情報定義書の整理・分類
概要
- 日程: Day 1 / セッション 8
- 時間: [15:00-16:00]
- 形式: 演習
- ゴール: ペルソナの視点で(条件)、LATCH法とカードソーティングを使って自分の情報定義書を整理・分類し(行動)、「整理分類済み情報定義書」を完成させ、分類の根拠を各カテゴリにつき一文で説明できる(基準)
- 学習形式: ハンズオン実習(AIサポートあり)
導入(5分)
Day 1 最後のセッションです。机の上(画面の上)に、今日の成果物を並べてみてください。
- 開発テーマ(セッション4)
- 情報20個以上の情報定義書(セッション4)
- ペルソナのプロフィール(セッション6)
- そして、さっき手に入れた道具箱: 整理と分類、LATCH法、カードソーティング(セッション7)
材料と道具は全部揃っています。
この1時間で作るのは、Day 1の最終成果物 「整理分類済み情報定義書」 です。
ここで少し想像してみてください。
今のあなたの情報定義書は、引っ越し直後の段ボールの山です。
中身は全部あなたの持ち物ですが、「ハサミどこ?」と聞かれて即答はできません。
1時間後、それが「どこに何があるか一目で分かる部屋」に変わります。
しかも今回の片付けの主役はあなたではありません。ペルソナです。
「自分が探しやすい」ではなく「ペルソナが探しやすい」を基準に手を動かします。
この成果物は明日、情報モデル抽出の入力になります。今日の仕上がりが明日の速度を決めます。
本編(15分)
1. 演習の全体像 「定義→価値の確認→再定義」を2周回す
演習は次の6ステップで進めます。
- ペルソナの確認: プロフィールを読み直し、「この人は何のためにこのシステムを使うか」を一文で言えるようにする
- 市場調査: 開発テーマの類似サービスをAIに聞き、世の中の情報の見せ方を偵察する
- 整理: ペルソナに価値のない情報を捨てる(削除ではなく「保留リスト」に移すのがおすすめ)
- 分類: LATCHの軸を選び、カードソーティングで見出しを付けてグループ化する
- 価値の確認: ペルソナの視点でレビューする(AIにペルソナを演じてもらう)
- 再定義: レビューで見つかった不足・過剰・曖昧を直す。そしてもう一度ステップ5へ
大事なのは、5と6を最低2周回すことです。
セッション7の甲骨文字の話を思い出してください。
「定義→価値の確認→再定義→価値の確認」の反復こそが、価値ある情報定義を完成させる唯一の道です。
1周目で完璧を目指す必要はありません。むしろ1周目は雑でいい。2周目で必ず良くなります。
時間配分の目安です(合計40分の実習)。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 5分 | ステップ1〜2(ペルソナ確認・市場調査) |
| 15分 | ステップ3〜4(整理・分類の1周目) |
| 10分 | ステップ5〜6(レビューと再定義、2周目) |
| 10分 | 振り返り(AIに今日の学びを自分の言葉で説明する) |
コード例・実例
各ステップで使えるAIへのプロンプト例です。コピーして自分用に書き換えてください。
ステップ2(市場調査):
私の開発テーマは「家計簿システム」です。
類似の有名サービスを3つ挙げて、それぞれが
「どんな情報を」「どんなカテゴリ(見出し)で」見せているか教えてください。
ステップ3(整理):
私のペルソナは以下の通りです。
(ペルソナのプロフィールを貼り付け)
この情報定義書の中で、このペルソナにとって価値が低い情報はどれですか?
(情報定義書を貼り付け)
理由も添えてください。ただし最終判断は私がします。
ステップ4(分類):
この情報一覧を、LATCH法のCategory軸で分類する案を2パターン出してください。
それぞれの案の見出しと、どんなペルソナに向くかも教えてください。
(情報一覧を貼り付け)
ここがポイント
- 1周で終わらせない。「価値の確認→再定義」を最低2周。2周目の方が必ず良くなる
- AIの提案は「案」であって「答え」ではない。捨てる判断・見出しの採用はあなたがペルソナの代理人として行う
- 捨てた情報は消さずに保留リストへ。明日以降「やっぱり要る」が起きても戻せる
コラム
ファインマン・テクニック 説明できないなら分かっていない
ノーベル物理学賞のリチャード・ファインマンは「新入生に説明できないなら、自分が理解していないということだ」という信条で知られ、彼に由来する学習法が「ファインマン・テクニック」です。学んだことを、専門用語を使わずに他人へ説明してみる。詰まった箇所=理解の穴。穴を埋めてまた説明する。この演習の最後の10分に「AIに今日の学びを説明する」時間を置いているのは、まさにこれです。聞く・読むだけの学習より、話す・行う学習は記憶への定着が段違いです。AIは何度説明しても嫌な顔をしない、史上最高の練習相手です。
2. 「情報」を整理・分類する 「機能」を書き始めたら要注意
この演習で一番多い脱線が、いつの間にか「機能」を書いていることです。
- 「支出額」「支出日」「カテゴリ」→ これは情報です(名詞。モノや事実)
- 「支出を登録する」「グラフを表示する」「通知を送る」→ これは機能です(動詞。操作や動作)
「支出額」は情報定義書に載せますが、「支出を登録する」は載せません。
なぜなら、機能は明日Day 2で情報モデルの状態遷移から自動的に抽出されるからです。
今日むりやり機能を考えると、明日の手法とぶつかって二度手間になります。
見分け方は簡単です。「〜する」を付けて自然なら機能。
「支出額する」は不自然(=情報)、「登録する」は自然(=機能)です。
カードに動詞を書いている自分に気づいたら、「その操作が扱っている情報は何?」と自問して名詞に戻してください。
「グラフを表示する」なら、扱っている情報は「カテゴリ別の支出集計」です。それを書きます。
分類の見出しも同じです。
「入力機能」「表示機能」という見出しはシステム都合の分類です。
「収入のこと」「支出のこと」「振り返りのこと」のような、ペルソナの関心事で見出しを作りましょう。
コード例・実例
情報と機能の仕分け練習です。あなたの定義書にも同じ目で赤ペンを入れてください。
| 書いてしまいがちな項目 | 判定 | 直し方 |
|---|---|---|
| 月間予算 | 情報 | そのままでOK |
| 予算を設定する | 機能 | 扱っている情報「月間予算」に直す |
| レシートを撮影する | 機能 | 扱っている情報「レシート画像」に直す |
| カテゴリ別支出グラフ | 情報寄り | 「カテゴリ別の支出集計」とすると情報として明確 |
ここがポイント
- 情報=名詞、機能=動詞。「〜する」が自然に付いたら機能のサイン
- 機能を見つけたら削除ではなく変換。「その機能が扱う情報は何か」と問い直す
- 見出しもペルソナの関心事で付ける。「入力機能」「管理機能」はシステム都合の見出し
コラム
こんまりメソッドは世界最強の「整理」アルゴリズム
片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)は、Netflixの番組で世界的ブームを起こし、英語では「kondo」が「片付ける」という動詞として使われるほどになりました。彼女のメソッドの核心は「ときめくか?(Does it spark joy?)」というたった1つの判断基準で残す・捨てるを決めることです。これはIAの整理と完全に同型です。基準が「自分のときめき」なら片付け、基準が「ペルソナの価値」なら情報の整理。逆に言えば、判断基準を持たずに捨てようとするから手が止まるのです。あなたの「ときめき」にあたるものは、ペルソナのプロフィールに書いてあります。
3. 成果物のフォーマット 分類の根拠を一文で添える
最終成果物「整理分類済み情報定義書」の形を確認します。
必須の要素は次の4つです。
- カテゴリ見出し: カードソーティングで作った見出し
- 情報名: そのカテゴリに属する情報
- ペルソナにとっての価値: なぜこの情報を残したか
- 分類根拠: なぜこのカテゴリに入れたか(各カテゴリにつき一文で説明できること)
コード例・実例
家計簿システム(ペルソナ: 節約を始めたい入社2年目・佐藤美咲さん)の例です。
選んだ軸: Category(ペルソナは「何にお金を使ったか」の意味のまとまりで探すため)
| カテゴリ見出し | 情報名 | ペルソナにとっての価値 | 分類根拠 |
|---|---|---|---|
| 日々の支出 | 支出額 | いくら使ったかが節約の出発点 | 毎日入力・確認する最頻出の情報だから |
| 日々の支出 | 支出日 | 給料日前の使いすぎに気づける | 同上(支出の記録として常にセット) |
| 日々の支出 | 支出カテゴリ | 「何に」使いすぎたか特定できる | 同上 |
| お金の計画 | 月間予算 | 使ってよい上限が分かり安心できる | 月に1回見直す「計画側」の情報だから |
| お金の計画 | 貯金目標額 | 節約のモチベーションになる | 同上 |
| 振り返り | カテゴリ別の支出集計 | 使いすぎの傾向を発見できる | 月末にまとめて見る「振り返り側」の情報だから |
保留リスト(今回は捨てた情報): レシートの紙の色(ペルソナの節約に寄与しないため)
行数はあなたの定義書の情報数だけ増えます。20個以上の情報が全て、どこかのカテゴリに収まっている状態がゴールです。
ここがポイント
- 表の4列(見出し・情報名・価値・分類根拠)が揃って初めて成果物。分類根拠の空欄は不可
- 「分類根拠を一文で言えない」カテゴリは、見出しが曖昧なサイン。見出しを付け直す
- 選んだLATCH軸とその理由を表の前に明記する。明日のあなた("なぜこう分けたんだっけ?")への手紙になる
コラム
コンビニの棚は毎週カードソーティングされている
コンビニやスーパーの「棚割り」は、売場の限られた棚に何をどう並べるかを決める専門業務で、専用ソフトまで存在します。おにぎりの隣にお茶があるのは偶然ではなく、「昼食を買う人」というペルソナの動線を分析した結果です。Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も」も、購買データによる自動カードソーティングと言えます。プロの現場では、分類は一度作って終わりではなく、売上データ(価値の確認)を見て毎週のように再定義されています。あなたが今日回す2周のPDCAは、プロが一生回し続けるサイクルの最初の2周です。
💬 AIに聞いてみよう
- 「あなたは私のペルソナ『佐藤美咲』です。(プロフィールと分類結果を貼り付け)この分類で、目的の情報をすぐ見つけられますか? 迷う場所を教えてください」
- 「私の分類のカテゴリ見出しは、ペルソナの関心事になっていますか? システム都合の見出しが混ざっていたら指摘してください」
- 「この情報定義書に、私のペルソナにとって価値があるのに抜けている情報はありませんか? 類似サービスと比較して教えてください」
実習・演習
課題
自分の情報定義書を、ペルソナの視点で整理・分類し、「整理分類済み情報定義書」を完成させてください。
- ペルソナのプロフィールを読み直し、利用目的を一文で書く
- AIに類似サービスを聞き、世の中の見出しの付け方を3例集める(市場調査)
- 整理: ペルソナに価値のない情報を保留リストへ移す(AIに候補を挙げさせ、判断は自分で行う)
- 分類: LATCHの軸を選んで理由を書き、オープンカードソーティングで見出しを作って全情報を割り当てる
- 価値の確認: AIにペルソナを演じさせてレビューを受ける
- 再定義: 指摘をもとに整理・分類をやり直し、もう一度レビューを受ける(合計2周以上)
- 最後の10分: AIに「今日学んだこと」を自分の言葉で説明し、抜けや誤りを指摘してもらう
成果物
整理分類済み情報定義書(Day 1 の最終成果物)
- 選んだLATCH軸とその理由(一文)
- カテゴリ見出し・情報名・ペルソナにとっての価値・分類根拠の表(情報20個以上すべてを配置)
- 各カテゴリの分類根拠が一文で書かれていること
- 保留リスト(捨てた情報と捨てた理由)
この成果物は明日Day 2の「情報モデル抽出」の入力になります。
見出しは明日、情報モデル名の候補になります。ファイルはすぐ開ける場所に保存してください。
ヒント
- 手が止まったら、まずペルソナのプロフィールに戻る。判断基準は全部そこにある
- レビュー(ステップ5)のプロンプト例:
あなたは私のペルソナ「佐藤美咲」です。プロフィールは以下の通りです。
(プロフィールを貼り付け)
以下が私の整理分類済み情報定義書です。
(表を貼り付け)
佐藤美咲として答えてください。
1. 「先月何に使いすぎたか」を知りたいとき、どのカテゴリを見ますか?迷いませんか?
2. あなたにとって価値を感じない情報はありますか?
3. 欲しいのに見当たらない情報はありますか?
- こうもり問題(複数カテゴリに入る情報)で止まったら、セッション7の処方箋どおり要件に立ち返る。「このシステムでは何の目的でこの情報を扱うか」をAIと一緒に言語化する
- 最後の10分の振り返りプロンプト例:
今日学んだ「情報アーキテクチャとは何か」「情報の特性(価値・可視性・多義性)」
「LATCH法」「カードソーティング」を、これから私が自分の言葉で説明します。
説明の抜けや誤りがあれば、すべて指摘してください。
説明が終わったら、理解度を確認する質問を2つ出してください。
- AIの分類案をそのまま採用したくなったら要注意。「なぜこの分類がペルソナに合うのか」を自分の一文で書けない案は、まだあなたの成果物ではない
まとめ(5分)
今回学んだことを一言でまとめると「ペルソナを判断基準に、整理→分類→価値の確認→再定義を回せば、情報は『探せる資産』に変わる」です。
そしてこれで Day 1 が終わります。今日一日を振り返りましょう。
- 朝: 散らかった情報を分類して「探しやすくなる」体験をした
- 午前: データに価値を与えたものが情報だと定義し、開発テーマの情報定義書を作った
- 午後: 情報の価値・可視性・多義性を学び、こうもり問題からペルソナを定義した
- 夕方: LATCH法とカードソーティングで、情報定義書を「整理分類済み情報定義書」に仕上げた
朝は「なんとなく」だった分類が、今はペルソナ・LATCH・見出し・カードソーティングという言葉で根拠を語れるはずです。これがDay 1の到達点です。
明日のDay 2は「情報を『モデル』にする」日です。
今日仕上げた整理分類済み情報定義書から、属性・関係・制約条件を持つ情報モデルを抽出し、コンピュータで扱える形に変換します。
今日の見出しが、明日のモデル名の候補になります。成果物を大切に持って、また明日。
🔄 振り返りチェック
- あなたの分類の各カテゴリについて、分類根拠を一文で言えますか?
- 「整理・分類したのは情報であって機能ではない」と言い切れますか? 「〜する」が定義書に残っていませんか?
- 明日の情報モデル抽出で、今日の成果物のどの部分(見出し・情報名)が使われるか説明できますか?
補足資料
- 参考リンク:
- 近藤麻理恵 公式サイト(KonMari): https://konmari.com/
- Nielsen Norman Group「Card Sorting」解説: https://www.nngroup.com/articles/card-sorting-definition/
- 発展課題:
- 自分の分類をCategory軸以外(Time軸やHierarchy軸)で作り直し、どんなペルソナならその軸が合うか考えてみましょう
- 家族や友人に自分の分類を見せて「どこに何がありそうか」当ててもらい、見出しの通じにくい箇所を発見してみましょう
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| 情報を捨てるのが怖い。全部残してはだめか | 全部残す=判断の放棄。ただし削除ではなく「保留リスト」に移せばよい。捨てた理由ごと記録すれば、後で復活も再検討もできる |
| LATCHのどの軸を選べばいいか決められない | 「ペルソナが情報を探すとき、頭に浮かぶ問いは何か」から逆算する。「何に使った?」ならCategory、「最近何を?」ならTime。迷ったらAIに軸別の案を出させて比較する |
| AIが出した分類案と自分の案、どちらを採用すべきか | 優劣はペルソナが決める。両方の案でペルソナ視点レビュー(AIにペルソナを演じさせる)を行い、迷いが少なかった方を採用する。混ぜて良い所取りしてもよい |
| 情報が20個より増えてしまった。減らすべきか | 増えるのは市場調査の成果で歓迎。ただし全てに「ペルソナにとっての価値」を書けることが条件。書けない情報は保留リストへ |
| 2周目のレビューで直すところがなかった | 素晴らしい。その場合はAIに「あえて厳しくレビューして」と依頼するか、別のLATCH軸で分類し直して比較すると新しい発見がある |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| いつの間にか「機能」(〜する)を書いてしまい、情報の分類から脱線する | 「〜する」を付けて自然なら機能。見つけたら削除ではなく「その機能が扱う情報は何か」と問い直して名詞に変換する |
| AIの分類案をそのまま貼り付けて、自分の判断が入っていない | AIの案は下書き。各カテゴリの分類根拠を「自分の一文」で書けるかが検収基準。書けない案は採用しない |
| 1周目で完璧な分類を作ろうとして時間切れになる | 1周目は雑でいい。15分で一旦全カードを置き切り、レビュー(2周目)で直す。「定義→価値の確認→再定義」の反復が前提の設計 |
| ペルソナ視点のレビューのつもりが、自分の好みでレビューしてしまう | レビューはAIにペルソナを演じさせて受ける。「あなたは佐藤美咲です」から始まるプロンプトを使い、自分は指摘を聞く側に回る |
| 最後の10分の振り返りを「時間がないから」と飛ばしてしまう | 振り返りは追加課題ではなく記憶定着の本体(話す&行う)。分類が未完成でも15:50になったら振り返りに切り替える。完成は明日の朝でも取り返せる |