モックアップツールで試作品作成
概要
- 日程: Day 2 / セッション 09
- 時間: 14:50-15:35
- 形式: 実習
- ゴール: 自チームの主要画面3つ以上のワイヤーフレームをモックアップツール(Figma/draw.io等)で作成し、想定保守期間(1年/5年/10年以上)に応じた配慮点を1つ以上記録できる
- 学習形式: AI協働型(画面構成案や代替パターンをAIに何度も生成させる)
導入(5分)
ここまでで「画面一覧(プレゼンテーション一覧)」は手元にあります。このセッションでそれを実際に「絵」として描き起こします。
「絵が苦手だから…」という声をよく聞きますが、心配無用です。**ワイヤーフレーム(wireframe)は『線画』**です。色も装飾もなく、構造だけ。デザインセンスではなく、情報設計力が問われます。
そして大事なポイントは**「保守期間」を意識すること**。1年で捨てるサービスと10年使うサービスでは、画面に詰め込むべき情報も将来の拡張性も変わります。
本編(5分の解説 + 35分の実習)
1. ワイヤーフレームと忠実度
モックアップには「忠実度」のレベルがあります。
(ワイヤーフレーム)
線画"] --> MF["中忠実度
(モックアップ)
配色なし詳細"] MF --> HF["高忠実度
(プロトタイプ)
実物そっくり"]
| レベル | 特徴 | 所要時間/画面 |
|---|---|---|
| 低忠実度(ワイヤーフレーム) | 線と長方形のみ、要素配置のみ | 5-10分 |
| 中忠実度(モックアップ) | 配色なし、詳細表現あり | 30分-1時間 |
| 高忠実度(プロトタイプ) | 実物に近い、画面遷移も付ける | 数時間〜 |
今日は**低忠実度(ワイヤーフレーム)**を3画面以上作ります。スピード重視です。
ここがポイント
最初から高忠実度を狙わないこと。ワイヤーフレームの段階で「情報の配置」「優先順位」を固めるのが本命です。ここで間違うと、後で美しいデザインを作っても無駄になります。
コラム:「紙とペン」が最強のモックアップツール
プロのデザイナーほど、初期段階は紙とペンで描きます。理由は「捨てやすい」「修正が早い」「ツール操作で思考が止まらない」。Figmaなどのデジタルツールが普及した今でも、Apple、Google、Amazonのデザインチームの会議室にはホワイトボードとマーカーが必ずあります。「最強の道具は思考を妨げない道具」というデザイン哲学です。
2. ワイヤーフレームに含めるべき5要素
(ロゴ/メニュー)"] WF --> N["ナビゲーション
(主要動線)"] WF --> M["メインコンテンツ
(主役の情報)"] WF --> S["サイドエリア
(補助情報)"] WF --> F["フッター
(規約/連絡先)"]
各画面で「主役は何の情報か」を意識します。一覧画面ならリストが主役、詳細画面なら詳細データが主役。
3. 保守期間と設計判断
サービスがどれだけ続くかで、設計上の判断が変わります。
| 保守期間 | 設計の重点 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1年(短期) | 速く作って速く検証 | 既存サービス流用OK、見た目重視 |
| 5年(中期) | 機能追加に耐える構造 | 設定画面・拡張余地を確保 |
| 10年以上(長期) | 技術陳腐化への耐性 | フレームワーク非依存、移行容易性 |
例:「お知らせ」エリアの設計
- 1年想定 → 固定HTMLでベタ書きOK
- 5年想定 → 管理画面から更新できる仕組み
- 10年想定 → 外部CMS連携・多言語対応の余地
ここがポイント
保守期間を最初に決めると、議論が早い。Day 1のペルソナが「短期トレンドの利用者」なら短期設計、「長く使う固定ファン」なら長期設計、と判断軸になります。
コラム:Yahoo! JAPANのトップページの長寿命設計
Yahoo! JAPANのトップページは1996年から続いています。基本構造(左メニュー+中央ニュース+右広告)は四半世紀ほぼ同じ。「変えない勇気」がブランドを作っています。逆にFacebookのUIは数年おきに大幅変更し、毎回ユーザーから批判を浴びますが、新機能のためにあえて変えているそう。どちらが正しいというより、戦略の違いです。
実習・演習(35分)
課題
自チームのプレゼンテーション一覧から「主要3画面以上」を選び、ワイヤーフレームをモックアップツールで作成する。各画面に「想定保守期間と配慮点」をメモ書きする。
推奨ツール
| ツール | URL | 特徴 |
|---|---|---|
| draw.io | https://app.diagrams.net/ | 無料、figureテンプレあり |
| Figma | https://www.figma.com/ | プロ標準、無料版あり |
| Excalidraw | https://excalidraw.com/ | 手書き風、超軽量 |
進め方タイムスケジュール
| 時間 | 作業 |
|---|---|
| 5分 | 主要3画面を選定(例:一覧/詳細/入力) |
| 5分 | 各画面の「主役の情報」を決める |
| 20分 | 3画面のワイヤーフレーム作成(1画面 約7分) |
| 5分 | 想定保守期間と配慮点を画面ごとにメモ |
成果物
| 画面ID | 画面名 | ワイヤーフレームURL | 想定保守期間 | 配慮点 |
|---|---|---|---|---|
| S-001 | レシピ入力画面 | https://... | 5年 | 入力項目を将来追加できるよう余白を確保 |
| S-002 | レシピ詳細画面 | https://... | 5年 | コメント欄を後付けで拡張できる構造 |
| S-003 | レシピ一覧画面 | https://... | 5年 | カテゴリ追加に対応するフィルター UI |
ヒント
AIプロンプト例(画面構成案)
私たちは「レシピ共有アプリ」を作っています。
ペルソナは「料理初心者の20代女性」。
レシピの「一覧画面」のワイヤーフレームの構成案を、
スマホ縦画面(375x812px)想定で考えてください。
- ヘッダー領域に何を置く?
- メイン領域のリストアイテムには何を表示する?
- 検索/フィルターUIはどう配置する?
- 動線として「詳細を見る」「お気に入り」をどう設計する?
ASCII図でレイアウト案を1つ示してください。
AIプロンプト例(保守期間からの配慮点)
このワイヤーフレーム[添付/説明]について、
保守期間が5年と想定した場合、将来の拡張に備えて
配慮しておくべき点を3つ挙げてください。
(例:項目追加余地、画面サイズ対応、機能追加余地)
💬 AIに聞いてみよう
- 「PCとスマホで同じ画面を表現するときの考え方は?」
- 「『見やすい一覧』のためのレイアウトのコツは?」
- 「ワイヤーフレームに色や画像は入れて良い?」
まとめ(5分)
3画面以上のワイヤーフレームができました。これでDay 2の成果物がほぼ揃いました。明日(Day 3)は「どう作るか(設計)」に本格的に入り、明後日(Day 4)は実装です。今日作ったモックアップが、明後日のUIコーディングのベースになります。
🔄 振り返りチェック
- 3画面以上のワイヤーフレームを作れましたか?
- 各画面に「主役の情報」が明確ですか?
- 想定保守期間と、それに応じた配慮点を1つ以上書きましたか?
補足資料
- 参考リンク:Figmaチュートリアル、draw.io UI templates、『UIデザインの教科書』
- 発展課題:チームで相互レビュー、ペルソナ視点で1分間でツッコミを入れる
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| デザインセンスがない | ワイヤーフレームに必要なのは情報設計力。配色・装飾は別工程 |
| ツールが選べない | 1番慣れているもの。なければdraw.ioが学習コスト最小 |
| 画面遷移も含めるべき? | この段階では不要。各画面単独で十分 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 色や装飾に時間をかける | 線画で十分。装飾は後回し |
| 画面に詰め込みすぎる | 「主役以外は脇役」と意識して情報量を削る |
| 保守期間を考えない | 「捨てやすさ」と「育てやすさ」を分けて設計する |