プレゼン練習と想定問答の準備
概要
- 日程: Day 19 / セッション 3
- 時間: 11:10-12:40(90分)
- 形式: 実習(ハンズオン実習・AIサポートあり、相互レビュー)
- ゴール(行動・条件・基準): 制限時間内で発表を1回以上通しで練習し、AIに聴衆役(審査員・顧客・技術者)を演じさせて想定される質問と回答を5件以上、90分以内に準備できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)、相互レビュー
導入(5分)
プレゼン資料は出来ました。ここからが本当の勝負です。同じスライドでも、練習した人としていない人では、印象が3倍違います。
質問。皆さんは過去に「本番でうまく話せなかった」経験はありませんか? 原因の多くは2つです。
- 時間配分を本番で初めて試した(途中で時間切れ)
- 想定外の質問に頭が真っ白になった
このセッションでは、両方を潰します。時間を計って通し練習し、AIに聴衆役を演じさせて質問の弾を集めます。
ここでの「弾を集める」は重要です。本番で初めて質問を聞くのではなく、事前に8割の質問を経験しておけば、本番は怖くありません。
本編(20分)
1. 通し練習〜時間計測が9割
通し練習でやることは1つ。最初から最後まで、本番と同じテンポで話して、時計で計る。
練習: 時間計測"] --> B["時間オーバー
or 不足を確認"] B --> C["スライドを削る
or 追加する"] C --> D["2回目
練習: 再計測"]
| 練習回数 | 目的 |
|---|---|
| 1回目 | 現状の所要時間を知る |
| 2回目 | 時間調整・流れの確認 |
| 3回目以上 | スムーズさ・自信 |
コード例・実例
1回目の通し練習でよくある結果:
- 「想定10分のはずが、15分かかった」→ パート1を2分→1分に圧縮 or スライドを削る
- 「想定10分のはずが、6分で終わった」→ 内容が薄い or 早口すぎる
- 「全部のスライドで時間配分通りだった」→ 練習の成果が出ている
時間調整はスライドを削るのが基本です。話すスピードを上げて調整するのはNG(聴衆が置いていかれる)。
ここがポイント
本番の所要時間は練習の1.2倍になりがちです。緊張で間が伸び、質問が入り、機材が手間取るためです。練習で時間ピッタリ = 本番で時間オーバー。練習では制限時間より10%短く終わる目標で。
2. AIに聴衆役を演じさせる〜3種類の聴衆
想定質問を集めるとき、AIに3種類の聴衆を演じさせます。
を問う質問"] C["AI = ペルソナ本人"] --> D["使い勝手・価値
を問う質問"] F["AI = 技術者"] --> G["実現可能性・拡張性
を問う質問"]
| 聴衆役 | よくする質問 | 例 |
|---|---|---|
| 審査員 | 事業性・差別化 | 「競合と何が違うのか?」「ビジネスとして成立するか?」 |
| ペルソナ本人 | 自分の課題が解けるか | 「これって本当に私の困りごとに合ってる?」 |
| 技術者 | 実現可能性・スケーラビリティ | 「データが100万件になったら?」「セキュリティは?」 |
AIへの依頼文の例:
あなたは厳しい新規事業の審査員です。これから私たちのプレゼン内容を聞いてください。「【プレゼン内容の要約】」。終わったら、あなたが審査員として聞きたい質問を5個、辛口で挙げてください。
3種類の聴衆役で合計15個以上の質問を集めると、本番で出る質問の8割をカバーできます。
コード例・実例
審査員の質問例:
- 「ターゲット市場の規模はどれくらいですか?」
- 「収益化の方法は?」
- 「競合製品と比べた優位性は?」
- 「3年後の事業計画は?」
- 「初期投資の回収期間は?」
ペルソナ本人の質問例:
- 「私のスマホはAndroidだけど対応してる?」
- 「写真を撮るのが面倒な日はどうすればいい?」
- 「献立の提案が私の好みと違ったら?」
技術者の質問例:
- 「使っているAIモデルは?」
- 「同時アクセス1万人で耐えられる?」
- 「データのプライバシー対策は?」
ここがポイント
質問を集めるだけでなく、回答も用意する。回答がない質問は本番で答えられません。
3. 回答のPREP法と「答えられない時」の対処
回答にはテンプレートがあります。PREP法です。
結論"] --> B["R:Reason
理由"] B --> C["E:Example
具体例"] C --> D["P:Point
結論再提示"]
| 要素 | 内容 | 例(「競合との違いは?」への回答) |
|---|---|---|
| Point | 結論を一言で | 「冷蔵庫の中身から提案する点です」 |
| Reason | なぜそれが優位か | 「他の献立アプリは好みから提案するため、フードロス削減につながらないからです」 |
| Example | 具体例・数字 | 「Day 16のテストで、ペルソナの田中さんはレタス1個分の食材を救えました」 |
| Point | 結論を再度 | 「つまり、冷蔵庫起点が我々の独自性です」 |
PREP法は15秒〜30秒で1回答が目安。長すぎると次の質問が受けられません。
コード例・実例
良い回答(PREP):
「事業として成立するか?ですね(復唱)。結論からお答えすると、月額300円のサブスクで黒字化できる見込みです(P: Point)。理由は、ペルソナの田中さんと同じ悩みを持つ層が国内に約500万人いて、1%獲得すれば月額1500万円の売上になるからです(R: Reason)。実際にDay 2の市場調査で、有料アプリへの支払い意欲は60%でした(E: Example)。したがって、収益化の道筋は見えています(P: Point)。」
ダメな回答:
「えーと、たぶん、なんとかなると思います...」
ここがポイント
PREP法は結論を最初に言うのが最大の特徴。聴衆は最初の一言で「答えが返ってきた」と感じます。
4. 答えられない質問への対処〜知ったかぶりは絶対NG
質問のすべてに答えられる必要はありません。答えられないときの正解の言葉を覚えておきます。
質問が来た"] --> B["1.質問を復唱"] B --> C["2.正直に言う
'今は持ち合わせていません'"] C --> D["3.確約する
'〇〇までに調べてお答えします'"]
絶対NGなのは:
- 「えーと、たぶん...」(曖昧)
- 「それは関係ないと思います」(質問を切り捨て)
- それっぽい嘘の数字を答える(信頼が壊れる)
正解の言葉:
- 「良いご質問をありがとうございます。今は正確な数字を持ち合わせていません。〇〇までに調べてメールでお答えします」
これで信頼は逆に上がります。
コラム
ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)は会議で答えに窮したとき、必ず「I don't know yet, but I'll find out(まだわかりません、でも調べます)」と言ったそうです。CEOが「わからない」と言える組織が、本当に強い組織。新人の皆さんも、最初から堂々と「わかりません、調べます」と言える人になってください。
💬 AIに聞いてみよう
- 「あなたは厳しい新規事業の審査員です。私のプレゼン内容『XXXX』を聞いて、5個の辛口質問をしてください」
- 「あなたはペルソナの田中さん本人です。このアプリを使う立場で、不安な点を5個質問してください」
- 「以下の質問に対して、PREP法で15秒以内の回答案を作ってください」
実習・演習(60分)
ステップ1: 通し練習(25分)
- 1回目: 時間計測して通しで話す(10分+振り返り5分)
- スライドを削る or 追加する判断
- 2回目: 修正後に再度通しで話す(10分+振り返り5分)
ポイント: 必ず本番と同じ立ち位置・声量で。スマホで動画を撮ると客観視できます。
ステップ2: AIに聴衆役で想定質問を集める(20分)
- 審査員役のAIに5個質問してもらう
- ペルソナ役のAIに5個質問してもらう
- 技術者役のAIに5個質問してもらう
- 合計15個以上の質問リストを作る
ステップ3: 想定問答集を作る(10分)
- 集めた質問から、出そうな質問を上位5〜10個に絞る
- 各質問にPREP法で15〜30秒の回答案を書く
- 担当者(誰が答えるか)を決める
ステップ4: 相互レビュー(5分)
- 別チームに想定問答を見せて、追加で出そうな質問を1つ以上もらう
- その質問への回答案も追記
演習成果物
- 通し練習の所要時間記録(1回目・2回目)
- 想定問答集(最低5問、PREP法での回答案つき、担当者明記)
- 相互レビュー追加質問1個以上
まとめ(5分)
このセッションでは、3つのことを実践しました。
- 通し練習で時間計測: 本番は練習の1.2倍。10%短い目標で
- AIに3種類の聴衆役: 審査員・ペルソナ・技術者から計15問
- PREP法と「わかりません」の正解: 結論先出し、知ったかぶりは絶対NG
明日のDay 20は通しリハーサルです。今日集めた想定質問も含めて、本番さながらに行います。今日の練習が明日と本番(Day 21)の安心感に直結します。
🔄 振り返りチェック
- 本番は練習時間の何倍になりやすいですか?
- AIに演じさせる3種類の聴衆役は何ですか?
- PREP法の4要素を順番に言えますか?
- 答えられない質問への正解の言葉は何ですか?
補足資料
- 参考リンク
- 『PREP法』日本パブリックスピーキング協会
- クリス・アンダーソン『TED TALKS 世界最高のプレゼン術』第8章 質疑応答
- 動画: トヨタ自動車記者会見の対応事例(質問対応の参考)
- 発展課題
- 自分のプレゼンをスマホで録画し、後で見返して「自分が聴衆ならどう感じるか」評価する
- 他チームの想定問答集を見て、自チームに使える質問を1つ追加
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | 回答ヒント |
|---|---|
| 通し練習は何回やればいい? | 最低2回。本番までに合計3〜5回が理想 |
| 一人で練習すると恥ずかしい | スマホで録画。後で見返すだけでも効果がある |
| 時間オーバーが直らないときは? | スライドを削る。話速を上げるのはNG |
| 想定質問を集めすぎて回答が間に合わない | 上位5〜10個に絞る。残りは「想定外として受ける覚悟」を決める |
| Q&Aで複数の質問者がいるときの順番は? | 司会者がいれば任せる。いなければ「右の方からどうぞ」と発表者が指名 |
| 質問の意味がわからない時は? | 「ご質問の趣旨は××で合っていますか?」と確認 |
| ブリッジング(質問を言い換えて答える)は使っていい? | 政治家がよく使うが、新人はやらない方が無難。素直に答える |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 練習なしで本番に臨む | 確実に失敗する。最低2回は通し練習 |
| 時間計測をしない | 必ず計る。スマホのストップウォッチで十分 |
| 質問は答えられるだろうと油断 | 必ず5問以上の想定問答を準備 |
| 「わかりません」が言えない | 知ったかぶりは100%バレる。誠実が最強 |
| PREP法を覚えるのが面倒 | 「結論→理由→例→結論」の4語だけ暗唱 |
| 想定外の質問でパニック | 「ご質問ありがとうございます」で5秒稼ぐ。冷静になる時間を作る |
| 練習を一人でやって満足 | チーム全員の前でやる。聞き手の表情で気づくことが多い |