊敬していました。70年後の現在、ブレスト相手がAIになるとは彼も想像していなかったでしょう。
2. AIを「もう一人のチームメンバー」にする問いかけ方
AIに「アイデア出して」と頼むだけでは、ありきたりな答えしか返ってきません。問いかけ方で出力の質が決まります。代表的な3パターンを覚えましょう。
パターン1: 壁打ち(ぶつけて返す)
自分の考えをAIにぶつけて、反応をもらう聞き方です。
私は「電車で立ってる人がスマホを操作しにくい」という課題に注目しています。
この課題に対して、技術で解決できる案を10個挙げてください。突拍子もないものも歓迎します。
ポイントは「10個」「突拍子もない」のように、量と質の方向を指定すること。
パターン2: 深掘り(なぜ・どうやって)
出てきたアイデアをさらに掘る聞き方です。
さきほどの「片手操作モードを自動切替」というアイデアについて、もう少し詳しく考えたいです。
- どうやって片手操作中だと検知するか?
- 既存サービスとの違いは何か?
- 利用者が困りそうなシーンは?
それぞれ3つずつ挙げてください。
パターン3: 別案(視点を変える)
煮詰まったときに視点を変える聞き方です。
さきほどのアイデアは「アプリ側で解決する」案でした。
今度は「ハードウェア側」「鉄道会社側」「ユーザの習慣側」の3つの視点で、それぞれ別の解決案を3つずつ挙げてください。
3. アイデアを「解決アイデア」に育てる5要素
ブレストで出たアイデアは、そのままでは「思いつき」です。解決アイデアとして人に説明できる状態にするには、次の5要素を埋めます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰が(Who) | 想定されるユーザは誰か |
| 何に困っているか(Problem) | 解決したい課題は何か |
| どう解決するか(Solution) | 具体的な仕組み |
| なぜそれで解決するか(Why) | 解決の仕組みの根拠 |
| どこが新しいか(New) | 既存の方法との違い |
これは22日間の研修すべてで使う「アイデアの型」です。今日はこの型に1つでも入れられればOKです。
ここがポイント
「どこが新しいか」を埋めるのが一番難しいです。既に世の中にあるサービスを素直にAIに聞きましょう。「○○の領域で似ているサービスは何ですか?」。新しさは比較から見えてきます。
💬 AIに聞いてみよう
ハンズオンを始める前に、まずはこんな質問をAIに投げてみましょう。
- 「ブレインストーミングの4原則を、私が司会者だったらどう参加者に説明する?スクリプトを書いて」
- 「『自分が日常で困っていること』を引き出す質問を10個出して」
- 「アイデアを評価する5つの観点を、初学者向けに教えて」
実習・演習(25分)
課題
身近な課題1つに対して、AIと対話しながら解決アイデアを3つ以上出す。
進め方
(5分)"] --> B["2. AIに10案出してもらう
(10分)"] B --> C["3. 3案を選び深掘り
(5分)"] C --> D["4. 5要素で記述
(5分)"]
ステップ詳細
ステップ1(5分): 課題を1つ選ぶ
「最近イラッとしたこと」「不便だと思ったこと」を3つメモし、AIに「どれが課題として面白いか、理由付きで順位をつけて」と聞きます。1位を採用します。
ステップ2(10分): AIに10案出してもらう
「壁打ち」のプロンプトで、解決アイデアを10案出してもらいます。出てきたアイデアに「いいね」「面白い」「微妙」と感想だけメモします(評価しない、まず受け止める)。
ステップ3(5分): 3案を選び深掘り
10案から「ピンときた3案」を選び、「深掘り」のプロンプトで仕組みと弱点を聞きます。
ステップ4(5分): 5要素で記述
選んだ3案それぞれを、5要素(誰が/何に困る/どう解決/なぜ/どこが新しい)の表で書き出します。
成果物
- 採用した課題1つ
- 解決アイデア3つ(各5要素入り)
- AIとの対話ログ(プロンプトとAIの回答)
ヒント
- 課題が思いつかない人は「家の中」「通勤」「学校・職場」のいずれかから探す
- 5要素のうち1つでも埋まらない箇所があったら、その箇所をピンポイントでAIに聞く
- 「これは絶対無理」と思ったアイデアこそメモに残す(後で組み合わせると化けることがある)
残り時間でやること
時間が余ったら、3案のうち1つを選んで、隣の人に「30秒ピッチ」してみましょう。話してみると「あ、ここが弱い」と気づきます(話す&行う)。
まとめ(5分)
このセッションでは、3つの体験をしました。
- ブレストの4原則: 批判禁止・自由奔放・質より量・便乗歓迎
- AIへの問いかけ3パターン: 壁打ち・深掘り・別案
- 解決アイデアの5要素: 誰が・何に困る・どう解決・なぜ・どこが新しい
「アイデアって、思いつくものじゃなくて、AIと一緒にひねり出すものなんだ」と感じてもらえたら成功です。
次のセッションでは、チーム開発の原則を学びます。ここまでは個人ワーク中心でしたが、これからはチームで動きます。「なぜチームでやるのか」「どう役割を分けるのか」を考えていきます。
🔄 振り返りチェック
- ブレストの4原則を順番に言えますか?
- 「壁打ち」と「深掘り」のプロンプト例を1つずつ書けますか?
- 自分が出したアイデアの「どこが新しいか」を1文で言えますか?
- AIに頼ったことで「自分が考えた」と言えなくなった瞬間はありましたか?
補足資料
- 参考リンク
- アレックス・オズボーン『独創力を伸ばせ』
- SCAMPER法(ブレストの発展形)
- 発展課題
- 同じ課題について、AIを使わずに3案出してみて、AI使用時との差を観察する
- 自分のアイデア3つをAIに「実現可能性・新規性・需要」で5段階評価してもらう
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| AIが出したアイデアは「私のアイデア」と言っていい? | 評価・選別・組み合わせをしたのは自分。誰のものかは「最終的に責任を取る人のもの」 |
| アイデアが全然出ない時はどうする? | 課題そのものをAIに「もっと細かい課題に分解して」と頼む。粒度を下げると出やすい |
| 「突拍子もない」アイデアは本当に役立つの? | そのままでは役立たない。「組み合わせ」の素材になる。1個では使えないが10個あると化学反応が起きる |
| AIの回答が当たり障りないときは? | 「もっと具体的に」「日本の事情で」「年配の人向けに」のように条件を足す |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 1案出ると満足してしまう | 「あと7案」と数を強制する。最初の案は脳の準備運動 |
| AIの答えをコピペで成果物にしてしまう | 自分の言葉で書き直す。書き直せない=理解していない |
| 「正しい答え」を探そうとする | ブレストに正解はない。数と多様性が価値 |
| 課題が大きすぎて手が止まる | 「半径3mの困りごと」に限定する。世界平和より「机が散らかる」 |