プロットとアウトラインの作成
概要
- 日程: Day 18 / セッション 3
- 時間: 11:10-12:40(90分)
- 形式: 実習(ハンズオン実習・AIサポートあり)
- ゴール(行動・条件・基準): キャッチフレーズを核に、ホールパート法に沿ったプロット(ストーリー)とアウトライン(プレゼン全体構成)を90分以内に作成し、声に出して通し読みして流れの飛躍を1件以上修正できる
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
ここまでで、キャッチフレーズが手に入りました。これがプレゼンの背骨になります。
ここからは「背骨に肉をつける」作業です。キャッチフレーズを聴衆の頭に届けるために、どんなストーリー(プロット)で、どんな順番(アウトライン)で話すかを決めます。
注意点が1つ。まだスライドは作らないでください。スライド作成はDay 19。今日はアウトラインまで。これを守るだけで、明日の作業効率が3倍変わります。
「アウトラインって地味じゃないですか?」と思うかもしれません。映画も小説もマンガも、すべて**プロット(あらすじ)**から作ります。スティーブン・スピルバーグが脚本なしで撮影を始めることはありません。プレゼンも全く同じです。
本編(25分)
1. プロットとは〜聴衆を動かす筋書き
プロットとは「聴衆をどう感じさせ、どう動かすかの筋書き」です。3つの状態の変化で考えます。
聴衆の今の状態""uot;"] --|プレゼンで変える|--> B["After
聴衆の理想状態"]想状態"] A --|Why now?|--> C["変化を起こす
メッセージ"] C --> B
| 状態 | 内容 | 例(献立アプリ) |
|---|---|---|
| Before | 聴衆が今いる状態(聞く前の認識) | 「献立アプリはたくさんあるよね」 |
| After | プレゼン後に聴衆が至るべき状態 | 「冷蔵庫の中身から提案するのは画期的だ、使ってみたい」 |
| Why now | なぜ今、これを聞くべきか | 「フードロスが社会問題化している今こそ」 |
プロットの作り方は簡単です。Beforeを書く→Afterを書く→その間の橋を3つの石(メッセージ)で渡す。3つの石が、ホールパート法の3つのパートになります。
コード例・実例
プロットの例(献立アプリ):
- Before: 聴衆は「献立アプリは飽和市場」と思っている
- 石1: でも実は「献立を考える時間」より「冷蔵庫の中身を活かす」が課題
- 石2: 我々は写真1枚で冷蔵庫を解析する独自AIを開発した
- 石3: ペルソナの田中さんが30分→3分に短縮、フードロスも減った
- After: 「これは画期的、自分も使いたい」と思う
聴衆の頭の中の物語が、Before→Afterに動きます。これがプロットの仕事です。
ここがポイント
プロットは「聴衆を主人公」にした物語です。製品が主人公ではありません。聴衆の中で「私が変わった」という感覚が生まれたら成功です。
コラム
ピクサーの映画にはストーリーボードという設計図があります。映画1本につき数千枚。絵コンテで物語を確定させてから初めて、CGアニメーターが手を動かし始めます。「先に骨組み、後に作り込み」はピクサーの鉄則。プレゼンも同じです。
2. アウトラインの黄金テンプレート〜時間配分つき
プロットが決まったら、ホールパート法に沿ってアウトラインに落とし込みます。発表時間が10分の場合のテンプレート例:
発問または衝撃の事実"] --> B["2.全体(1分)
今日伝えたい3つ"] B --> C["3.パート1(2分)
課題: ペルソナの困りごと"] C --> D["4.パート2(2分)
解決: 我々の製品"] D --> F["5.パート3(2分)
デモ: 動く製品で示す"] F --> G["6.まとめ(1分)
3つの再提示"] G --> H["7.Q&A(1.5分)"]
| セクション | 時間 | 役割 | スライド枚数目安 |
|---|---|---|---|
| つかみ | 30秒 | 聴衆の注意を一気に引く | 1枚 |
| 全体(ホール) | 1分 | 今日伝えたい3つを宣言 | 1枚 |
| パート1: 課題 | 2分 | ペルソナの困りごとを描く | 2〜3枚 |
| パート2: 解決 | 2分 | 我々の製品の独自性 | 2〜3枚 |
| パート3: デモ | 2分 | 動く製品で証明 | 2〜3枚+デモ |
| まとめ(ホール) | 1分 | 3つを再提示・キャッチフレーズで締める | 1枚 |
| Q&A | 1.5分 | 質疑応答 | 1枚(Thank You) |
コード例・実例
つかみの例:
- 発問: 「皆さんは昨日、夕食に何を食べましたか?」「献立を決めるのに何分悩みましたか?」
- 衝撃の事実: 「日本人の主婦が献立に悩む時間は、生涯で約1万時間になります」
- 個人の物語: 「先月、私の家の冷蔵庫の奥でレタスが腐っていました」
つかみで失敗するのは自己紹介から始めることです。「私たちはチームXXXです。本日は……」は最悪のつかみ。聴衆の集中力は最初の30秒で決まります。
ここがポイント
アウトラインに時間配分を必ず書き込む。書かないと、本番で1セクションだけで全時間を使い切ってしまいます。時間配分は予算管理と同じです。
3. 通し読みで「流れの飛躍」を見つける
アウトラインができたら必ず声に出して通し読みします。黙読では見つからないことが、音読では見つかります。
を発見"] C --> D["AIに相談
して修正"]
チェック観点:
- 論理の飛躍: パート1からパート2に話が突然飛んでいないか
- 重複: 同じ内容を2回言っていないか
- 抜け: 「なぜそう言える?」と聞かれて答えられない箇所はないか
- テンポ: 1セクションだけ妙に長い・短いことはないか
コード例・実例
通し読みで発見できる典型例:
- 「パート1で田中さんの困りごとを話したのに、パート2でいきなり技術仕様の話になっている。間が抜けている(解決のアプローチをどう思いついたかの一文が抜けている)」
- 「パート3のデモで何を見せるかが具体的に書かれていない。本番で迷う」
- 「まとめが長すぎてQ&Aの時間が圧迫される」
これらは音読すると一瞬で気づきます。
ここがポイント
通し読みは1人ではなくチーム全員の前で。聞き手の表情で違和感がわかります。
💬 AIに聞いてみよう
- 「以下のアウトラインを評価してください。論理の飛躍・抜け・重複があれば指摘してください」
- 「このプレゼンの『つかみ』として、発問・衝撃の事実・個人の物語をそれぞれ3案ずつ提案してください」
- 「10分のプレゼンに対し、デモを2分入れるとパート3はどう構成すべきですか?」
実習・演習(50分)
ステップ1: プロットを作る(15分)
- 聴衆のBeforeを書く(聞く前の認識)
- 聴衆のAfterを書く(聞いた後の理想状態)
- Before→Afterを渡す**3つの石(メッセージ)**を決める
- それぞれの石に対応する「証拠」を1〜2個用意(数字・ペルソナの声・デモ)
ステップ2: アウトラインに落とし込む(20分)
- ホールパート法の7セクション(つかみ・全体・パート1〜3・まとめ・Q&A)に肉づけ
- 各セクションに時間配分を必ず書く(合計が制限時間に収まるか確認)
- 各セクションのスライド枚数目安を書く
- デモを入れる位置を確定する
ステップ3: 通し読みと修正(15分)
- チーム全員の前で声に出してアウトラインを読む(話す&行う)
- 違和感があった箇所を全員でメモ
- AIに「論理の飛躍がないか」レビューを依頼
- 飛躍・抜け・重複を最低1件は修正
演習成果物
- プロット(Before / 3つの石 / After)
- アウトライン(セクション・時間配分・スライド枚数目安・デモ位置)
- 修正履歴(音読・AIレビューで発見した改善点1件以上)
まとめ(5分)
このセッションでは、3つのことを実践しました。
- プロットは「聴衆を主人公」にしたBefore→Afterの物語
- アウトラインはホールパート法に時間配分とスライド枚数を割り当てた設計図
- 通し読みで論理の飛躍・抜け・重複を発見する
これでプレゼンの骨組みが完成しました。明日のDay 19では、この骨組みに沿ってスライドを実際に作っていきます。明日いきなりスライドが作れるのは、今日アウトラインを固めたおかげです。
🔄 振り返りチェック
- プロットの3要素(Before・After・3つの石)を言えますか?
- アウトラインに必ず書き込むべき2つのこと(時間配分とスライド枚数)を覚えていますか?
- 通し読みで何を発見するか、3つの観点を挙げられますか?
- なぜスライドを今日作り始めてはいけないのですか?
補足資料
- 参考リンク
- クリス・アンダーソン『TED TALKS 世界最高のプレゼン術』
- ナンシー・デュアルテ『Resonate(共鳴)』(プレゼンの物語構造)
- 発展課題
- 自分が好きな映画のプロットを「Before→3つの転機→After」で書いてみる
- AIに「私のアウトラインで、聴衆が一番興味を持つセクションはどこ?」と聞いてみる
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | 回答ヒント |
|---|---|
| プロットとアウトラインの違いは? | プロットは「聴衆の心の動き」、アウトラインは「話す順番と時間配分」 |
| 発表時間が5分しかない場合は? | パートは2つに減らす。デモはスクショ1枚+一言にする |
| デモを入れる位置はパート3以外でもいい? | OK。冒頭で「動くもの」を見せて期待を高めるパターンもある(つかみ+デモ) |
| パートが4つ以上必要なときは? | 本当に必要か再検討。多くは2つに統合できる。3が記憶の限界 |
| 通し読みは1人だと意味ない? | 効果は半減するがゼロではない。スマホで録音して聞き返すと客観視できる |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| プロットを書かずにアウトラインから始める | プロットなしのアウトラインは「話す順番」だけで、聴衆を動かせない |
| 時間配分を書かない | 必ず分単位で書く。本番で1セクションに引きずられないため |
| デモの位置を決めない | デモは「証拠」。どのメッセージの証拠か明確にする |
| 通し読みをスキップ | 「黙読でわかるから」は罠。音読でしか発見できないことがある |
| スライドを作り始めてしまう | 今日は禁止。手書きノートに留める |
| アウトラインが綺麗すぎて修正できない | あえてラフに書く。「直してもいい状態」を保つ |