カードソーティングによる情報定義書の整理・分類
概要
- 日程: Day 1 / セッション 08
- 時間: [14:25-15:25]
- 形式: 実習
- ゴール: 午前に作成した情報定義書を、ペルソナ視点でカードソーティングし、LATCH法の観点を意識した整理分類済み情報定義書(v2)を完成できる
- 学習形式: ハンズオン実習(カードソーティング、AIサポートあり)
導入(5分)
ここまでで皆さんは3つの武器を手に入れました。①情報定義書(午前作成)、②ペルソナ(午後最初に作成)、③LATCH法(前セッション)。
この60分で、これら3つを使って情報定義書を「ペルソナにとって意味のある形」に再構成します。手法は「カードソーティング」。世界中のIA設計者が使う、最もポピュラーで効果的な手法です。
ここで考えてみてください。なぜ「カード」を使うのでしょうか?答えは「物理的に動かせるから」です。頭の中で整理するより、目の前でカードを動かすほうが、グループの発見が速いのです。
セッション終了時、皆さんは「ペルソナ視点で整理分類された情報定義書」を完成させ、Day 2の情報モデル抽出に進める状態になっています。
本編(10分)
1. カードソーティングとは
カードソーティングは、情報を1枚1枚のカードに書いて、それを動かしながらグループ化する手法です。物理的な付箋でも、デジタルツール(Miro、FigJam、Trelloなど)でもOK。
進め方の基本は3ステップです。
ステップ1: カード化 — 情報定義書の各行を1枚のカードにする。情報名と1行説明を書く。
ステップ2: ソート — チームで動かしながらグループ化する。
ステップ3: ラベリング — できたグループに名前(見出し)を付ける。
カードソーティングには2種類あります。
- オープン式: グループとラベルを自由に作る。発見に向く。
- クローズ式: あらかじめ決められたカテゴリに振り分ける。検証に向く。
今回は「オープン式」で進めます。ペルソナ視点で「自然なグループ」を発見するのが目的だからです。
ここがポイント
カードソーティングは「正解探し」ではありません。チームで話し合いながら、何度もやり直すのが普通です。「これでいいかな?」と思ったら、一度ペルソナに戻って「鈴木さんはこのグループ分けで使いやすいか?」を確認します。
コラム
カードソーティングは、IT業界以外でも使われます。図書館員は新着図書をどの棚に置くかカードソートで決めますし、保育園では子供の好きな絵本を分類するのに使います。Googleの検索結果やAmazonの商品カテゴリも、過去にカードソーティングで設計されました。古典的だけど色褪せない手法です。
2. PDCAで回す
カードソーティングは1回で終わりません。PDCAサイクルで何度も回します。
Plan(計画): ペルソナ視点での仮説を立てる。「鈴木さんは『毎日の入力』『振り返り』『設定』の3グループで使うはず」
Do(実行): その仮説でカードを並べる。
Check(検証): ペルソナ視点で「使いやすいか」「漏れがないか」を確認。
Act(改善): 違和感のあるグループを再構成。
研修中は最低2回、できれば3回PDCAを回しましょう。1回目で「まずやってみる」、2回目で「違和感を解消する」、3回目で「ラベルを磨く」というイメージです。
3. ドメイン知識の活用
カードソーティング中、「この情報はどう分類すべきか分からない」と詰まることがあります。そんな時に必要なのが「ドメイン知識」です。
ドメイン知識とは、「そのテーマに固有の専門知識」のこと。家計簿なら家計簿の常識、レシピアプリならレシピの常識です。
ドメイン知識が足りない時の対処法:
- AIに聞く: 「家計簿アプリの主要機能を、ユーザー視点で5つにグループ化するとどうなる?」
- 実例を見る: 既存サービス(マネーフォワード、Zaim等)の構造を観察する。
- ペルソナに戻る: 「鈴木さんはどう考えるか」をチームで議論する。
ここで重要なのは「ドメイン知識を絶対視しない」こと。既存サービスの構造が、自分たちのペルソナにとってベストとは限りません。「鈴木さんなら違う分け方をする」と気付いたら、勇気を持ってオリジナルの構造にしましょう。
ここがポイント
ドメイン知識は「真似する」より「参考にする」もの。既存サービスの構造をコピーしただけでは、新しい価値は生まれません。「なぜそうしたのか」を理解した上で、自分たちのペルソナに合わせて変えます。
💬 AIに聞いてみよう
実習中に困ったらAIに質問してみましょう。たとえば:
- 「私たちの情報定義書を、ペルソナ視点で3〜5グループに分けるなら、どうグループ化できる?」
- 「『その他』に5個以上入りそう。別の分け方を提案して」
- 「LATCHのどの軸が、私のテーマには合う?」
実習・演習(45分)
課題
カード化(10分)
- 情報定義書の各行を1枚ずつカード化する
- 物理的な付箋でもデジタルツール(Miro、FigJam、Googleスライド、Excelの行etc.)でもOK
- 各カードに「情報名」と「1行説明」を書く
ソート1回目(10分)
- チームで話し合いながらカードをグループ化
- グループ数は3〜7個が目安(多すぎず、少なすぎず)
- 「ペルソナにとってどう使うか」を意識
ラベリング1回目(5分)
- 各グループに名前(見出し)を付ける
- 「その他」を避ける。明確な名前を
検証・改善(PDCA 2回目)(15分)
- ペルソナの視点で「この構造で使いやすいか」を1人ずつ語る
- 違和感があるカードを移動し、ラベルを再考
- LATCHの観点で「不足している軸はないか」確認
清書(5分)
- 最終結果を「整理分類済み情報定義書 v2」として表形式にまとめる
- 列:番号、情報名、説明、グループ(カテゴリ)、補足
成果物
「整理分類済み情報定義書 v2」。例(家計簿の場合):
| 番号 | 情報名 | 説明 | グループ |
|------|--------|------|----------|
| 1 | 収入 | 受け取ったお金 | 日々の入力 |
| 2 | 支出 | 使ったお金 | 日々の入力 |
| 3 | カテゴリ | 支出の分類 | 日々の入力 |
| 4 | 月別集計 | 月ごとの収支合計 | 振り返り |
| 5 | 予算達成率 | 予算に対する使用割合 | 振り返り |
| 6 | カテゴリ別グラフ | カテゴリごとの支出割合 | 振り返り |
| 7 | 予算設定 | 月ごと・カテゴリごとの上限 | 設定 |
| 8 | 通知設定 | リマインダー等の設定 | 設定 |
| ... | ... | ... | ... |
加えて、「グループ名一覧と意図」を別途記述:
- 日々の入力: 毎日触る情報。鈴木さんの「通勤電車で5分」のメインターゲット
- 振り返り: 週末・月末に見る情報
- 設定: 最初に1回だけ触る情報
ヒント
うまくグループ化できない時:「もしこれが家具屋の店内案内だったら、どんな看板を出す?」とAIに聞くと、別視点が得られます。
「機能」と「情報」が混ざってしまった時:機能(「ログイン」「保存」など動詞のもの)はカードから外す。情報(名詞)だけでカードソーティングする。
時間が足りない時:「完璧」を目指さない。Day 2で再調整する機会があります。今は「v2」として暫定でOK。
ペルソナ視点を忘れたら:「鈴木さんはこのアプリを使って何をしたい?」を5秒考えてから次の判断をする。
まとめ(5分)
今回はカードソーティングで情報定義書を整理分類しました。ペルソナ視点とLATCH法を使い、PDCAで回す経験ができました。
次のセッションはDay 1の振り返りです。今日の成果物(開発テーマ、情報定義書、ペルソナ、整理分類済み情報定義書)を確認し、Day 2への準備をします。
ここで重要な気づきは「情報を整理しただけで、設計の解像度が劇的に上がる」ということ。コードを書く前に、これだけのことが決められるのです。これがIAの力です。
🔄 振り返りチェック
- 整理分類済み情報定義書のグループ数は3〜7個に収まっていますか?
- 「その他」カテゴリができていませんか?
- 各グループ名は、ペルソナにとって意味のある言葉になっていますか?
- PDCAを最低2回回しましたか?
補足資料
- 参考リンク: Donna Spencer『Card Sorting: Designing Usable Categories』、UX Tools(Miro、FigJam等の使い方)
- 発展課題: 別のペルソナを想定してカードソーティングをやり直し、結果の違いを観察する
学習ガイド
想定される質問と回答例
| 質問 | ヒント |
|---|---|
| グループが大きすぎる/小さすぎる | 1グループに10個以上は再分割、1〜2個は他と統合を検討 |
| 同じカードを複数グループに入れたい | 「主所属」を決めて1つに。多義性は別途メモで残す |
| メンバーで意見が割れる | ペルソナに戻って判断。それでも割れたら、両案を並べて使い心地を想像 |
つまずきやすいポイント
| つまずきポイント | ヒント |
|---|---|
| 機能(動詞)が混じる | カード化前に動詞を弾く。「保存」は「保存履歴」「保存設定」に名詞化 |
| 完璧主義で動けない | 1回目は5分で終わらせる。PDCAで磨くので、最初から完璧は不要 |
| 既存サービスをコピーする | 既存はあくまで参考。「鈴木さんならこうしたい」を優先 |