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プレゼン手法〜ホールパート法とストーリー設計

概要

  • 日程: Day 18 / セッション 1
  • 時間: 09:30-10:00(30分)
  • 形式: 座学(対話型解説、デモンストレーション)
  • ゴール(行動・条件・基準): プレゼン作成の5ステップ(伝えたいこと決定→キャッチフレーズ→プロット→アウトライン→各ページ作成)を順番に挙げ、ホールパート法・例え話・発問・質問対応の4テクニックを具体例とともに1分以内に説明できる
  • 学習形式: 対話型解説、デモンストレーション

導入(5分)

おはようございます。昨日まで皆さんは17日間「作る人」でした。今日から「伝える人」に切り替わります。

少し問いかけてみます。皆さんがどれだけ良い製品を作っても、それを他人が知らなければ、世の中にとっては存在しないのと同じです。発明王のエジソンは「天才とは1%のひらめきと99%の汗」と言いましたが、本当はもう1つあります。伝える努力です。電球を発明したエジソンが偉いのは、発明したからではなく、それを「使いたい」と世界に思わせたからです。

今日からの4日間(Day 18-21)は、22日間の集大成です。Day 18はストーリー設計、Day 19はスライド作成と練習、Day 20はリハーサル、Day 21が本番です。今日のセッションでは、すべての土台になる「プレゼンを作る正しい手順」を共有します。

ちなみに——このセッション自体も、今から説明する「ホールパート法」で構成されています。最後に種明かしします。

本編(25分)

1. プレゼンを作る5ステップ〜順番が9割

プレゼン資料は、いきなりPowerPointを開いて作ってはいけません。プロが踏む手順は決まっています。

flowchart LR A["1.伝えたいこと
を決める"] --> B["2.キャッチ
フレーズ化"] B --> C["3.プロット
(ストーリー)"] C --> D["4.アウトライン
(全体構成)"] D --> F["5.各ページ
作成"]
ステップ 何をするか 成果物
1. 伝えたいこと 製品の価値から「絶対伝えたい」を1〜3つに絞る 伝えたいことリスト
2. キャッチフレーズ 各メッセージを短文で言い切る キャッチフレーズ
3. プロット 聴衆をどう動かすかの筋書きを決める ストーリー
4. アウトライン ホールパート法でセクション構成を作る アウトライン
5. 各ページ 1スライド1メッセージで作る プレゼン資料

順番が9割です。1〜4を飛ばして5から始めると、文字だらけで何が言いたいかわからない資料ができます。Day 18の午前後半・午後で1〜4を、Day 19で5を行います。

コード例・実例

ダメな例: 「Day 18 朝にチームメンバーがいきなりPowerPointを開いて表紙を作り始める。タイトルは『〇〇システムのご紹介』。中身は『機能一覧』『画面構成』『データベース』『チーム体制』……」

→ これは「作った人の都合」で並んだ資料です。聴衆の心には何も残りません。

良い例: 「まずチームで30分話し合って、ペルソナの××さんが何にどう困っていて、私たちの製品がどう解決するかをホワイトボードに書き出す。そこから『××さんを救うキャッチフレーズ』を10案出してAIと一緒に1つに絞る。次にストーリーを決めてから、ようやく資料に取り掛かる」

ここがポイント

スライドは設計図の最終出力であり、最初の設計図ではない」。建物を建てるとき、いきなりレンガを積む人はいません。プレゼンも同じ。

コラム

スティーブ・ジョブズは2007年のiPhone発表プレゼンを、本番の3週間前から毎日数時間かけてリハーサルしたと言われます。スライド作成だけでなく、「最初の3分で観客の心をつかむ」筋書きを何度も書き直しました。彼の有名な一言「Today, Apple reinvents the phone(今日、アップルは電話を再発明する)」は、ストーリーが先にあってから言葉になったものです。順番が9割。

2. ホールパート法〜聴衆を迷子にさせない王道

プレゼンの構成法でもっとも実績があるのがホールパート法(Whole-Part-Whole)です。日本語で言えば「全体→部分→全体」。

flowchart TB A["ホール(全体)
今日伝えたいのは3つです"] --> B["パート1
1つ目は..."] B --> C["パート2
2つ目は..."] C --> D["パート3
3つ目は..."] D --> F["ホール(全体)
つまり今日伝えたかったのは3つ"]

なぜこれが効くのか。理由は人間の脳の仕組みです。聴衆は最初に「これから何の話を聞くのか」がわからないと、内容が頭に入りません。最後に「結局何の話だったか」をもう一度言われないと、忘れます。先に地図を渡し、最後に思い出させる。これがホールパート法の本質です。

コード例・実例

このセッションも実はホールパート法です。

  • ホール(導入): 「プレゼンを作る正しい手順を共有します」
  • パート1: 5ステップの手順
  • パート2: ホールパート法
  • パート3: 例え話・発問・質問対応の3テクニック
  • ホール(まとめ): 「手順とテクニックをまとめると——」

気づきましたか? 本研修の全セッションがこの構造です。種明かしすると、皆さんは18日間ホールパート法を体感してきました。

ここがポイント

ホールパート法は「3つにまとめる」と相性が良いです。人は3つまでなら覚えられます。4つ以上はだいたい忘れます。「今日伝えたいことは3つです」と言えると、聴衆は安心して聞き始めます。

3. 3つのテクニック〜例え話・発問・質問対応

ホールパート法という骨組みに、肉づけするテクニックが3つあります。

テクニック1: 例え話(メタファー)

抽象的な概念は、聴衆の知っているものに例えて伝えます。

  • ダメな例: 「我々の製品は、O(log n)の検索アルゴリズムを採用しています」
  • 良い例: 「我々の製品は、辞書のページをめくるように、欲しい情報に最短で到達します」

例え話は聴衆と発表者の脳を同じ画像で結ぶための道具です。

テクニック2: 発問(問いかけ)

聴衆に質問を投げます。声を出して答えなくても、頭の中で考えてもらえれば成功です。

  • 「皆さんは、最後にバスの時刻表で困ったのはいつですか?」
  • 「『この機能、もう少し早ければ』と思ったことはありませんか?」

発問は聴衆を傍観者から参加者に変えます。「これは自分の話だ」と感じた瞬間、集中力が跳ね上がります。

テクニック3: 質問への対応

質疑応答は4ステップで対応します。

flowchart LR A["1.質問を
復唱する"] --> B["2.答えの
結論を先に"] B --> C["3.理由・例を
添える"] C --> D["4.質問者に
確認する"]

復唱は「ご質問は××についてですね」と言うこと。これで2つの効果があります。1つは聞き間違いの防止、もう1つは他の聴衆にも質問内容を共有できることです。

答えられない質問もあります。そのときは「今は持ち合わせていないので、〇〇までに調べてお答えします」と素直に言うのが正解です。知ったかぶりは100%バレます。

コード例・実例

質疑応答の良い例:

質問者: 「データが100万件になったとき、検索速度はどうなりますか?」
発表者: 「100万件のときの検索速度ですね(復唱)。現状は1秒以内に返せる見込みです(結論)。理由は、内部でB-Treeインデックスを使っており、検索計算量がlog Nに収まるためです(理由)。実際にDay 16のテストで10万件で約0.3秒でした()。お答えになっていますでしょうか?(確認)」

ここがポイント

質問は攻撃ではなくギフトです。「興味を持ってくれた証拠」と捉えると、緊張がほぐれます。

コラム

TED Talksで6000万回再生されたサイモン・シネックの「Start with Why」は、わずか18分のプレゼンです。冒頭の発問は「なぜAppleはこんなにイノベイティブなのか?」。聴衆の頭に問いを植え付けてから、答えを18分かけて回収する構成。発問のお手本としていまも研究されています。

4. 種明かし〜本研修自体がホールパート法

最後に種明かしです。本研修の各セッションは、ぜんぶホールパート法で構成されています

  • 導入(5分)= ホール: 今日の地図を渡す
  • 本編(20-40分)= パート: 1つずつ深掘り
  • まとめ(5分)= ホール: 思い出させて締める

18日間、皆さんは知らず知らずホールパート法を体感してきたわけです。今日からは、それを使う側に回ります。

💬 AIに聞いてみよう

  • 「ホールパート法とPREP法の違いを、それぞれ例文で示して」
  • 「私が話す予定の内容(XXXX)を、ホールパート法に当てはめると、ホール部分は何になりますか?」
  • 「聴衆が技術者でない場合、例え話を選ぶときに気をつけることは?」

実習・演習

このセッションは座学です。次のセッション2で「伝えたいことの決定とキャッチフレーズ作成」、セッション3で「プロットとアウトラインの作成」を行います。今日の終わりにはアウトラインまで完成している状態が目標です。

まとめ(5分)

このセッションでは、3つのことを共有しました。

  1. プレゼン作成の5ステップ: 伝えたいこと→キャッチフレーズ→プロット→アウトライン→各ページ。順番が9割
  2. ホールパート法: 全体→部分→全体で聴衆を迷子にさせない
  3. 3つのテクニック: 例え話で脳を結ぶ・発問で参加者にする・質問対応は4ステップ

そして種明かしの通り、本研修自体がホールパート法で構成されています。皆さんは18日間それを体感してきました。今日からは使う側です。

🔄 振り返りチェック

  • プレゼン作成の5ステップを順番に言えますか?
  • ホールパート法の3つのブロックを、それぞれ何のために置くか説明できますか?
  • 例え話・発問・質問対応をそれぞれ1つずつ例文で示せますか?
  • 答えられない質問が来たとき、何と言うのが正解ですか?

補足資料

  • 参考リンク
    • サイモン・シネック「How Great Leaders Inspire Action」(TED Talk)
    • ガー・レイノルズ『プレゼンテーションZen』
    • 高橋メソッドの公式サイト(明日のセッションで詳しく扱う)
  • 発展課題
    • 自分が「これは良かった」と思うプレゼン(YouTube可)を1本選び、ホールパート構造に分解してみる
    • AIに「私の製品のデモ部分を、例え話で1分で説明して」と依頼してみる

学習ガイド

想定される質問と回答例

質問 ヒント
5ステップを必ず順番にやらないとダメ? 慣れれば一部を行き来してもよい。最初は順番通りにやることで「飛ばし」を防ぐ
ホールパート法以外の構成は使ってはダメ? PREP法・SDS法・PASONAなど他にもある。新人はまずホールパート法を完璧にマスターする
「伝えたいこと」を3つに絞れないときは? ペルソナの××さんが「これがなかったら困る」と言う順に並べて上位3つを取る
発問しても誰も答えてくれないのでは? 声で答えなくてOK。「頭の中で考えてください」と添えるだけで集中力が上がる
質問者が長く話して質問の意図がわからないときは? 「ご質問の趣旨は××で合っていますか?」と確認してから答える

つまずきやすいポイント

つまずきポイント ヒント
いきなりPowerPointを開いてしまう 紙とペンでアウトラインを書き終わるまでPCを閉じる
「伝えたいこと」が多すぎる 1〜3つに絞る。多いほど印象に残らない
例え話が聴衆に伝わらない 聴衆の年代・職種を考えて選ぶ。AIに「30代エンジニアにわかる例えは?」と聞く
質疑応答で頭が真っ白になる 復唱する。それだけで5秒考える時間ができる
知ったかぶりで答えてしまう 「持ち帰って確認」が正解。誠実さは100%伝わる
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